Monthly Archives: 12月 2016

競業避止義務20 競業禁止合意に基づく損害賠償請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、競業禁止合意に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

リンクスタッフ事件(大阪地裁平成28年7月14日・労判ジャーナル56号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が元従業員に対し、両者間では退職後一定期間は同業他社に就職しないこと等を内容とする競業禁止の合意があったにもかかわらず元従業員はこれに違反した、元従業員は他の退職従業員と共謀してY社の事業の妨害を図ったなどとして、債務不履行ないし不法行為に基づき、損害賠償を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 退職後の競業禁止の合意は、労働者の職業選択の自由を制約するから、その制限が必要かつ合理的な範囲を超える場合は公序良俗に反し、無効であるところ、元従業員はいわゆる平社員にすぎないうえ、Y社への在籍期間も約1年にすぎず、他方、競業禁止義務を負う範囲は、退職の日から3年にわたって競業関係に立つ事業者への就職等を禁止するというものであり、何らの地域制限も付されていないから、相当程度に広範といわざるを得ず、Y社は、業務手当の中には、みなし代償措置である2200円が含まれているとも主張するが、元従業員は、業務手当の中には、みなし代償措置が含まれているとの説明を受けたことはないと供述しているうえ、仮にこれが代償措置として設けられているとしても、その額は、元従業員の在籍期間全部を通じても総額で3万円ほどにすぎず、上記のような広範な競業禁止の範囲を正当化するものとは到底言えず、本件誓約書による競業禁止の範囲は合理的な範囲にとどまるものとはいえないから、公序良俗に反し無効であり、競業禁止の合意に基づく請求は理由がない。

競業避止義務についての判断としてはスタンダードなものです。

この分野の裁判は、会社側に分が悪いですね。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介624 「言葉」があなたの人生を決める(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
「言葉」があなたの人生を決める

アファメーションに関する本です。

アファメーションに関する本はいくつもありますが、その中でもこの本はとてもわかりやすく書かれており、おすすめできます。

もはや意識せずに自然とアファメーションの考え方ができている人にとっては再確認できる本です。

「言葉」が人生を決めるということですが、大げさではなく、まさにそのとおりです。

適切な言葉なくして適切な思考などあり得ないからです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

かつてオリンピックに出場した高跳びの選手で、『背面飛び』に最初に挑んだディック・フォスベリーという選手がいます。彼は国際大会で、バーを後ろ向きで飛び越えた最初の選手でした。そのころ、陸上のコーチたちは子どもたちに『この選手の真似をしちゃだめだ。彼は変わり者だから』といっていました。
しかし、最近では、どの選手を見ても背面飛びです。
1954年までは、誰もが1マイル(約1600メートル)を4分未満で走るのは不可能だと思っていました。ところが、ロジャー・バニスターがその壁を破りました。その後の4年間に、4分の壁は40回以上も破られました。
なぜでしょう?
ランナーたちが4分を切るのは可能だとわかったからです。」(56頁)

これは、「現状から抜け出したければブリーフシステムを変えろ!」という章で書かれている内容です。

ブリーフは、「信念」という意味で使われています。

おそらくビリーフ(belief)と記載したほうがわかりやすいように思います。

何を達成するかは、ほとんどの場合、何を信じるかによって決まる」(50頁)とも言っています。

自分はその目標を達成できるに値する人間だと信じられるか。

信じることを支えているのは、きっと、日々の圧倒的努力にほかならないのでしょう。

日々の圧倒的努力をすることなしに、どうやって自分のことを信じることができるでしょうか。

不当労働行為160 使用者が自ら示した条件に固辞し、それ以外では団交に応じないとしたことが不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、使用者が自ら示した条件に固辞し、それ以外では団交に応じないとしたことが不当労働行為とされた命令を見てみましょう。

国立大学法人東京学芸大学事件(東京都労委平成28年7月19日・労判1141号91頁)

【事案の概要】

本件は、使用者が自ら示した条件に固辞し、それ以外では団交に応じないとしたことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は日本語を話せない組合らが通訳者を手配すべきであると主張し、組合らはLLRで話すことのできないY社が通訳者を手配すべきであると主張するが、団体交渉で使用する言語を一義的に決めることができない本件にあっては、団体交渉で使用する言語を話すことのできない側が通訳者の手配に要する全ての負担を負うべきものということもできない。

