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今日は、車両管理者に対する年齢による賃金額の差異の適法性等に関する裁判例を見てみましょう。
L社事件(東京地裁平成28年8月25日・労判1144号25頁)
【事案の概要】
第1事件は、Y社と期間の定めのある雇用契約を締結していたXが、Y社の安全配慮義務違反により損害を被った旨を主張して、Y社に対し、不法行為又は債務不履行に基づき、慰謝料の支払いを請求した事案である。
第2事件は、Xが、同じ内容の仕事をしているY社の従業員のうち、Xを含む満60歳以上の者の賃金額が、満60歳に達しない者の賃金額よりも合理的な理由なく低く定められており、これにより損害を被った旨を主張して、不法行為に基づき、Xが得られなかった賃金の差額相当分及び慰謝料の支払いを請求した事案である。
【裁判所の判断】
いずれも請求棄却
【判例のポイント】
1 一般に企業が人材のいかなる属性等に着目してどのような処遇を行うかは当該企業の経営判断にゆだねられるべきものであって、当該人材の労働条件をどのように設定するかについては、当該企業の裁量の余地が相当程度認められるべきである。
2 我が国においては、ある企業において定年に達した者が同一の企業で又は別の企業で引き続き雇用されることを希望する場合、同人の賃金水準が同人が定年に達する前のそれと比べて相当程度低く定められることは一般的にみられる事象ということができる。このことは、法が、定年を迎えた者が再就職した場合のある月の賃金額が同人が60歳に到達したときの賃金月額(原則として、60歳に到達する前6箇月間の平均賃金)の61パーセント以下まで下がることを想定していることにも表れているということができる。
そして、XがY社において支給されていた賃金の各費目のうち、基本給与(本人給、職務給)、割増賃金については、一般に、Y社の車両管理者のうち満60歳に達しない者(主として専任社員)に対する支給額が、Y社の車両管理者の職務を行う専任嘱託契約社員に対する支給額を上回るというのであるが、これらはいずれもY社が採用する終身雇用型の雇用制度の特徴が反映されたものということができ、これらの費目につき、上述のような差異が生じることにも一定の合理性があるものというべきである。
さらに、Xは、Y社に在職中、本件想定初年度専任社員等のおおむね8割程度の年収を得ていたというのであり、その具体的な金額を併せて考慮すると、満60歳に達しない者との間の格差が社会通念上不相当であり、不合理な差別であると一概に断じることはできない。
3 以上に加え、Xが上記各期間に得ていた収入の総額の概算に占める上記高齢者雇用継続基本給付金及び上記在職老齢年金の合計額の概算の割合はごく僅かであって、Xが同期間に得ていた賃金の総額がその大部分を占めることや、Xは、Y社以外の他社を定年退職した後、Y社への就職を希望し、Y社における他の車両管理者の労働条件はともかく、X自身のおおよその労働条件については認識した上でY社に入社したことをも勘案すれば、上述のとおりXの年収の概算額が本件想定初年度専任社員等の1年当たりの推定賃金額を下回ることを考慮しても、かかる差異が社会通念上相当と認められる程度を逸脱する不合理なものとまではいい難いものというべきである。
最近はやりの論点ですね。
これからこの論点については裁判例が多く出てくると思いますので、注目していきます。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。