Monthly Archives: 9月 2016

本の紹介595 ニャンコと学ぶマーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ニャンコと学ぶマーケティング

著者は、パナソニックの社員研修所でマーケティングを中心とした研修を担当する方です。

パナソニックに受け継がれるマーケティングのDNAについては参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

マーケティング戦略を立てるときには、『昨日の成功は、今日の失敗のもと』『昨日見つけた新発見は、今日はもう誰もが知っている』を肝に銘じていました。マーケティングは日々進化しています。競争相手も進化しています。市場だって日々変化しています。」(177頁)

そうですね。

どうしても、過去の成功体験に引きずられてしまいがちです。

この前、このやり方でうまくいったのだから、今回も同じようにやればきっとうまくいくと思ってしまうのは無理のないことです。

しかし、進化のスピードが速い分野でそれをやってしまうと、「何年前のやり方しているの・・・(失笑)」ということになってしまいます。

ついこの前まで斬新だったやり方も、あっという間に陳腐化してしまうわけで。

変化することに体と頭を慣れさせておかないと、流れの速さについていけなくなってしまいますね。

賃金116 競業他社に転職した場合の退職加算金の返還合意の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、競業他社に転職した場合の退職加算金の返還合意の有効性が認められた裁判例を見てみましょう。

野村證券事件(東京地裁平成28年3月31日・労経速2283号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、元従業員のXに対し、XがY社を退職する際、同業他社に転職した場合は返還する旨の合意をして退職加算金を支給したが、Xが退職後に同業他社に転職したと主張して、上記返還合意に基づき、退職加算金相当額+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

XはY社に対し、1008万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件返還合意は、本件制度に基づく本件退職加算金の支給に伴うものであるところ、本件制度は、従業員が申請し、Y社が承認した場合に、通常の退職慰労金に加えて退職加算金を支給するという制度であり、これを利用するか否かは、従業員の自由な判断に委ねられているものと解される。したがって、Y社を退職しようとする従業員において、Y社との間で将来同業他社に転職した場合に退職加算金を返還する旨の合意(本件返還合意)をすることを望まないのであれば、本件制度を利用しなければよいのである。本件においても、Xは、自ら本件制度の利用を申請したものであり、Xが本件制度の利用をY社に強制されたと解すべき事情は認められない

2 また、本件返還合意は、従業員に対して同業他社に転職しない旨の義務を負わせるものではなく、従業員が同業他社に転職した場合の返還義務を定めるにとどまるものである。したがって、Y社を退職しようとする従業員としては、将来同業他社に就職することが確定しているのでない限り、ひとまず本件返還合意をして退職加算金を受け取っておき、将来同業他社に就職する機会が生じたときに退職加算金を返還して就職するか否かを考えることで何ら問題ないということができるのであり、本件制度を利用して退職することが、これを利用せずに退職する場合よりも従業員に不利になる事態を想定することはできない。かえって、本件制度においては、通常の自己都合退職の場合に行われる退職慰労金の減額が行われないのであるから、退職加算金の支給を考慮しなくても、通常の退職より従業員に有利であるということができる

3 以上のとおり、本件制度は、退職加算金の受給に伴って本件返還合意をしなければならないことを考慮しても、Y社を退職しようとする従業員にとって通常の退職よりも有利な選択肢であるということができるから、本件制度のうち本件退職合意だけを取り上げて、これが退職後の職業選択の自由を制約する競業禁止の合意であると評価することはできないというべきである。

裁判所の判断に賛成です。

このような制度であれば、退職後の転職を不当に制約すると評価されることはないと思われます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介594 本音で生きる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方 (SB新書)

本音で生きることが難しい時代だからこそ堀江さんのこの本が売れているのだと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

飛びついた結果がどうなるかなどわからないが、確実にいえることがある。ノリのよい奴には、あちこちから声がかかるようになり、加速度的にいろんな経験ができるようになっていくのだ。」(98頁)

たしかにそうかもしれませんね。

周りを見わたしてみても、ノリがいい人にはお誘いがかかります。

ノリが悪くて、かわいげがない人を積極的に誘う人はあまりいませんよね(笑)

声がかかるということは、それだけいろんな経験ができるということですし、いろんな人に会えるということです。

どれだけ仕事ができても、お呼びがかからなければしかたがないわけです。

ノリのよさやかわいげというのは、思っている以上に大切な要素なのだと思います。

不当労働行為153(学校法人九州電機工業学園事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為にあたらないとした事案を見てみましょう。

学校法人九州電機工業学園事件(福岡県労委平成28年4月15日・労判1137号90頁)