2 以上の点に加えて、団体交渉のルールは労使の合意で決定するのが原則であることをも勘案すると、本件労使間においては、円滑な団体交渉を行うため、団体交渉における使用言語及び通訳者の手配に関するルールについて、労使双方に合意形成のための相応の努力を行うことが求められていたというべきである
したがって、組合らが上記合意の形成に向けた相応の努力を行っているにもかかわらず、Y社がそのような努力を行わず、団体交渉が円滑に行われる状況に至らなかった場合には、原則として、Y社は、正当な理由のない団体交渉拒否を行ったものと評価すべきである。

使用者側は、上記命令のポイント2を十分に理解しましょう。

ユニオンからの要求をなんでもかんでも拒否するだけが団交対策ではありません。

最低限の団交のルールを知り、柔軟に対応することが求められているのだと考えましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介623 新・プラットフォーム思考(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
たった一人で組織を動かす 新・プラットフォーム思考

プラットフォームではなく、プラットフォーム「思考」についての本です。

技術的な話というよりか、どのように考えるべきかということに重点が置かれています。

いろんな分野の人たちと連携を組んで物事をすすめていくという発想をベースにしています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『アイデアをマネされたらイヤだ』と考える人もいるかもしれませんが、たとえ良いアイデアだとしても、99パーセントの人は実行しません。どんどん外部の人に相談したほうが、思わぬ副産物が得られるものです。私は『アイデアとは実行されて初めて意味を持つのだ』と考えています。」(154頁)

うまくいく方法がわかっても、99%の人は実行に移しません。

また、それを継続することをしません。

これが真実です。

100年前も100年後も「継続は力なり」だと強く信じることです。

例外を設けず、ただひたすらやるべきことをやり続ける。

私のような凡人には、このやりかたしかありません。

苦しい道ですが、成功したければ覚悟を決めてやり続けるほかありません。

No pain, No gain.

解雇217 セクハラ等に基づく懲戒解雇が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、セクハラ等に基づく懲戒解雇が無効とされた事案を見てみましょう。

クレディ・スイス証券事件(東京地裁平成28年7月19日・労判ジャーナル56号29頁)

【事案の概要】

本件は、Y社及びY社から部分出向していたA社の双方で稼働していた元従業員Xが、平成27年4月15日に諭旨退職の通知を受け、同年5月27日付けで懲戒解雇されたことについて、本件懲戒解雇は無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成27年6月から本判決確定の日までの賃金月額100万円等の支払いを求め、併せて、平成26年度の賞与1275円等並びに平成27年5月に支給されるはずであった賃金と実際に支給された賃金との差額である約7万円等の支払いを求め、さらに、本件諭旨解雇及び本件懲戒解雇によりパニック障害と診断される状態となり重大な精神的苦痛を被ったと主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料300万円等)の支払いを求めた事案(Y社は、予備的に元従業員の通常解雇を本件口頭弁論期日においてXに通知した)である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賞与等支払請求及び損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 たしかに、Xの各行為(セクハラ行為、改ざんした電子メール記録の提出等)はそれぞれ懲戒事由に該当し、その内容からして、Xは相応の懲戒処分を受けて然るべきであると考えられるが、いずれの行為についても懲戒処分を検討するに当たって考慮すべき事情等があり、従前注意、指導といった機会もなかったのであるから、これらの行為全てを総合考慮しても、懲戒処分における極刑といわれる懲戒解雇と、その前提である諭旨退職という極めて重い処分が社会通念上相当であると認めるには足りないというべきであるから、本件懲戒解雇は無効であり、また、本件懲戒解雇について検討したところは、本件予備的解雇についても当てはまるので、本件予備的解雇が社会通念上相当と認めることはできず、本件予備的解雇は無効であるから、本件懲戒解雇及び本件予備的解雇はいずれも社会通念上相当であると認められず、解雇権を濫用したものとして無効であるから、Xは、Y社に対し、本件雇用契約の権利を有する地位にある。

