おはようございます。
今日は会社からの元アイドルらに対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。
元アイドルほか(グループB)事件(東京地裁平成28年7月7日・労判1148号69頁)
【事案の概要】
本件は、芸能マネジメント会社であるY社が、その専属タレントであったXに対し、Xの出演が予定されていたライブイベントに一方的な通告をもって出演せず、出演が予定されていた以後のイベントを欠演したことにより、Y社が損害を受けたとして、債務不履行ないし不法行為に基づいて、Aに対しては、Xの親権者としての監督義務を怠ったとして、不法行為による損害賠償請求権に基づいて、損害の賠償を請求する事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、Y社の指揮監督の下、時間的場所的拘束を受けつつ、業務内容について諾否の自由のないまま、定められた労務を提供しており、また、その労務に対する対償として給与の支払を受けているものと認めるのが相当である。したがって、本件契約に基づくXのY社に対する地位は、労働基準法及び労働契約法上の労働者であるというべきである。
2 Y社は、Xのその歌唱やルックスにつき代替性がないなどと主張するが、Bの活動の中心は歌唱とダンスを集団で行うライブ活動にあり、そのような活動においてXが他人によって代替できないほどの芸術性を有し、同人の人気などの個性がタレント活動としての重要な要素となっていると認めるに足りる証拠はない。また、付随的な活動として行われているファンとの交流活動がXの業務全体に占める割合が相当程度あることを考慮しても、上記認定を左右するものではない。
3 本件契約が締結された平成25年9月1日から既に1年以上が経過してからされた本件申出は、XがY社を退職する旨の意思表示ということができるのであって、これにより本件契約は解除されたというべきである(労働基準法137条)。そうすると、Xは、同日以降、Y社に対し、本件契約に基づく出演義務を負っていない。
労働基準法137条では以下のとおり規定されています。
「期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。」
ちなみに民法628条は以下のとおり。
「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。」
このあたりの判断は顧問弁護士に相談すればリスク回避ができる分野ですね。