【事案の概要】

本件は、定年退職予定の組合員2名に対して雇用期間1年、週10時間の勤務形態、基本賃金月額8万4600円等の短時間嘱託とする継続雇用条件を提示したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 本件のように、業務量、本人の能力や法人の経営状況等を考慮して継続雇用の労働条件を個別的に決定する制度の下においては、労働者の多様な希望への対応が可能であるところ、労働者が従前どおりの勤務を希望する場合において、労働者に提示された労働条件が、従前と比較して月額賃金の21パーセント程度、収入ベースでみると17パーセント程度となる月額84600円という著しく低いものであるときは、合理的な理由が認められない限り、同法(高年法)の趣旨に抵触するというべきである。

2 Y社は、定年退職者の継続雇用の条件については、就業規則等に定める継続雇用制度の範囲内でその都度、業務量、本人の能力及び法人の経営状況等に応じて定めていたということができ、特に、教員については、授業及び校務の実施体制上の必要性に応じて、「常勤嘱託」とするか「非常勤又は短時間嘱託」とするかを決定するとともに、授業のみを担当させる後者については、定年退職する教員が担当できる授業科目の年度ごとの実施体制等を考慮して、担当する授業時間数を決定していたとみることができる
・・・したがって、Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことについては、カリキュラム編成等の学校運営における合理的な理由に基づくものであったと認められる

3 Y社が、A2らに対して本件継続雇用条件を提示したことは、前記のとおり、ほかの継続雇用された教職員の雇用条件と比べて、経済的に不利益な取扱いであることは否定できない。
しかしながら、Y社が本件継続雇用条件を提示したことには、学校の運営上合理的な理由が認められ、また、非組合員にも本件継続雇用条件と同一の条件で雇用された事例があり、・・・Y社が本件継続雇用条件を提示したことが組合嫌悪の意思によることを示すとは認められない

継続雇用の際、合理的な理由なく労働条件を大幅に下げると本件のようなトラブルになります。

合理的な理由を説明できるかどうかが鍵となります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介593 そなえ 35歳までに学んでおくべきこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
そなえ ~35歳までに学んでおくべきこと~ (だいわ文庫) (だいわ文庫 D 319-1)

野村克也さんの本です。

名将野村監督が若者に人生で大切なことを教えてくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・しかし同時に、『同ぜず』という姿勢を忘れてはならない。・・・具体的にいえば、人の倍、練習するだけではなく、誰もやっていない方法を試してみる-そういったことだ。そして、一流と二流を分ける分水嶺は、ここにもあると思われる。・・・プロ野球にかぎらず、いい悪いは別にして、グローバル化したいまの日本は、競争社会と言わざるをえない。みんなが競争を強いられる。そこでは人と同じことをやっていては抜きん出ることはできない。むろん、『人を蹴落としてまで抜きん出たくない』という人もいるだろう。それはひとつの生き方だ。が、それは付和雷同的な生き方をすることではない。少なくとも、人と同じことをして満足しているようでは、ろくな仕事はできないと、肝に銘じるべきだろう。」(230~231頁)

「人と同じことをして満足しているようでは、ろくな仕事はできないと、肝に銘じるべきだろう」

野村監督、肝に銘じておきます。

人と同じように仕事をして、人よりも多くの成果を望む

人はこれを「わがまま」と言います。

人が休んでいるときにどれだけ汗を流せるか。

古くさいかもしれませんが、私はこのように考えています。

賃金115(富士運輸(割増賃金等)事件)

おはようございます。

今日は、元トラック運転手による割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

富士運輸(割増賃金等)事件(東京高裁平成27年12月24日・労判1137号42頁)

【事案の概要】

本件は、自動車(トラック)運転手としてY社に雇用されていたXが、Y社に対し、雇用期間中の平成22年6月1日から平成24年2月29日までの間における時間外労働、深夜労働及び休日労働に係る割増賃金の未払額が合計721万4468円あると主張して、同未払額のうちの661万9657円+遅延損害金、同額の付加金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Xの賃金等に関する労働条件はY社の就業規則及び賃金規程に定める内容のものであり、これらの定めによれば、Xの賃金は固定給と歩合給から成り、Xに月々支給された各種割増手当及び加算手当は割増賃金の支払であって、本件請求期間の各月に支払われたその各額は対応する各月に発生した割増賃金額よりも多いから、Xに対する未払の割増賃金は存在しないと認定判断して、Xの請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 ・・・上記協定書には、同制度(1か月単位の変形労働時間性)を実施するための要件である変形期間となる1か月以内の一定の期間の特定(労基法32条の2、施行規則12条の2第1項)がなく、また、Y社のE支店では、同制度の適用を受けるトラック運転手に対し、業務シフト表を作成してこれを予め示すことをしておらず、運行業務に就く前日又は当日に配車担当職員からトラック運転手に配車を指示するという取扱いをしていることからすると、トラック運転手の労働実態は、1か月単位の変形労働時間制が実施されているとは認められないというべきである。したがって、Xについては、変形労働時間制の適用はなく、その割増賃金は労基法37条に基づいて算定することになる。

