おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
今日は、歯科医師の労働契約に基づく未払退職金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。
医療法人社団市橋会事件(東京地裁平成28年8月24日・労判57号37頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の開設する歯科医院において歯科医師として勤務し、その後Y社を退職したXが、医療法人に対し、退職金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 歯科医師であるXは、Y社において、担当の患者の歯科治療の開始から終了まで継続して担当し、その間の自由診療の適否を含む治療方針、診療計画及び診療報酬の算定を自らの責任において決定の上診療業務を行っていたものであり、自身の担当患者の診療により得られた診療報酬額に比例した完全歩合制による報酬を得ていたのであるから、業務上の自由裁量を有し、成果に基づく報酬を得ていたといえること等から、本件契約は、医療法人の指揮命令の下で労務を提供し、その対価としての賃金を受領することは本質とする労働契約とは性質を異にし、請負契約ないし業務委託契約的な性質を持つ契約であると解するのが相当であり、Xも、かかる特質を理解して本件契約を締結したものと認めるのが相当であり、退職金請求権の発生要件のうち、労働契約の締結及び退職金請求権の根拠たる規範の存在の各要件を欠くから、Xの退職金請求には理由がない。
フルコミッションだからといって、それだけで労働者性が否定されるわけではありませんのでご注意を。
今回のケースでも、業務上の自由裁量の程度が高いことを労働者性否定の一理由とされています。
どこまでいってもケースバイケースの世界です。
労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。