Monthly Archives: 8月 2016

本の紹介585 ブランド人になれ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (1))

「エクセレント・カンパニー」で有名なトム・ピーターズさんの本です。

自分というブランドを売るという意識を持つことの大切さを説いています。

自分は何を売ってお金を得ているのかを考えさせられます。

向上心の高い人にはおすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

生活の糧を得るというのは、自分を売ることだ。頭ではわかっていたが、骨身に沁みてそれがわかったのは、安定した収入を断たれ、職を求めては不採用通知をもらう苦しみを味わってからだった。自分を未完成の商品のように考え、自分の一番の強みが何であるかを考え、それを市場で売ることは、人間としてまっとうなことだ。つまるところ、問題は、自分が望むものを手にするために、やらなければならないことをやる意思があるかどうかだけである。」(241頁)

タイトルにもなっている「ブランド人」という言葉は、つまるところ、「自分を売る」という意識を持つことなのだと思います。

自分を売ることで生活の糧(給料・報酬)を得ているという感覚を持てるかどうか。

給料が低いと嘆くのではなく、高額の給料を得るために、自分という商品の価値を高める努力をするのです。

単に所定の就業時間中、与えられた仕事をこなすだけの人と仕事を通じていかに自分の価値を高めるかを考えている人とでは、1年後の結果は雲泥の差でしょう。

解雇210(野村證券事件)

おはようございます。

今日は、名誉等の毀損、顧客情報漏えいを理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

野村證券事件(東京地裁平成28年2月26日・労判1136号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社による平成24年6月29日付け懲戒解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成24年7月1日から同月31日までの間の月例賃金の残金(116万7000円から解雇予告手当として支給された98万9500円を控除した17万7500円。)、同年8月1日以降の月例賃金及び平成25年以降の賞与+遅延損害金の各支払を求め、また、上記懲戒解雇がXに対する不法行為を構成すると主張して、民法709条に基づき、慰謝料1000万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 Xが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 Y社は、Xに対し、17万7500円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、平成24年8月以降、本判決確定の日まで、毎月10日限り116万7000円+遅延損害金を支払え。
4 Xのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 以上のとおり、Y社の主張する懲戒事由のうち、第1懲戒事由については、Y社が援用する就業規則42条11号及び20号所定の懲戒事由に該当するものとは認められないが、第2懲戒事由については、その一部(本件会話)が就業規則42条14号及び20号所定の懲戒事由に該当するものと認められる。
そこで、上記懲戒事由に基づいて懲戒解雇をすることが相当であると認められるか否かについて検討すると、次の事情を指摘することができる。
証拠によって認められる本件会話及びその前後の会話内容によれば、本件会話のうち、別紙(通話記録)のものは、XがBに対し、Y社の顧客に対して特定の銘柄の株式の購入を勧誘すべきか否かを相談する文脈でされたものであり、その余の会話は、XがBとの間で市場動向等について議論する文脈でされたものであると認められ、XとBが顧客情報の伝達それ自体を主たる目的として会話をしていたとは認められず、Xが情報提供の見返りに金銭その他の経済的利益を得ようとするなどの背信的な意図を有していたとも認められない
証拠によれば、本件会話のうち、別紙(通話記録)記載5ないし9の会話は、XがY社の情報端末を見ながら表示される顧客情報を次々に開示するというものであり、開示された顧客情報の内容も、取引金額を含む具体的なものと認められ、その態様及び内容に照らして軽視することのできない違反行為というべきであるが、これらの会話は1回の通話の機会に連続してされたものであり、このような態様及び内容の会話が複数の日に反復継続して行われたとまで認めるに足りる的確な証拠はない
・・・Y社がXに対し、本件懲戒解雇より前に顧客情報の漏えいについて注意、指導をし、あるいは訓戒、譴責等を含む懲戒処分をした旨の主張立証はない(Y社の就業規則には、懲戒解雇よりも軽い懲戒処分として、訓戒、譴責、減給、出勤停止、降格及び諭旨解雇が定められていることが認められる。)。
そして、Xは上記認定に係る顧客情報の漏えいをその所属する機関投資家営業二部の執務室において行っていたところ、同室の配席状況に照らすと、上記顧客情報の漏えいに係るXの発言は同室の上司及び同僚にも聞こえていたと考えられるのであり、それにもかかわらず、Xは、顧客情報の漏えいに当たる会話をしたとして注意や指導を受ける機会がないまま、突如として、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を受けたものであった
Y社がXに対し、本件懲戒解雇に先立って、第2懲戒事由の具体的内容を開示してXの弁解を聴取する機会を設けた旨の主張立証はない。すなわち、Xは、第2懲戒事由との関係では、何ら弁解の機会を付与されることなく懲戒解雇処分を受けたものであった。
以上の事実関係の下において、本件会話を懲戒事由として、懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を行うことは、重きに失することが明らかというべきであり、また、本件懲戒解雇は、懲戒事由に該当すると認められる事実について弁解の機会を全く与えることなく行ったという点において、手続的にも妥当を欠くものであったといわざるを得ない。
したがって、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることができず、懲戒権を濫用したものとして、無効であるというべきである。

