おはようございます。
今日は、法人解散に伴う病院長の解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
一般財団法人厚生年金事業振興団事件(東京高裁平成28年2月17日・労判1139号37頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Y社が解散に伴う本件解雇は無効であると主張して、雇用契約に基づく賃金請求または不法行為に基づく損害賠償請求として、2000万円の支払請求をした事案である。
原審は、Xの請求を棄却した。
【裁判所の判断】
控訴棄却
【判例のポイント】
1 (原審判断)Y社の解散自体は、RFOが改組されて新機構となり、新機構が本件病院等を自ら経営することが法改正により定まったことによるもので、やむを得ない事由によるものであったと評価されるところ、解散に伴い職員を解雇することもY社の解散手続に伴うやむを得ない措置であるというべきである。解散に伴う解雇については、事業そのものがなくなるのであるから、法人が存続しつつ人員削減措置をとる整理解雇とは前提を異にしており、いわゆる整理解雇の四要件は適用されない。
また、Y社は、Xを含む職員に対して、法改正に伴う対応について、十分な説明をしているものと認められることから手続上の瑕疵もない。そして、X・Y社間で雇用期間の保証があったとは認められないことから、Xの雇用期間の保証があったことを前提とする解雇無効の主張はその前提を欠く。
2 Xの主張する解雇回避努力義務は、本件解雇後、新機構にXが本件病院の院長として再雇用されるよう努力する義務を実質的には意味するものと理解できるが、Xを再雇用するかどうかの判断は、新機構あるいは改組前のRFOが判断すべき事項である。そもそもRFOのC理事長がXを採用しなかった理由に対し、Y社がRFOにXの本件病院の院長として適任であることを説得できる材料を有していたことを認めるに足りる証拠はない。なお、本件調停及び本件仮処分の経過によれば、X自身は本件病院の非常勤医師として勤務することを望んでいないと考えられることから、Y社が本件病院の非常勤医師として勤務できるよう新機構あるいは改組前のRFOに働きかけることはXの主張する解雇回避努力には含まれないというべきである。ましてや、円満退職のための調整努力については、Xの心情に即すれば理解できる面もあるが、解雇無効とされるほどの違法事由であるとは認められない。
そうすると、本件解雇は、Y社の解散に伴う事業上の都合によるやむを得ない理由に基づくものとして有効であり、Xの主張は理由がない。
偽装解散等の特段の事情がない限り、上記判例のポイント1のように判断されることになります。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。