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今日は、うつ病による休職期間満了に基づく解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。
綜企画設計事件(東京地裁平成28年9月28日・労判ジャーナル58号43頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、うつ病により休職し、その後リハビリ勤務(試し出勤)をしていたが、Y社において平成24年6月11日付でXに対する休職期間満了の通知及び解雇の意思表示をしたことから、Y社に対し、本件退職措置及び本件解雇は無効なものであると主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、労働契約に基づき、同日から本判決確定の日までの未払賃金等の支払を求め、Y社による試し出勤中の処遇並びにその後の本件退職措置及び本件解雇が、労働契約の付随義務である信義誠実義務に違反する債務不履行及び不法行為に当たると主張して、慰謝料500万円等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
解雇無効
慰謝料請求は棄却
【判例のポイント】
1 本件通知書は表題が「解雇通知書」である上、解雇予告手当金が給付されており、離職票の具体的事情記載欄(事業主用)にも「解雇」との記載があり,解雇の意思表示であるとみられる一方、引用されている就業規則の条文は休職期間満了に伴う退職に関連するものであり、休職期間満了による当然の退職の措置を通知したものともみられ、解雇の意思表示及び休職期間満了による退職の通知の趣旨の両方が併存する形の書面になっていて、客観的に見てそのいずれであるとも解し得るものである。
・・・Y社の意思としては、解雇であれ休職期間満了による退職措置の通知であれ、とにかくXの労働契約上の地位を失わせるという意思であったものと理解するのが合理的であり、本件通知書は、解雇の意思表示をしたものであるとともに、休職期間満了による退職の措置を通知したものでもあるとみるのが相当である。
2 休職原因である「復職不能」の事由の消滅については、労働契約において定められた労務提供を本旨履行できる状態に復することと解すべきことに鑑みると、基本的には従前の職務を通常程度に行うことができる状態にある場合をいうものであるが、それに至らない場合であっても、当該労働者の能力、経験、地位、その精神的不調の回復の程度等に照らして、相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合を含むものと解するのが相当である。
そして、休職原因がうつ病等の精神的不調にある場合において、一定程度の改善をみた労働者について、いわゆるリハビリ的な勤務を実施した上で休職原因が消滅したか否かを判断するに当たっては、当該労働者の勤怠や職務遂行状況が雇用契約上の債務の本旨に従い従前の職務を通常程度に行うことができるか否かのみならず、上記説示の諸点を勘案し、相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合であるか否かについても検討することを要し、その際には、休職原因となった精神的不調の内容、現状における回復程度ないし回復可能性、職務に与える影響などについて、医学的な見地から検討することが重要になるというべきである。
3 Y社は、Xが平成22年9月9日の出勤を最後にうつ病を理由に約1年半にわたりY社を欠勤したと主張する。確かに、Xは同日以降1か月の予定で休職を申し出たにもかかわらず、同年10月9日を過ぎても被告からの連絡に応答せず、同月27日、ようやくメールで返信するに至ったのであり、この期間は無断欠勤であるということができる。もっとも、Y社は、その後、Xからの診断書の提出を含めたやり取りを経て、Xに休職を認め、休職期間満了時には試し出勤まで行わせたのであり、Xが1年半も欠勤したものではない。そうすると、Xの無断欠勤は,解雇事由になるとは認められない。
また、試し出勤中のXの業務遂行状況については、上記で説示したとおりであり、技能能力が著しく劣り、将来とも見込みがないとか、精神又は身体の著しい障害により、業務に耐えられないなどとはいえないことは明らかであり、就業規則35条所定の解雇事由があるとは認められない。
上記判例のポイント2は一般論として重要な考え方ですので押さえておきましょう。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。