2 本件懲戒解雇は無効であるが、懲戒解雇が無効であることから直ちに不法行為が成立するものではなく、別途、不法行為の成立要件を充足するか否かを検討すべきである。
ここで、Xには、第1懲戒事由に関連して、証券会社の営業に携わる者として著しく不適切な行為があったものといわざるを得ず、当該行為は、いかなる懲戒処分をもって相当とするかは別として、それ自体が懲戒事由に該当する可能性を否定できないものである。また、第2懲戒事由の一部(本件会話)については、複数の機会になされ、その中には複数の顧客の具体的な取引内容を次々に明らかにするものも含まれているのであって、懲戒事由に該当し、その情状も決して軽視することのできない違反行為というべきものである
・・・以上によれば、本件懲戒解雇が、社会的相当性を逸脱し、不法行為法上違法の評価を受けるものとまでは認めるに足りないというべきであるし、また、不法行為の成立要件である違法な権利侵害についての故意、過失のいずれについても認めるに足りないともいうべきである。したがって、原告の被告に対する損害賠償請求は、理由がないということになる。

相当性の要件で助けられています。

懲戒解雇はハードルが高いですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介584 人生で起こることすべて良きこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。
人生で起こること すべて良きこと

サブタイトルには「逆境を超える『こころの技法』」と書かれています。

逆境もすべて何らかの気付きを与えてくれるものだと解釈するわけですね。

逆境の受け入れ方を学ぶことができるとてもいい本です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

起こった出来事の『意味』を考える。その習慣を身につけることです。
日々の仕事や人生において起こる出来事の、『意味』を考えるという習慣を身につけていくと、特に、苦労や困難、失敗や敗北、挫折や喪失といった『逆境』と思える出来事に遭遇したときには、その『意味』を深く考えることができます。
逆に言えば、日頃から、出来事の『意味』を考えるという習慣を持たないと、いざ、大きな逆境が与えられたとき、ただ心が混乱するだけで、冷静に『解釈力』を発揮して、その出来事の『意味』を考えることができません。」(61頁)

前段は、よく言われることですね。

ポイントは、「逆に言えば」から始まる後段の部分です。

日頃から訓練をしておかないと、いざというときにいきなりやれと言われてもできるわけがありません。

自分の目の前で起こる出来事、出会い、現象はすべて最初からそうなることが決まっていて、それは自分になんらかの「気付き」を与えるために起こるのだとして、それに気付けるか、自分にプラスになる意味を解釈できるかが大切なのだと思っています。

日々の習慣により人生の解釈が変わり、その結果、幸福度が上がると考えています。

幸せは探すものではなく、感じるものです。

解雇209(医療法人社団Y事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、看護師らに対する不適切な言動等を理由とする医師に対する解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