2 本件懲戒解雇と、その前提である本件諭旨退職は、いずれも無効であるが、諭旨退職及び懲戒処分が無効であることから直ちに不法行為が成立するわけではなく、別途、不法行為の成立要件を充足するか否かを検討すべきところ、本件諭旨退職及び本件懲戒解雇が無効とされるのは、これらの懲戒処分は社会通念上相当と認められないからであって、Xの各行為はそれぞれ懲戒事由に該当し、その内容からしてXは相応の懲戒処分を受けて然るべきであると考えられること、本件諭旨退職及び本件懲戒解雇の処分自体は所定の手続を経て行われていることを併せ考慮すれば、本件諭旨退職及び本件懲戒解雇が不法行為法上違法な処分であるとまではいうことはできない

今回の解雇も相当性の要件で無効と判断されています。

現場レベルでこの相当性要件を適切に判断するのはとても難しいことです。

顧問弁護士に相談の上、過去の裁判例等から有効ラインを探るほかありません。

本の紹介622 超一流になるのは才能か努力か?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
超一流になるのは才能か努力か?

うーん、両方じゃないですか?

というタイトルですが、まあよしとしましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ある人がある分野で最終的にどれだけの業績をあげられるかを決定づける最も重要な要因が練習であることははっきりしているので、遺伝子になんらかの役割があるとすれば、その人がどれぐらい熱心に限界的練習をするか、あるいは練習がどれぐらい効果的なものになるかに作用すると考えるのが理にかなっている。」(310頁)

「限界的練習」という言葉が何度も出てきます。

成功するか否かは、遺伝子レベルでの勝負ではないということが如実にわかります。

仮に遺伝子レベルの勝負だとしても、決して、成功しない理由を遺伝子のせいにしてはいけません。

仮にそうだとしても、圧倒的な努力を続けること、限界的練習を続けることで定説を覆すことを考えるのです。

遺伝子や環境のせいにした時点で負けです。

戦う前から負けです。

そんな生き方だけはしたくありません。

労働災害89 歓送迎会後の任意の送迎中の事故死を業務災害に当たるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、歓送迎会後の任意の送迎中の事故死を業務上の事由による災害に当たるとした最高裁判例を見てみましょう。

行橋労働基準監督署長事件(最高裁平成28年7月8日・労経速2290号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していた労働者であるXが交通事故により死亡したことに関し、その妻が、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、行橋労働基準監督署長から、Xの死亡は業務上の事由によるものに当たらないとして、これらを支給しない旨の決定を受けたため、その取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。

行橋労働基準監督署長が上告人に対して平成24年2月29日付けでした労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の決定を取り消す。

【判例のポイント】

1 Xが本件資料の作成業務の途中で本件歓送迎会に参加して再び本件工場に戻ることになったのは、本件会社の社長業務を代行していたE部長から、本件歓送迎会への参加を個別に打診された際に、本件資料の提出期限が翌日に迫っていることを理由に断ったにもかかわらず、「今日が最後だから」などとして、本件歓送迎会に参加してほしい旨の強い意向を示される一方で、本件資料の提出期限を延期するなどの措置は執られず、むしろ本件歓送迎会の終了後には本件資料の作成業務にE部長も加わる旨を伝えられたためであったというのである

そうすると、Xは、E部長の上記意向等により本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その結果、本件歓送迎会の終了後に当該業務を再開するために本件工場に戻ることを余儀なくされたものというべきであり、このことは、本件会社からみると、Xに対し、職務上、上記の一連の行動をとることを要請していたものということができる。

2 そして、上記の経過でXが途中参加した本件歓送迎会は、従業員7名の本件会社において、本件親会社の中国における子会社から本件会社の事業との関連で中国人研修生を定期的に受け入れるに当たり、本件会社の社長業務を代行していたE部長の発案により、中国人研修生と従業員との親睦を図る目的で開催されてきたものであり、E部長の意向により当時の従業員7名及び本件研修生らの全員が参加し、その費用が本件会社の経費から支払われ、特に本件研修生らについては、本件アパート及び本件飲食店間の送迎が本件会社の所有に係る自動車によって行われていたというのである。

そうすると、本件歓送迎会は、研修の目的を達成するために本件会社において企画された行事の一環であると評価することができ、中国人研修生と従業員との親睦を図ることにより、本件会社及び本件親会社と上記子会社との関係の強化等に寄与するものであり、本件会社の事業活動に密接に関連して行われたものというべきである。

