おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
今日は、内部告発を理由とする懲戒解雇・解任の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
学校法人矢谷学園ほか事件(広島高裁平成27年5月27日・労判1130号33頁)
【事案の概要】
本件は、(1)Y社と雇用契約を締結したXが、平成22年10月15日に懲戒解雇されたところ、X1が、本件解雇を不服として、Y社に対し、雇用契約上の地位を有することの確認、本件解雇後の賃金+遅延損害金の支払を求めるとともに、Y社の理事長であったAと元鳥取県議会議員であったBが、X1に対し、共同して、違法な退職勧奨及び違法な本件解雇をした旨主張して、A及びBに対しては、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、Y社に対しては、私立学校法29条・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条に基づき、連帯して、損害金550万円+遅延損害金の支払を求め、また、(2)Y社の理事であったX2が、平成22年10月15日に懲戒解任されたところ、本件解任を不服として、Y社に対し、本件解任後の報酬+遅延損害金の支払を求めるとともに、違法な本件解任をしたY社及び本件解任を主導したAに対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき、連帯して220万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
X1が、Y社に対し、雇用契約上の地位を有することを確認する。
→Y社はXに対し賃金+遅延損害金を支払え。
Y社はX1に対し、Aと連帯して110万円+遅延損害金を支払え。
Y社はX2に対し、平成22年11月から平成23年9月まで、月額3万円+遅延損害金を支払え。
【判例のポイント】
1 Aが、Xに対し、不法行為に該当するような退職勧奨行為等をしていたことが認められることからすると、Xにおいて、Aを理事長兼校長から退任させようとしたことや、Aが理事長兼校長の地位にあるY社に対して反抗する姿勢を示したことには、酌量されるべき相応の理由があったと認められる。また、Aらが相談をしたBは、形式的には、Y社の部外者ではあるが、本件以前にY社を巡り教職員と経営側が紛争となった際に解決に尽力した者であったことに照らすと、Xらが本件手紙及び29枚の文書を交付して説明した内容を他の部外者に漏らす可能性は極めて低かったものと認められ、実際、Bが、上記内容を他の部外者に漏らしたものとは認められず、XらがBに対して本件手紙及び29枚の文書を交付してした説明及び相談した行為によって、Y社に多少の混乱を生じさせ、また、Aの心情を害したことは否定できないものの、Y社及びAにXを懲戒免職処分にすべき程の重大な実害が生じたとまでは認められない。これらの事情を総合考慮すれば、Y社が、Xを懲戒免職とすることは、重きに失し、著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないというべきである。
したがって、本件解雇は、解雇権の濫用として無効になるものといわざるを得ない。
2 第1次雇用契約が黙示に更新されたことは前記のとおりであるところ、黙示の更新について定める民法629条が、1項後段において、各当事者は、期間の定めのない雇用の解約の申入れに関する同法627条の規定により解約の申入れをすることができると定めていることに照らせば、雇用契約が黙示に更新された場合、更新された雇用契約は、期間の定めのないものになると解するのが相当である。
そして、本件管理職規程では、Y社に採用されたXのような管理職の任用期間は2年以内とされているが、他方で、その任用期間を更新することができるとされているから、本件管理職規程をもって、上記と異なる法理が適用されるとも認め難く、XとY社との間の雇用契約は、第1次雇用契約の黙示の更新によって、平成20年4月1日以降、期間の定めのないものになったというべきである。
上記判例のポイント2は要注意です。
そんなことはあるのか・・・?と思ってしまうのですが、高裁がそのように判断しております・・・。
民法629条1項は以下のように規定されています。
「雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。」
民法627条1項は以下のとおりです。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。