Daily Archives: 2016年11月18日

有期労働契約69(学校法人目白学園事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、有期雇用の大学教員に対する雇止めが有効と判断された裁判例を見てみましょう。

学校法人目白学園事件(東京地裁平成28年6月17日・労判ジャーナル55号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結していたXが、Y社により期間満了後の雇用契約の締結を拒絶されたことに関して、Y社に対し、主位的に、期間満了前に期間の定めのない雇用契約が黙示的に成立しており、上記の契約締結の拒絶は不当解雇に当たると主張し、また、予備的に、期間満了後の契約締結の拒絶は許されないと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社の責に期すべき事由によりXの労務遂行が不能になったと主張して(民法536条2項)、雇用契約に基づいて、賃金等の支払を求め、さらに、違法に解雇ないし契約締結の拒絶をされたと主張して、不法行為に基づいて、慰謝料等の損害金等の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間の平成21年度雇用契約は3年を雇用期間とする有期雇用契約が1回更新され、雇用期間を3年とする平成24年度雇用契約が締結されたにとどまっているから、その更新が多数回にわたって反復継続されたものと評価することはできず、また、Y社においては、平成24年度雇用契約を締結するに当たり、専任教員任用申請書について理事長の承認を得、Xを候補者とするY社教員予備選考報告書及びY社教員先行依頼書を添えてY社学長に発議し、Xを候補者とするY社教員資格審査答申書を同学長に提出し、最終的にXの任用について理事長の決裁を受けており、Xとの面接も行っていることが認められるから、その更新手続が形骸化し、曖昧なものであったということはできないこと等から、Xが無期の専任教員と職務内容が同様であったことを考慮しても、平成24年度雇用契約の期間満了後の契約締結の拒絶が無期雇用契約の解雇と社会通念上同視できると認めることはできない。

2 Y社の面接官は、平成21年度雇用契約の締結に先立ち、Xに対し、雇用期間が3年である旨を複数回説明し、その後、Y社は、Xとの間で、「雇用期間 平成21年4月1日から平成24年3月31日まで」、「契約更新の有無 甲において更新の可否を検討のうえ、本契約満了時に甲乙合意があった場合は、更に3年間の更新を行う」と明記された有期雇用教職員雇用契約書を取り交わしており、また、Y社において、期間の定めのある雇用契約により採用された専任教員につき、平成17年度以降、3年の雇用契約が2回以上更新された実例が存在しないことにも照らすと、Xが平成24年度雇用契約の期間満了時において有期雇用契約の更新を期待したとしても、その期待に合理的理由があると認めることはできないこと等から、Xの請求のうち予備的主張を前提とする地位確認請求、賃金請求及び損害賠償請求も、判断するまでもなく理由がない。

形式だけでなく、実質的にもしっかりと手続きを行うことの重要さがよくわかります。

どんな場合でも形式だけ整えるのでは不十分です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。