医療法人社団Y事件(東京高裁平成27年10月7日・判時2287号118頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、Y社が運営する病院に医師として勤務していたXが、①Y社に解雇されたが、当該解雇は解雇権の濫用で無効であると主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②解雇後本判決確定の日まで毎月の未払給与の支払、③平成24年12月支給分の賞与+遅延損害金、④時間外割増賃金+遅延損害金、⑤付加金+遅延損害金、⑥Y社による解雇によって精神的苦痛を被ったなどと主張して、不法行為に基づき、損害賠償+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Y社に対し、時間外割増賃金56万3380円+遅延損害金並びに付加金11万2334円+遅延損害金の各支払を命じ、その余の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、自らの看護師に対する指示が曖昧ないし不適切なものであったにもかかわらず、これに従った看護師を叱責したり、申請書の記載に不備があってその訂正を求められていたにもかかわらず、申請どおりに処理しなかった担当社を厳しく責めるなど、自己の責任を顧みることなく、他人を責めたりしたこと、看護師や研修医を指導する立場にありながら、その指導において相手の人格を否定するような発言をしたり、有形力を行使するなど、指導の方法が不適切であったこと、また、看護学生や患者がいる場所で、看護師を怒鳴ったり、看護師と言い合うなど、看護学生や患者をいたずらに不安にさせ、Y社病院の信用を低下させるおそれのある行為をしたこと、そのため、看護師においてXに報告や指示内容の確認をするのをためらうといった状況を生み、良質な医療の提供の前提となる看護師との連携を著しく困難にさせ、業務遂行に大きな支障を生じさせたことが認められるのであり、このようなXの言動は、医療の提供というY社病院の中枢の業務の遂行を困難ならしめるものであり、就業規則に定める勧告退職事由である「職務上やむを得ない都合による場合」に該当するところ、Xは、退職届の提出を拒んだのであるから、就業規則に定める解雇事由である「退職届の提出を拒んだ場合」に該当すること、そして、本件解雇が客観的に合理性を欠き社会通念上相当性を欠くものということはできず、解雇権の濫用には当たらないことは、いずれも前記判断のとおりである。

2 本件雇用契約及び本件時間外規程に基づき、XとY社が、本件時間外規程に基づき支払われる時間外労働賃金及び当直手当以外の通常の時間外労働賃金については、年俸に含まれる旨を合意したものであり、上記合意に係る本件雇用契約及び本件時間外規程は有効と認めるのが相当である。

上記判例のポイント2は珍しい判断ですね。

固定残業制度に関するこれまでの判例の一般的な流れからは外れる判断のように見えます。

Xの職業や給与額が関係しているようですが、あくまで例外的な判断と位置付けるほうがよさそうです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介583 自分の時間(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
自分の時間 (単行本)

著者は、イギリスの方です。

サブタイトルは「1日24時間でどう生きるか」です。

皆に平等に与えられている1日24時間をどう使うべきかについて説かれています。

まずは自分に与えられている時間が無限ではないことを意識することが大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実際のところ、あなたが『やりたい』と思っていたことが何であれ、楽なやり方、王道などといったものは存在しない。聖地への道は非常に険しいのだ。そして、何よりも悪いことは、結局そこへは決してたどり着けないことだ。24時間という与えられた時間の中で、充実した快適な1日を過ごせるように生活を調整する際に心得ておくべき最も重要なことは、そうすることがいかに至難のわざであるか、そのためにいかに多くの犠牲を払い、倦まずたゆまず努力しつづけなければならないかを、冷静に悟ることである。このことは、声を大にして強調しておきたい。」(47~48頁)

だからこそあれもこれも手を広げても、結局、すべてが中途半端に終わってしまうわけです。

思いついたことをすべて実行に移していたら、いくら時間があっても足りません。

やるのはとても簡単です。

やらないという決断のほうがむしろ難しいわけで。

時間が有限であるという事実を十分に理解したうえで、何を優先すべきかを考える必要があります。

自分は何を目指しているのか、5年後、10年後、どうなりたいのか。

そのために必要なことにできるだけ時間を注ぐべきではないでしょうか。

不当労働行為149 会社分割後の事業閉鎖を理由とする組合員の解雇と損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社分割後の事業閉鎖を理由とする組合員の解雇と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

生コン製販会社経営者ら(会社分割)事件(大阪高裁平成27年12月11日・労判1135号29頁)

【事案の概要】

本件は、X組合とその組合員らが、本件組合壊滅を目的とした会社分割とその後の事業閉鎖で組合員らが実質的に解雇されたとして、分割前会社であるY社の元代表取締役であるA、新設会社であるZ社代表取締役B、会社分割を進めた司法書士Cらに対し、会社法ないし不法行為による損害賠償を請求する一方、Aとその妻であるDが、本件組合・組合員らによる自宅付近での街宣などの差止め、損害賠償を請求した事案である。

