Monthly Archives: 1月 2017

セクハラ・パワハラ22 エビデンスがない場合のパワハラに基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、視覚障害者のパワハラ等に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

KDDIエボルバ事件(東京地裁平成28年8月2日・労判ジャーナル57号46頁)

【事案の概要】

本件は、てんかん及び左同名半盲の視覚障害を有し、Y社との間で、障害者雇用枠での雇用契約を締結し、稼働した後、退職したXが、Y社に対し、Xを侮辱し、パワハラをしたことが、職場環境配慮義務違反の債務不履行及び不法行為に当たると主張して、損害賠償として、精神的苦痛の慰謝料150万円の支払いを求め、また、本件健康診断の視力検査の際にXを受傷させたことが、安全配慮義務違反の債務不履行及び不法行為に当たると主張して、損害賠償として、治療費等22万円の支払いを求めるとともに、Xに対して違法な退職勧奨をしたことが不法行為に当たるとして、本件退職の意思表示をした日である平成25年11月8日から平成26年9月30日までの間の未払賃金相当損害金約223万円等の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XがY社従業員から怒鳴りつけられ、侮辱されたという事実を裏付けるに足る的確な証拠はなく、また、Xを殊更晒し者にしてその人格を否定し、パワハラと評すべき対応をしたことをうかがわせる証拠はないこと等から、パワハラに関するXの主張は理由がない。

2 Xは、眼痛で欠勤していたところ、Y社の従業員から欠勤が続けば解雇になるという説明を受け、解雇か辞職かの二者択一を迫られて辞職しているが、Xの眼痛が業務上の負傷であるとは認め難く、解雇が制限されるとは認められないので、欠勤が続けば解雇になるとの会社の説明が虚偽であったとか、違法な退職勧奨に当たるとはいえないから、Y社従業員の説明が虚偽であり、違法な退職勧奨をしたことを前提とするXの錯誤の主張は、その前提を欠き、理由がないと言わざるを得ない。

パワハラ事案では、多くの場合、原告側(労働者側)の立証の困難さをどう克服するかが鍵となります。

言った言わないのレベルと、仮に言ったとして、それが違法と評価できる程度のものかというレベルがあり、

前者をクリアできない限り、後者の問題になり得ません。

立証をどうするかということを事前に考えておく必要があるわけです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介638 成功の掟(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
新装版 成功の掟

物語を通じて、成功哲学、成功するための心構えが伝わってきます。

小手先のハウツー本では全くありません。とてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

わしはこれまで大勢の百万長者に出会ったが、みんな仕事の虫だった。連中には、仕事が趣味と同じように楽しいのだ。だから金持ちというものは、めったに休暇などとらん。わざわざ好きな仕事から離れる必要などないからな。休むのはかえって苦痛といってもよい。さんざん金を儲けていながらまだ働き続けるのもそのためじゃ。」(22頁)

私も見ていて思うのですが、仕事で成功している人で、仕事が嫌いな人を見たことがありません。

仕事自体は、苦しいことが多くですし、決して楽しいばかりではありませんが、やりきったときの達成感・満足感を知ってしまうと、やめられなくなります。

仕事を生活費を稼ぐための手段と考えている人と、仕事を自己実現の手段と考えている人では、仕事に対する向き合い方が大きく異なります。

成功している人の多くは、後者ですよね。

こういう人たちは、もはや生活費には困らない生活をしているので、仕事に対する向き合い方が違うのです。

労働時間についてますます規制が厳しくなってきますので、労働基準法の適用がある方の中では「仕事の虫」はもはや死語でしょうが、幸い私のように労基法の適用がない人は、これからも自由に好きなだけ仕事をしていけます。

わたしは死ぬまで仕事の虫でしょうね。

解雇221 訴訟提起後に作成した証拠の価値(信用性)(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、業務遂行能力の欠如に基づく解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

N社事件(東京地裁平成28年8月30日・労判ジャーナル57号29頁)

