セクハラ・パワハラ24 企業が設定した目標が達成困難であるとハラスメントにあたる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、役職定年制度規程に基づく支店長の地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

北おおさか信用金庫事件(大阪地裁平成28年8月9日・労判ジャーナル57号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の支店長の地位にあったXが、役職定年制度規程に基づき専任職として処遇されることとなったが、Xを専任職として処遇することは人事権の濫用に当たるとして、支店長の地位にあることの確認及び主位的に不法行為に基づく損害賠償として、予備的に(第二次請求として)雇用契約に基づく賃金請求として、専任処遇後の差額賃金・賞与の支払を求めるとともに、本件処遇が不法行為に当たる、本件処遇後にハラスメントを受けたとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 職位は、当該会社における制度設計によっては、当該職位に基づいて付与される賃金等の待遇を表す地位と捉えることも可能であるところ、Y社では、役席によって役割給の金額が定まるとされていること、支店長の役割給が22万0500円であるのに対し、担当副部長の役割給が14万2500円であることが認められ、かかる制度設計からすれば、職位が支店長であるのかそれとも担当副部長であるのかによって、支給を受ける役割給の金額が異なることとなり、そして、Xが、現在もY社に在籍しており、今後も毎月継続的にY社から役割給を含む賃金の支払を受ける地位にあることからすれば、Xが支店長として役割給を受ける地位にあるか否かを判断することが紛争の抜本的解決にも資するということができるから、Xの請求は、確認の利益があるといえる。

2 Xについては、Y社もその渉外力・交渉力については高い評価をしており、実際、本件処遇後も、良好な営業成績を上げていることに照らしても、Xが渉外力・交渉力を要する業務については能力を有しているといえるものの、支店長として、組織運営という業務に従事するに足りるかという観点からみた場合には、Y社が求める水準には達していないと評価したことが不当であったということはできず、本件処遇が人事権の濫用に当たるということはできない。

3 本件処遇が人事権の濫用に当たると認めることはできないから、本件処遇が不法行為に当たるということもできず、また、Xが勤務経験がない拠点内の支店に配属されたことをもって、不平等な取扱いを受けたということはできず、さらに、企業が目標を設定する際に、容易に達成可能な目標を達成するのではなく、達成が困難な目標を設定した上で、職員に奮起を求めることとすること自体には問題がなく、そして、企業が従業員個人の目標を設定すること自体にも問題はないから、融資獲得目標額がY社が定めたものであり、その額が高額であったことをもって、ハラスメントであるということはできないこと等から、本件処遇が不法行為に当たること、あるいはXが本件処遇後にハラスメントを受けたことを認めるに足りる証拠ない。

上記判例のポイント3は是非参考にしてください。

高い目標を設定する自体は違法でもなんでもないと判断されています。

そりゃそうでしょ。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。