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今日は、基本給の一部を固定残業代とする就業規則変更の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
プロポライフ事件(東京地裁平成27年3月13日・労判1146号85頁)
【事案の概要】
1 主位的請求
Xは、Y社に対し、労働契約に基づき、平成23年2月分から平成25年2月分までの未払賃金合計1288万8408円(平成26年7月10日付けで元本組入れした確定遅延損害金を含む。)+遅延損害金の支払を求めるとともに、労基法114条に基づき、付加金911万6855円+遅延損害金の支払を求めている。
2 予備的請求
Xは、Y社に対し、債務不履行に基づき、損害125万3735円+遅延損害金の支払を求めている。
【裁判所の判断】
1 Y社は、Xに対し、643万6912円及びこれに対する平成26年7月11日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
2 Y社は、Xに対し、243万6535円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
【判例のポイント】
1 前記のとおりの変更の内容に照らせば、23年6月変更の目的は、基本給を減じ、その減額分を労基法及び同法施行規則の除外賃金とし、又は固定残業代とすることによって、残業代計算の基礎となる賃金の額を減ずることに主たる目的があったものと認めるほかないところ、そのような目的自体の合理性やY社がXに対して前記目的を明確に説明したことを認めるに足りる証拠がない以上、形式的にXが同意した旨の書証があるとしても、その同意がXの自由な意思に基づくものと認めるべき客観的に合理的な事情はない。
そうすると、23年6月変更はその効力を認めることができないから、平成23年6月も、Xの賃金(固定給)は、23年4月変更時点と同じ、基本給35万円及び家賃手当3万円の合計38万円というべきである。
2 Xは、平成23年2月分から同年5月分までの割増賃金の立証が認められなかった場合に、裁判所が、その損害(同期間に得られたであろう割増賃金相当額)を民事訴訟法248条に従って認定すべき旨を主張する。
しかしながら、ある一定の期間内に得られたであろう割増賃金相当額という損害は、その客観的性質に照らせば、その額を立証することが極めて困難であるとは認められない(本件において同期間の割増賃金の立証に成功したかどうかという事情がこの認定判断を左右するものではない。)。したがって、民事訴訟法248条に従って損害額を認定することは許されないというべきである。
3 Xは、平成23年6月以降も、同年5月までと比較して勤務内容に大きな変更がなく継続して時間外労働が発生していること等から損害の認定月の直近である同年6月から同年8月までの3か月間の時間外労働時間の平均値を同年2月から同年5月までの各月時間外労働が発生していた場合の割増賃金額の損害と認定すべき旨を主張する。
しかしながら、既に認定したXの同年6月から同年8月までの労働時間は、別紙労働時間集計表記載のとおりであって、おおむね、始業時刻は午前9時又は午前9時30分、終業時刻は午後9時30分から午後11時45分までのばらつきがある上にそのばらつきには確たる規則性を見出すことができないし、休日の取得についても同年6月から同年8月までと同様とみるべき事情が見当たらないことに照らせば、同期間の時間外労働時間の平均値と同じ時間外労働を、同年2月から同年5月まで行っていたと認めることはできない。
上記判例のポイント1は是非参考にしてください。
形式的に従業員の同意書さえ取ればOKなんてことはありませんのでご注意を。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。