【事案の概要】

本件は、ガスフィルターの開発製造業者であるY社の元従業員Xが、業務遂行能力の欠如を理由に解雇されたが、同解雇には客観的に合理的な理由がなく社会通念上の相当性もないから無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同解雇日以降の毎月の賃金、賞与及び減額された差額分2000円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社が実施したプレゼンテーション研修は平成25年6月から同年9月の間に行われ、平成25年度の業務査定では中位の「E」評価がされていること、開発プロジェクト1は同年6月に開始し、開発プロジェクト2は同年12月に開始し、Y社は平成26年1月に上記査定をした時点以降も、いずれのプロジェクトもXにそのまま担当させる判断をしている点に鑑みると、上記査定結果をもって労働契約の継続を期待できない程度の業務遂行能力の欠如を認定することはできず、また、Y社は、Xの解雇後にフィルターハウジング設計の技術者として採用したAに、Xが在籍中に作成した資料を分析させ、そのAは業務能力査定報告書においてXの能力不足を判断しているが、Aは、Y社の社員であるところ、上記報告書は本件訴訟の提起後にY社の指示に従い作成したものと推定されること等から、上記報告書で示された見解を直ちに本件解雇のなされた平成26年4月当時の業務遂行能力の判断に結び付けることはできず、本件では、本件労働契約上求められる業務遂行能力の欠如までは認められず、本件解雇に客観的に合理的な理由はなく、社会通念上の相当性もないため、無効である。

2 元従業員の平成26年4月分賃金は、従前の月26万5000円から月26万3000円に減額して支給されているところ、この点について、Y社は、Xの平成25年度の業務査定の総合評価が最も低い「IN」であったため、社員就業規程412条に基づいて調整したものである旨主張するが、社員就業規程412条は、冒頭で「昇給」と題した上、本文には「給料は毎年職務成績及び会社の業績に基づき会社側によって検討され給与基準に基づき調整される。」とあり、昇給について規程したものであることは明らかであり、降給又は減給の根拠と解することはできず、また、社員就業規程には他に賃金を減額する根拠となる規程は見当たらないから、上記賃金の減額は無効である。

証拠の作成をオンタイムで作成せずに、訴訟係属後にあわてて作成しても、証拠価値が低いことは言うまでもありません。

日頃から適切に証拠作成・収集をしておくことが裁判になったときに活きてくるわけです。

本の紹介637 戦略がすべて(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
戦略がすべて (新潮新書)

「僕は君たちに武器を配りたい」の著者です。

帯にはでかでかと「バカは市場で勝ち残れない」と書かれています(笑)

いいですね~。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

不確実で厳しい未来においては、『自分の労働をコモディティ化させないこと』が重要になる。」(87頁)

・・・自らの能力を高め、優れた人材として評価を受け、高い報酬を得たいという者だけがこの競争に参加すればいい。こうした競争が嫌ならば、『コモディティ化』された人材として、大きな夢は見ず、賃金や条件の不満は飲み込んで、こつこつ働くしかない。」(23頁)

心では多くの人が感じていることをここまでストレートに言ってしまうところがいいですね。

「わかっちゃいるけど、やらない」というのが世の常です。

やる人はやるし、やらない人はやらない。 ただそれだけの差です。

日頃から臨戦態勢を取り続けていないと、平穏な生活慣れして、いざというときに体が言うことをきいてくれません。

圧倒的努力を続けられるかどうか。

やると決めたことを途中で投げ出さずに最後までやり続けられるか。

それだけです。

賃金123 固定残業代の有効性が争われた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、時間外割増賃金部分の区別と時間外割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

エフエヌシステム事件(東京地裁平成28年8月24日・労判ジャーナル57号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結して勤務したXが、退職後にY社に対し、在職中に時間外労働をしたと主張して、賃金請求権に基づく割増賃金等の支払を求めるとともに、割増賃金の不払について労働基準法114条に基づく付加金等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金として292万4990円+同額の付加金を支払え

