おはようございます。
今日は、原告請求の時間外労働割増賃金について、少なくとも原告主張の5割が相当等とされた事例を見てみましょう。
福星堂事件(神戸地裁姫路支部平成28年9月29日・労経速2303号3頁)
【事案の概要】
本件は、和洋菓子の製造・加工並びに販売等を主たる目的とする株式会社であるY社の従業員であったXが、Y社に対し、未払の時間外労働割増賃金294万3240円+遅延損害金、労働基準法114条に基づく付加金249万8576円+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し、50万3599円+遅延損害金を支払え
Y社はXに対し、50万3599円(付加金)+遅延損害金を支払え
【判例のポイント】
1 所定の就業開始時刻前のタイムカードの打刻時間を始業時刻として主張する場合(早出残業)には、使用者が明示的には労務の提供を義務付けていない始業時刻前の時間が、使用者の指揮命令下にある労働時間に該当することについての具体的な主張立証が必要であると解するのが相当である。
・・・かえって、Xが早出残業を繰り返していたのは、Y社の業務のためではなく、Y社から貸与されている携帯電話を使ってY社の女性従業員に長時間プライベートな電話をかけるためであったことが窺われる。
よって、Xが早出残業を余儀なくされていたとは認められない。
2 ・・・以上の事実のうち、XがY社に早朝出勤を命じられ、日常的に所定の始業時刻前の時間外労働を余儀なくされていたとは認められないこと、Xが昼食も運転中に採ることが常態化しており、所定の1時間休憩を取ったことがなかったとは認められないこと等を考慮すれば、Xが時間外労働をしていたことは否定できないものの、Xの主張する時間外労働の時間は相当に過大であるというべきである。
その他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すれば、Xの時間外割増賃金は、少なくともXが主張する411万9749円の5割である205万9874円と認めるのが相当である。
Y社はXが未払残業代を請求する期間について時間外労働割増賃金として、155万6275円を支払っていることが認められるから、これを控除すると、Xの未払いの時間外労働割増賃金は、50万3599円となる。
裁判所がざっくり請求金額の半分と認定してくれています。
あくまで結果論ですので、労働者側はこのような裁判所の判断を期待することなく、具体的な主張立証をすべきであると考えましょう。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。