2 ・・・上記各手当のうちの有給休暇手当を除く皆勤手当、待機手当、空車回送手当、その他諸手当、携帯電話手当及び講習手当は、いずれも、歩合給でも割増賃金でもなく、また、労基法37条5項及び施行規則21条に定める割増賃金の基礎となる賃金の算定において算入されない賃金にも当たらないものであり、かつ、通勤手当のように実費を補てんする手当とも異なるから固定給に係る割増賃金の基礎となる賃金に算入される賃金であると解するのが相当である。

3 Y社の賃金体系が基本給及び歩合給の合計額よりも各種割増手当及び加算手当の合計額の方が大きいものであることを理由として合理性を欠くという主張及びY社の賃金体系が100時間以上の時間外労働を恒常化させるものであることを理由としてY社の賃金体系が労基法37条の趣旨に反するという主張については、割増賃金に関する規定以外の労基法の規定や他の労働関係法令との関係で問題となり得る可能性があることはともかく、Xが支払を受けていない割増賃金があるかどうかの判断に直接影響を及ぼす主張ではない。

たくさんの手当が出ている場合、固定残業代と認められないと、割増賃金の基礎賃金と判断されてしまいます。

そうなると、自ずと、金額は高額になってしまいます。

気をつけましょう。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介592 達人のサイエンス(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
達人のサイエンス―真の自己成長のために

ホメオスタシス(恒常性)から習慣化のヒントを与えてくれる良書です。

この1点だけで十分、この本を読む価値があると思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『警告!警告!呼吸、心拍、代謝に顕著な変化あり!ただちにこの行為を停止せよ!』
ホメオスタシスは、あなたにとってその変化がいいのか悪いのかを区別できない。これは忘れないでおこう。ホメオスタシスはどんな変化にも抵抗するのだ。」(119頁)

以前にもブログでこの「ホメオスタシス」について紹介しました。

習慣をつくること、継続することを成功させるために知っておくと便利な言葉です。

意思が弱いのではなく、やり方が間違っているのだということを意識しましょう。

その上で、少しずつ変えていく。

最初にはりきりすぎないということでしょうか。

習慣の話が出ると、いつも同じようなことを書いていますが、私はこの方法で習慣化しています。

継続雇用制度23(甲学園事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後の専任教員の再雇用拒否が権利の濫用になるとされた裁判例を見てみましょう。

甲学園事件(東京地裁平成28年5月10日・労経速2282号15頁)

【事案の概要】

本件は、平成19年4月1日にY社の設置する甲学園大学の専任教員として雇用されていたところ、平成26年度中に満65歳となり、本件大学の就業規則所定の定年を迎えたXが、定年を満70歳とする合意が存在する、定年を満70歳とする労使慣行が存在する、あるいがY社がXとの間で再雇用契約を締結しないことは権限濫用に当たると主張して、Y社に対し、特別専任教員としての再雇用契約に基づく法的地位の確認を求めるとともに、再雇用契約に基づく賃金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 XがY社との間において、XがY社の設置する甲学園大学に定年に達する専任教員として引き続き勤務する地位を有することを確認する。

2 Y社は、Xに対し、平成27年4月1日から本判決の確定まで、月額45万8100円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件大学総合政策学部においては、労使慣行として法的効力が認められるまでには至らないとはいえ70歳まで雇用が継続されるという一定の方向性をもった慣例が存在し、70歳まで雇用が継続されるかという点では死亡退職と自己都合退職という例外があるものの、65歳の定年で雇用が終了とならずに、希望した者の雇用は継続されるという点では例外はなかったところ、これらの雇用継続に際して実質的な協議や審査が行われていたとは認められず、この点では、本件大学総合政策学部の教員らが再雇用による雇用継続に期待することには合理性が認められる

2 従前の定年後再雇用の在り方等に照らし、Xが再雇用による雇用継続に期待することには合理性が認められる一方で、平成26年度に満65歳の定年を迎えるXについて定年後再雇用の可否を検討するに当たって、理事会で審議された内容は、従前の定年後再雇用の在り方とは全く異なっており、しかも、客観性ある基準に基づくものでも、具体的な事情を十分に斟酌したものでもなく、合理性、社会的相当性が認められないから、理事会がXについて再雇用を否定し、Y車においてXとの間で再雇用契約を締結しないことは権限濫用に当たり、違法無効というべきであって、解雇であれば解雇権濫用に該当し解雇無効とされる事実関係の下で再雇用契約を締結しなかったときに相当するものとして、XとY社との間の法律関係は、平成27年4月1日付けで再雇用契約が締結されたのと同様になるものと解するのが妥当である。