【判例のポイント】

1 労働契約では、基本給を月額35万円とした上で、月間総労働時間が200時間を超えた場合はその超過時間につき1時間当たり1750円を別途支払い、150時間に満たないときはその不足時間につき一定金額を減額する旨の約定を内容とするものであるところ、当該約定によれば、1か月200時間以内の労働時間において時間外労働がされても、基本給の金額が増額されることはなく、時間外労働時間の長短にかかわらず支給金額(基本給)が増減することもないから、月額35万円の基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と労働基準法37条1項の規定する時間外の割増賃金に当たる部分とを明確に判別することはできないというべきであり、Y社は、Xに対し、月間200時間を超える労働時間中の時間外労働のみならず、月間200時間以内の労働時間中の時間外労働分についても、月額35万円の基本給とは別に、同条所定の割増賃金を支払う義務を負う。

そりゃそうだ、という判決です。

もうそろそろ固定残業制度は廃止したほうがいいのではないでしょうか。

有害無益です、この制度。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介636 スピード・ブランディング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
スピード・ブランディング

パーソナル・ブランディングについての本です。

どのようにしてブランディングしていくのが正しいのかが書かれています。

ブランディングを意識している人にとっては、基本的な内容です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・そんなある日、私に大きな転機が訪れます。それは、ある大富豪との出会いでした。その南カリフォルニアに住む大富豪は私にこう言ったのです。
『David, for things to get better, you have to get better.』
「あなた自身が価値ある人間にならなければ、あなたの人生は一向に良くなりませんよ」ということです。・・・これを機に、私はその『価値』を作るために自己投資に目覚め、自分で自分の人生を舵取りできるようになろうと決意しました。」(2頁)

商品が売れない理由はその商品の価値が低いからではありません。

自分の価値が低いからだと思うのです。

実際はどうかはわかりませんが、そう思わなければ、先へは進めません。

特に多くの給与所得者の方の場合、取り扱う商品やサービスそれ自体は自分の力では変えることはできません。

与えられたモノを売るほかありません。

同じモノを売っても、売れる人と売れない人がいますよね。

これって、運の問題ですか?

そんなはずありませんよね。

売っているモノの価値の差ではありません。

売っている人の価値の差です。 

さて、みなさんは自分の価値(ブランド)を高めるために毎日どんな準備をしていますか?

解雇220 解雇の相当性要件を満たさないとの理由で無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、企業秩序違反等に基づく解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

GCAサヴィアン事件(東京地裁平成28年8月19日・労判ジャーナル57号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員が、平成24年9月9日付け降格及び平成25年8月31日付け普通解雇の無効並びに会社からの嫌がらせ等の不法行為を主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認、平成24年9月から平成25年8月までの間に降格に伴い減額された賃金約80万円及び解雇後の平成25年9月から平成26年2月までの未払賃金の合計約480万円の支払、同年3月以降の毎月の賃金約67万円の支払並びに慰謝料100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇では、Xの能力、その発揮、言動、態度等における問題は深刻であり、就業規則の定める「はなはだしく業務能率が悪く、また業務の遂行に必要な能力を著しく欠くとき」又はこれに「準ずるやむを得ない理由」に一応該当すると言うべきであるが、解雇は降格・降給と異なり、労働契約を終了させ、挽回の機会もなく労働者にとって不利益は大きいから、労働者に能力不足、勤務態度不良又は適格性の欠如があっても単に使用者の期待に十分にそわないという程度にとどまらず、労働契約の継続を期待しがたいほどに重大な程度に達していることを要すると解されるところ、Xに対しては、再度の降格・降給は相当であるが、本件解雇は、いささか性急で、酷と見ることができ、本件解雇は社会通念上の相当性を欠くため無効であるから、Xは労働契約上の権利を有する地位をなお保持しているから、この地位を確認すべきである。

