おはようございます。
今日は、業務外チャット利用と懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
未払賃金等支払請求・損害賠償請求事件(東京地裁平成28年12月28日・労判ジャーナル60号60頁)
【事案の概要】
本件は、本訴事件において、Y社の元従業員XがY社に対し、懲戒解雇は無効であると主張し、反訴事件において、Y社がXに対し、Xの業務中における業務外チャット時間が長時間であり、これを労働時間から控除すると給与が過払いであるとして、不当利得返還請求権に基づき、既払給与金約16万円等、Xが社内のチャットにおいてY社に対する信用毀損行為をしたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき300万円等の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
懲戒解雇は有効
未払賃金等支払請求を一部認容
Y社のXに対する損害賠償請求を一部認容
【判例のポイント】
1 本件チャットは、その回数は異常に多いと言わざるを得ず、社会通念上、社内で許される私語の範囲を逸脱したものと言わざるを得ず、職務専念義務に違反するものというべきであるが、職務専念義務違反(業務懈怠)自体は、単なる債務不履行であり、これが就業に関する規律に反し、職場秩序を乱したと認められた場合に初めて懲戒事由になると解するべきであるところ、本件チャットは、単なるチャットの私的利用にとどまらず、その内容は、顧客情報、信用毀損、誹謗中傷及びセクハラというものであるから、就業に関する規律(服務心得)に反し、職場秩序を乱すものと認められ、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、本件解雇は、有効である。
2 本件タイムカードによれば、Xは終業時刻(午後6時)よりも遅い退勤が常態化していることが認められるところ、Y社において、Xが残業する場合、所属長(部長)への申請が不要という扱いをしており、残業することについて、何ら異議を述べていないことからすれば、居残り残業時間については、黙示の指揮命令に基づく時間外労働にあたると認められ、居残り残業時間から、この時間になされたチャットに要した時間を控除するべきか問題となるところ、明らかに業務と関係のない内容のチャットだけを長時間に亘って行っていた時間を特定することが困難であること等を考慮すれば、所定労働時間外になされたチャットについても、Y社の指揮命令下においてなされたものであり、労働時間に当たるというべきであるから、居残り残業時間から、この時間になされたチャットに要した時間を控除することはできない。
黙示の指揮命令と判断される要素がすべて揃っているのでこのように判断されてもやむをえません。
恐ろしいことに業務目的外のチャットをやっていた時間も労働時間となっていることです。
時代も時代ですし、不必要に会社に残っている従業員はどんどん退社させるのが得策です。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。