おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
今日は、調整手当の固定残業手当相当性に関する裁判例を見てみましょう。
あおき事件(東京地裁平成28年9月27日・労判ジャーナル58号45頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、平成24年8月から平成26年7月までの時間外労働に係る未払割増賃金並びに労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた(これに対し、Y社は、1日3.5時間以内の時間外労働については、固定残業手当により割増賃金は支給済みであるなどと主張して、Xの請求を争っている)事案である。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し、約450万円を支払え+付加金として約220万円を支払え
【判例のポイント】
1 調整手当については、従業員の生活を補助するための手当と位置づけられ、会社が認めた場合に支給することとされていたものであるから、労働条件通知書上の「調整手当」の記載を給与規程上の調整手当とは異なる趣旨と理解することは困難であり、その全部又は一部が固定残業手当の趣旨であると理解することはできず、固定残業手当部分が明確に区分されているということもできないこと等から、Xの入社時の給与体系は、基本給が20万9380円、調整手当が9万1207円というものである。
2 平成24年4月の給与体系の変更によりXが受ける不利益の程度は著しいところ、その不利益の程度に照らし、Y社のXに対する説明内容は不正確かつ不十分と言わざるを得ないうえ、平成24年4月1日付けの就業規則変更の経緯等に照らせば、Xが本件同意書に署名したからといって、これがXの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したとはいえず、Xによる有効な同意があったとは認められないから、Xについて、平成24年4月の給与体系の変更は効力を有せず、同月以降についても、基本給以外に過勤手当名目で支給される手当について、固定残業手当の性質を帯びるに至ったものとは認められない。
3 Y社の主張する固定時間外手当制度はXについて効力を有するとはいえず、そのため未払割増賃金の金額は多額にのぼり、そのことによりXが受けた不利益も大きいといえるし、Xが本訴提起を余儀なくされた経緯などを踏まえると、Y社に対しては、付加金の支払を命じるのが相当であるが、Y社も、月1回程度の夜間当番の日を除き、労働時間については適切に把握したうえ、1日3.5時間を超える時間外労働については、一定程度割増賃金を支払っていたこと、平成24年4月の給与体系の変更に際し、結果的に無効と判断されたとはいえ、就業規則の変更やXの同意取得に向けた手続を取っていたことなどの事情も考慮すると、付加金の額については、付加金対象賃金額の半額に相当する222万9188円をもって相当と認める。
固定残業制度は百害あって一利なしだというのが個人的な意見です。
ハイリスクノーリターンです。普通に残業代払うのが一番です。
付加金についてはいくつか裁判所が会社側の事情も考慮して半分にしてくれています。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。