おはようございます。
今日は、パワハラに基づく損害賠償請求が棄却された裁判例を見てみましょう。
日東電工事件(大阪地裁平成28年9月2日・労判ジャーナル57号25頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員Xが、Y社に対し、配転合意の無効を理由とする配転先での就労義務の不存在確認を求めるとともに、上司からパワーハラスメントを受けたとして、使用者責任に基づく損害賠償請求等の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xは、室長が、Xに対し、残業を禁止する一方で残業しなければこなせないような量の業務を課して、無給の残業を強要した旨主張するが、室長がXに対し無給の残業を強要したとは認められず、また、休憩時間中の昼寝を禁止したことまでを認めることはできず、さらに、室長のいずれのメールも、年休を取得しないで勤務するように述べたものではなく、その内容自体は、業務の適正な範囲内の指導であるが、他方、いずれのメールも、Xが年休の取得を申請した直後に送信されており、室長に年休の取得自体を非難する意思はなかったとしても、部下であるXの立場からすれば、年休取得を非難されているように受け止めることは無理もないといえるから、室長が上記各メールを送信したことは、時期において相当とはいえないが、Xの年休の取得がいずれも申請のとおり認められていることに鑑みると、室長が上記各メールを送信した行為は、慰謝料請求を認めるほどの違法性はないといえる。
一部不適切な対応があったことは認められますが、不法行為を構成するほどの違法性は認められないという判断です。
不適切だからといって慰謝料の支払い義務が生じるとは限らないということを理解するには参考になる事案です。
ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。