3 また、Xは、本件資料の作成業務を再開するため本件車両を運転して本件工場に戻る際、併せて本件研修生らを本件アパートまで送っていたところ、もともと本件研修生らを本件アパートまで送ることは、本件歓送迎会の開催に当たり、E部長により行われることが予定されていたものであり、本件工場と本件アパートの位置関係に照らし、本件飲食店から本件工場へ戻る経路から大きく逸脱するものではないことにも鑑みれば、XがE部長に代わってこれを行ったことは、本件会社から要請されていた一連の行動の範囲内のものであったということができる。

4 以上の諸事情を総合すれば、Xは、本件会社により、その事業活動に密接に関連するものである本件歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、本件工場における自己の業務を一時中断してこれに途中参加することになり、本件歓送迎会の終了後に当該業務を再開するため本件車両を運転して本件工場に戻るに当たり、併せてE部長に代わり本件研修生らを本件アパートまで送っていた際に本件事故に遭ったものということができるから、本件歓送迎会が事業場外で開催され、アルコール飲料も供されたものであり、本件研修生らを本件アパートまで送ることがE部長らの明示的な指示を受けてされたものとはうかがわれないこと等を考慮しても、Xは、本件事故の際、なお本件会社の支配下にあったというべきである。
また、本件事故によるXの死亡と上記の運転行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができることも明らかである。
以上によれば,本件事故によるXの死亡は,労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項,労働基準法79条,80条所定の業務上の事由による災害に当たるというべきである。

ぎりぎりのところでなんとか最高裁によって救済されました。

上告をあきらめていれば、この結果には至りませんでした。

あきらめたらそこで終わりです。

本の紹介621 一生モノの人脈力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
一生モノの人脈力 (フェニックスシリーズ)

人脈という言葉が好きではありませんが、この本の内容は素晴らしかったです。

どうしたら人の輪が広がっていくのか、その基本が書かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ブランドになるには、常に付加価値をつけることを考えよう。どんな仕事にも必ず何か付加価値を加えられる。・・・ただしリスクを負いたくない人、指揮系統を尊重する人、契約上の自分の職務にあくまでもこだわる人には、ブランドづくりはできない。何にでもハイハイと応じるイエスマンではいけない。優れたブランドを確立するには、人と違うことをやってやろうという進取の気性が大切なのだ。絶えず学び、成長し、自分のスキルを伸ばそうという熱意がなければ、他人に差をつけることはできない。」(201~202頁)

「ブランディング」とはつまるところ、どういうことなのでしょうか。

結局は、自分の価値を高め、他との明らかな違いを表現することに尽きるのだと思います。

その日その日を単に過ごす、終業時間をただひたすら待つ、という考え方とは真逆です。

この本でも書かれていますが、「人と違うことをやってやろうという進取の気性が大切」なのです。

そのためには「絶えず学び、成長し、自分のスキルを伸ばそうという熱意」が必要であることも当然のことでしょう。

人が寝ているときにこそ学び、人が休んでいるときにこそ仕事をするのです。

こういう価値観を共有できる仲間と仕事ができる幸せを日々感じています。

不当労働行為159 複数の組合が存在する場合における使用者の中立保持義務(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合事務所不貸与と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

神戸ヤマト運輸事件(兵庫県労委平成28年8月18日・労判1141号90頁)

【事案の概要】

本件は、本社の新社屋移転に際し、G労組に組合事務所に貸与しながら、X労組に貸与しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 使用者は、労働組合に対して当然に組合事務所を貸与する義務を負うものではないが、同一会社内に複数の労働組合が併存している場合には、組合事務所の貸与という便宜供与においても、労働組合の自主性を損なわない限りにおいて、各労働組合を平等に取り扱うことが求められている。そして、使用者が一方の労働組合に対して組合事務所を貸与しておきながら、他方の労働組合に対して組合事務所を貸与しないことは、合理的理由のない限り、他方の労働組合の活動力を低下させ、その弱体化を図ろうとする意図を推認させるものである。

2 本件のように、併存する二つの労働組合が双方とも組合事務所の貸与を求めている状況下においては、会社は、双方の労働組合を平等に取り扱うべきところ、当初はいずれの組合にも組合事務所として貸与する部屋がないと回答しておきながら、その後、X組合に事前に説明することなく、G組合にのみ組合事務所を貸与するに至った経緯からすると、Y社が主張する、本社移転前から継続して組合事務所を貸与していたG労組に対して優先的に貸与したとの理由付けは説得力に乏しい。

上記命令のポイント1をよく理解しておく必要があります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。