一審は、Bの責任を認めた一方で、その他の被告の責任は認めなかった。

【裁判所の判断】

原判決中、Cに関する部分を取り消す。

Cは、組合員らに対し、合計約850万円を支払え

【判例のポイント】

1 会社分割の方法を用いることにより本件会社から本件組合の組合員を排除するとの方法を発案することは、会社分割に関する相当な法的知識を有する者でなければできないことであるところ、Aの周辺にそのような法的知識を有するものは、C司法書士以外に見あたらない(Aは、インターネットや本で調べた上で債権者と相談したが、C司法書士に相談したことはない旨供述するにとどまり、具体的な債権者名等については、供述を拒んでいる。)。
加えて、本件会社の分割は、Aにとって非常に重要なことであるにもかかわらず、あえて上記の組合員排除という目的をC司法書士に秘匿したまま、登記手続を依頼し、かつ前記のような質問を発するというのも、不自然不合理であるといわざるを得ない。

2 A、C司法書士及びBは、共謀の上、本件会社の事業のうち製造部門をZ社(会社分割における新設会社)に承継させ、本件組合の組合員である本件従業員らが所属する輸送部門を分割会社である本件会社に残すという会社分割をし、その後、分割後の本件会社の事業を閉鎖することにより、本件会社から本件組合の組合員である本件従業員らを排除することを企て、A及びC司法書士において上記のとおり本件会社分割を行い、その後、Aにおいて分割後の本件会社の事業を閉鎖したことが認められる。
上記によれば、A、C司法書士及びBは、共同して本件従業員ら及び本件組合の権利を故意に侵害したものであり、それは民法719条1項の共同不法行為に当たるというべきである。

濫用的会社分割により組合員を排除したと認定されています。

今回のスキームを考えたのが司法書士と認定され、共同不法行為に該当するとされています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介582 大富豪が実践しているお金の哲学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
大富豪が実践しているお金の哲学

よくある感じの本ですが、考え方はとても参考になります。

一般の人、小金持ち、大金持ちという3つの分けて、あるべき考え方を伝えています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

せっかく社会人になって自分でお金を稼げるようになったのに、遊びに使わず自分の成長のためにお金を使えと言われても普通の人には酷です。でも同世代で自己投資にお金を惜しまない人もいるのです。その違いは、目線が『今』か『将来』かの差です。」(108~109頁)

みなさんは、5年後、10年後のために何か準備をしていますか?

1日のうち、朝30分だけ、5年後、10年後のための準備にあてるということを習慣化している人はいますか?

毎朝わずか30分です。

6時に起きているのを5時30分にするだけです。

1年後、どれだけの差になっているか。

日々の小さな積み重ねを続けられるかどうか、本当にそれだけの差なのです。

不当労働行為148(日幸製菓事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、賃金要求に対して全従業員との個別面談後に回答するとしたことなどが不当労働行為にあたるとした命令を見てみましょう。

日幸製菓事件(中労委平成27年11月18日・労判1134号95頁)

【事案の概要】

本件は、組合からの賃金要求に対して全従業員との個別面談後に回答するとしたことなどが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・同年8月23日に開催された団交において、全従業員との個別面談を行った後に回答するとして、「賃金に関する要求」に対する具体的な回答を行わず、回答の根拠となる資料を示さなかった会社の対応は、合理的な理由なく不当に回答を引き延ばす不誠実なものであって、労組法7条2号に該当する不当労働行為であると認められる。

2 他方で、会社は、・・・第4回団交までに人事評価に係る評価項目の概要、評価ランクの定め方及び評価者等、支給基準に関する事項について相当の説明を行っており、また同団交において、それまで不開示としていた評価ランクの人数分布について開示するなど、組合が開示を求める理由が必ずしも具体的かつ十分に説明されない状況において、開示について一定程度協力的な姿勢をみせていることからすると、部門ごとの具体的な評価項目及び各評価ランクの平均金額を開示しないことをもって不誠実であったとまでは認められない。

資料の提示を拒否する場合には、その合理的な理由を説明できないと不誠実団交として不当労働行為に該当します。

また、回答について合理的な理由なく先延ばしを繰り返すのも同様です。

気をつけましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介581 99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る

