おはようございます。
今日は、60歳前後での賃金の差異と年齢差別に関する裁判例を見てみましょう。
オートシステム事件(東京地裁平成28年8月25日・労判ジャーナル57号33頁)
【事案の概要】
本件は、元従業員Xが、同じ内容の仕事をしている会社の従業員のうち、Xを含む満60歳以上の者の賃金額が、満60歳に達しない者の賃金額よりも合理的な理由なく低く定められており、これにより損害を被った旨を主張して、不法行為に基づき、Xが得られなかった賃金の差額相当分及び慰謝料の支払いを請求した事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 会社は、会社の車両管理者の基本給与を決定するに当たっては、会社が自家用自動車管理業を安全かつ確実に行うため、責任感と優秀な技能を有し、かつ、健康な若年層及び中年層の車両管理者をより多く擁する必要があるとの認識や、高年齢者は様々な健康問題を抱えている場合が少なくなく、また、自動車運転によって必要な能力、技能等は加齢とともに低下していくとの認識の下、若年層及び中年層に対しては高年齢者層に対する場合と比べて手厚い処遇をすることとしているというのであり、このような考え方自体は、専任社員につき満60歳での定年制を採用し、もっていわゆる終身雇用型の雇用制度を採用している会社が、会社に採用された後はそのままより長い期間働く可能性が高いことを見越してより若い労働者を優遇するという点からも一定の合理性があるものということができること等から、会社が、Xを含む会社の車両管理者につき、その年齢によって賃金額に差異を設けていることは、Xに対する不法行為の権利侵害には該当しない。
最近流行りの争点です。
「平等」という概念をどのように捉えるのか、また、これは「差別」なのか「合理的理由に基づく区別」なのかが問われているわけです。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。