労使慣行の存在自体は認められなかったものの、「慣例」が存在したことを前提に、雇用継続の期待には合理性があると判断されました。

労使慣行は要件が厳しく、あまり認められることはありませんが、労使慣行とまではいえなくても、期待の合理性を基礎付ける「慣例」を主張立証することは意味のあるわけです。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。

本の紹介591 セクシープロジェクトで差をつけろ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈2〉セクシープロジェクトで差をつけろ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (2))

「エクセレント・カンパニー」の著者トム・ピーターズさんの本です。

著者の本は、仕事や人生全般に影響を与えてくれるものです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

マッキンゼーのとき同僚だったビル・マタソーニは、誰もやりたがらない書庫の整理という雑用を突破口にして、その会社の知識蓄積・共有システムを全面的に作り替えた。つまり、つまらない仕事から、顧客企業の新たな『コア・コンピタンス』を想像したのである。マタソーニは、つまらない仕事を与えられても決してくさらず、新しいことを学びながら、どんな仕事でも、自分のキャリアの輝かしい一頁にしたいという強い意欲があった。『権限のない人』は、判で押したように、自分にそんな『自由』は与えられていないと嘆く。これは、自分は『能なし』だと言っているに等しい。キツい言い方だが、本当だからしようがない。『自由』はいつもそこにある。ほとんどの人がそれを使おうとしないだけだ。成功する人は『自由』があることを知っている。」(68~69頁)

自由や権限が与えられていないと嘆く暇があったら、工夫をしようという話です。

多くの場合、「できない」のではなく、「やりたくない」のです。

与えられた作業をこなすことが仕事だと考える人がいる反面、目の前の仕事を通して、自分の価値を高めようと工夫をする人がいるのです。

この差は、とてつもなく大きいです。

同じ仕事でも、解釈によって、その結果は天と地ほどの差が生まれます。

それが5年、10年続くと思うと・・・。 もはや逆転不可能な程の差ができているでしょう。

仕事を通じて、自分のブランド力を高めようと考えている人は、例外なく仕事が大好きです。

同じ仕事でも、つまらないと感じる人と楽しいと感じる人がいます。

解釈が違うのです。

仕事それ自体に楽しいもつまらないもありません。

あるのは、その仕事に意味を与える「人の解釈」です。

さて、あなたはどちらのタイプですか?

有期労働契約68(阪急バス(正社員登用試験)事件)

おはようございます。

今日は、正社員登用試験の受験機会を与えなかったことが債務不履行等にあたらないとされた裁判例を見てみましょう。

阪急バス(正社員登用試験)事件(大阪地裁平成28年2月25日・労経速2282号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社がXら(Y社の契約社員であった者)に対して、平成25年1月中旬に実施された正社員登用試験を受験する機会を与えなかったことが、Y社の債務不履行又は不法行為に該当するとして、XらがY社に対し、慰謝料並びに弁護士費用+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社における正社員登用試験制度導入の経緯、実施回数等に鑑みれば、同試験制度は、主として正社員の欠員補充を目的とするものであると認められる。このような同制度の趣旨目的に照らすと、Y社は、同試験の受験資格等について、正社員の欠員状況や必要人数、更にはY社の経営状況や事業計画等を総合的に勘案した上で決定し、実施していると認められる。

2 本件条文には、契約社員としての雇用期間が満4年に達した者に対して「直近の」正社員登用試験の受験資格を与える旨の文言がないこと、上記認定した正社員登用試験制度の趣旨及び受験資格者の推移、茨木分会会長が作成した「正社員登用試験について」と題する書面にも本件条文と同一の内容しか記載されていないこと、そもそも上記認定説示のとおり、正社員登用試験の導入された趣旨目的が正社員の補充という点にあったことから、同試験を受験するために必要となる勤続年数は、正社員の定員の充足状況に応じて決定されるため、勤続年数4年になれば必ず正社員登用試験を受験できるとは限らなかったこと、これまでのY社における正社員登用試験の受験資格や1年間の受験回数の推移等の事情を総合的に勘案すると、Xらが主張するような点がXらとY社との間の契約社員に係る雇用契約の内容となっていたといえないと認めるのが相当である。

3 Xらは、契約社員としての雇入れの際、Y社はXらに対し、「正社員登用制度はあるが、勤務成績がよくても、会社の都合次第で、5年経っても、10年経っても正社員になれない場合もある」というように説明すべきであったなどと主張するが、上記認定した正社員登用試験導入の経緯、同試験の実施状況等に鑑みれば、Y社において、Xらが主張するような法的義務(説明義務)があるとは解し難く、同主張はそれ自体失当というほかない。

制度目的やこれまでの運用からすると、正社員登用試験の受験資格については、会社に裁量が与えられており、契約社員全員に当然に認められているものではないという認定です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。