著者は、宮城県山元町生まれで、日本、インドで6つの法人のトップを務める経営者の方です。

私より1つ年上のようです。

復興のため、「日本一のイチゴ」を作ることに挑んだ話が書かれています。

多くの人が「どうせ無理」と思ったことでしょう。

結果、どうなったかについては是非、本を読んでみて下さい。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

やっかみを受けるくらいのことをやらないと、閉鎖的な社会に対して、新しい変化をもたらすことはできないのも事実だ。経営者としては、ある程度の覚悟を持ち、批判を受けやすい状況に身を置かねばならない。やっかみが起きてきたら、『これは、なにか新しいことが起きるシグナルだ!』と考えた方がいいのだ。やっかみが起こらないようなことは、毒にも薬にもならない。大事なことはポジションを取ること。極を取ることだ。自らを敢えて批判にさらす。それによって自分の考えを研ぎ澄ませ、人間力を鍛えるのだ。」(178頁)

注目されるために、あえてみんなと逆のことをやってみる。

埋もれていては注目されることはないからです。

この判断をするときに必要なのは、勇気と行動力。

批判されたくない、やっかみを言われたくないという気持ちを捨てる勇気を持たないと新しいことにチャレンジすることはできません。

著者が言うように、うわさされる、やっかみを受けるくらいのことをやらないと、そもそも新しい変化をもたらすことなどできないわけです。

解雇208(三菱重工業事件)

おはようございます。

今日は、現住所から通勤できる職場を求め復職を拒否した労働者に対する解雇が有効とした裁判例を見てみましょう。

三菱重工業事件(東京地裁平成28年1月26日・労経速2279号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され愛知県内の事業所で勤務していたXが、私傷病による欠勤の後、復職には同居の家族の支援が不可欠であるとして埼玉県内の現住所から通勤可能な場所での復職を求めたのに対し、Y社から原職場での復職を命じられたため出社を拒否したところ、解雇されたとして、Y社に対し、上記解雇が解雇権の濫用により無効であることに基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社から就労開始可能と判断された平成25年9月1日以後の給与として同年10月から本判決確定に至るまで、毎月20日限り22万3500円+遅延損害金を求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→解雇は有効

【判例のポイント】

1 今回の復職命令の目的、性質の観点から検討すると、今回の復職命令は、再出勤審査会の答申を受け、Y社の職場復帰支援制度に基づき、第1段階として実施される短時間勤務であり、第2段階では短時間勤務中の出勤率及び職場での業務状況等を評価して再出勤(フルタイムの通常勤務)の可否を判定するものであり、その目的・性質からすると、当初の短時間勤務はできるだけ負荷をかけないためにも、周囲の理解やサポートを得るためにも原職場が望ましく、また、判定のためにも従前の勤務状況との比較が必要であり、原職場に復職することが望ましいこと、名古屋製作所の過去の実例でも、他の事業所に復職した社員はいないことに照らせば、Y社の職場復帰支援制度も原職場で短時間勤務を開始することを予定しているものと解される

2 Xは、復職には同居の家族による生活全般の支援が不可欠であるとして現住所から通勤可能な勤務場所を求めているが、業務内容や勤務時間等の就業上の配慮はともかくとして、Xの食事、選択、金銭管理等の生活全般の支援をどうするかは本来的に家族内部で検討・解決すべき課題である。これまでに名古屋製作所で実施された職場復帰支援による短時間勤務の実例でも、家族の方で同居するか頻繁に行き来するなどして私生活をサポートしている。しかも、本件でXが挙げる理由は、Xの実姉が働いているのでその子供らの世話を実母がしなければならず、これに伴いXも転居できないので現住所から通勤できる勤務地を求めるというものであり、家庭内の事情を優先した形で企業側に対応を求めている

3 以上から、Xが現住所から通勤可能な勤務地での復職を申し出ても、債務の本旨に従った労務の提供を申し出ているとはいえず、また、この申し出に対してY社が就労の現実的可能性のある業務を調査・検討すべき義務があるともいえず、Y社が原職場での復職を命じた復職命令は相当である。

リハビリ出勤における上記判例のポイント1の考え方は参考になりますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。