2 本件降格は無効とはいえないから違法性を認めることはできず、また、退職勧奨や面談の繰り返しが、不法行為を成立させるほど違法なものとは認められず、さらに、Xが主張するようなパワーハラスメント又はプライバシー侵害の不法行為が成立すると認めることはできない。

解雇理由は存在するものの、解雇は重すぎるということで相当性の要件で助けられた事案です。

はっきり言って、予測可能性は高くありません。 どこまで行ってもケースバイケースですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介635 人生で大切なことはいつも超一流の人たちから学んだ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
人生で大切なことはいつも超一流の人たちから学んだ

よくあるタイプの本ですが、1つでも何か得られればラッキーです。

セミナーでも本でも1つの宝物を見つけられるかどうかが勝負です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ボクシングにまったく不案内な私にもわかるよう丁寧に説明してくれた内山選手の言葉の中で私が強く覚えているのは、『自分の限界のその先を見続けたい』ということ。自分で思っている限界の枠をどうにかして外して、その外した先を見る。これを繰り返すことで、進化した自分を体感できるというのです。」(20頁)

いつ死ぬかわかりませんが、僕は、死ぬまでの間、どこまで進化できるかを自分で見てみたいという気持ちを強く持っています。

ジムに通うのも、ボクシングに通うのも、同じ理由です。

常に超回復していたいのです。

何も変わらない穏やかな日常では、生きている実感が持てないのです。

ゴールなんて設定する必要はないと思います。

残された時間で、どこまで行けるのか。

ただそれだけです。

労働者性20 営業支援業務従事者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労働契約上の労働者に基づく解雇無効地位確認請求に関する裁判例を見てみましょう。

AGORA TECHNO事件(東京地裁平成28年8月19日・労判ジャーナル57号40頁)

【事案の概要】

本件は、ITソリューション事業などを行うY社と契約を締結し、営業支援等の業務を行ったXが、Y社との契約は労働契約であったが、平成26年5月29日、解雇されたものの、本件解雇は解雇権の濫用であり無効であるとして、地位確認、未払賃金等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社は自由な意思において労働契約ではなく業務委託として本件契約を締結し、本件契約を継続したと認められ、本件契約の形式において、本件契約が労働契約であったとは認められず、そして、Y社の他の従業員が勤務表、休暇・遅刻・早退の届出、日報などにより管理されていたのに対し、Xはその提出を求められていなかったと認められ、本件契約において日々具体的な営業活動を行うことなどを求められていたとは認められないことにも照らせば、XはY社の指揮命令下にあったとは認められず、また、Y社代表者はXに対し成果が上がれば報酬の増額を考える旨供述したと認められるから、報酬はXの業務の成果に対する対価としての性質であったと認められ、労務提供の対価であったとは認められず、さらに、Xは、会社外部の事業者として報酬を請求していることなどからは、事業者性が認められること等から、本件契約の形式面、当事者の意思、指揮命令下の労働、報酬の労務対価性、事業者性などの観点から総合的に検討しても、本件契約は請負契約としての業務委託契約であったと認められ、労働契約であったとは認められない。

これだけの事情がそろえば、労働者性は否定されるでしょうね。

もっとも、一般的には、労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介634 運に愛される人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
(文庫)運に愛される人 (サンマーク文庫)

あまり「運」という言葉で片付けたくない人間ですが、ひとまずどんなものか読んでみました。

すべては原因と結果の法則だと思っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いまそこにいるあなたは、『私は過去、こういう選択をしてきました』という見本市のようなものです。いまの状態が自分でいいと思うなら、正しい選択をしてきたということですが、もしもいいと思えないのなら、これからの選択を変えていかなければならないのです。」(93頁)

アマゾンのジェフ・ベゾスも同じことを言っていますね。

「In the end, we are our choices.」

人生は選択の連続です。

日々の選択如何で人生が決まります。

なんとなく選択すれば、なんとなくの人生になるのは当然のことです。

1つ1つの選択を自分の力・価値を高めるものにしていく。

そういう意識を持つことがとても大切だと思います。