おはようございます。
今日は、現住所から通勤できる職場を求め復職を拒否した労働者に対する解雇が有効とした裁判例を見てみましょう。
三菱重工業事件(東京地裁平成28年1月26日・労経速2279号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用され愛知県内の事業所で勤務していたXが、私傷病による欠勤の後、復職には同居の家族の支援が不可欠であるとして埼玉県内の現住所から通勤可能な場所での復職を求めたのに対し、Y社から原職場での復職を命じられたため出社を拒否したところ、解雇されたとして、Y社に対し、上記解雇が解雇権の濫用により無効であることに基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社から就労開始可能と判断された平成25年9月1日以後の給与として同年10月から本判決確定に至るまで、毎月20日限り22万3500円+遅延損害金を求めている事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
→解雇は有効
【判例のポイント】
1 今回の復職命令の目的、性質の観点から検討すると、今回の復職命令は、再出勤審査会の答申を受け、Y社の職場復帰支援制度に基づき、第1段階として実施される短時間勤務であり、第2段階では短時間勤務中の出勤率及び職場での業務状況等を評価して再出勤(フルタイムの通常勤務)の可否を判定するものであり、その目的・性質からすると、当初の短時間勤務はできるだけ負荷をかけないためにも、周囲の理解やサポートを得るためにも原職場が望ましく、また、判定のためにも従前の勤務状況との比較が必要であり、原職場に復職することが望ましいこと、名古屋製作所の過去の実例でも、他の事業所に復職した社員はいないことに照らせば、Y社の職場復帰支援制度も原職場で短時間勤務を開始することを予定しているものと解される。
2 Xは、復職には同居の家族による生活全般の支援が不可欠であるとして現住所から通勤可能な勤務場所を求めているが、業務内容や勤務時間等の就業上の配慮はともかくとして、Xの食事、選択、金銭管理等の生活全般の支援をどうするかは本来的に家族内部で検討・解決すべき課題である。これまでに名古屋製作所で実施された職場復帰支援による短時間勤務の実例でも、家族の方で同居するか頻繁に行き来するなどして私生活をサポートしている。しかも、本件でXが挙げる理由は、Xの実姉が働いているのでその子供らの世話を実母がしなければならず、これに伴いXも転居できないので現住所から通勤できる勤務地を求めるというものであり、家庭内の事情を優先した形で企業側に対応を求めている。
3 以上から、Xが現住所から通勤可能な勤務地での復職を申し出ても、債務の本旨に従った労務の提供を申し出ているとはいえず、また、この申し出に対してY社が就労の現実的可能性のある業務を調査・検討すべき義務があるともいえず、Y社が原職場での復職を命じた復職命令は相当である。
リハビリ出勤における上記判例のポイント1の考え方は参考になりますね。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。