Daily Archives: 2016年6月29日

解雇207(学校法人杉森学園事件)

おはようございます。

今日は、勤怠不良等を理由とする整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人杉森学園事件(福岡地裁平成27年7月29日・労判1132号76頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の設置・運営するY高校におけるA科の教諭としてY社に雇用されていたXが、Y社に対し、Y社が平成25年3月31日付でXに対してした整理解雇は無効であると主張して、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②本件解雇後の賃金+遅延損害金の支払いを求めるとともに、③本件解雇はXに対する不法行為に当たると主張して、民法709条に基づき損害賠償金合計330万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効→賃金支払

不法行為に基づく損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 平成25年3月末時点におけるY社の経営状態は、不採算部門の廃止等を通じた経営合理化が図られるべき状況にはあったものの、整理解雇による人件費削減等をしない限り、直ちに経営破たんに陥ってしまうような危機的状況にあったとまではいうことができない。このような状況の下における整理解雇が正当化されるためには、相応の解雇回避措置が尽くされていなければならないというべきである。

2 Y社の採り得る解雇回避措置として、新規採用の停止、従業員の賃金の減額及び希望退職者の募集等の措置を挙げることができるところ、従業員の賃金の減額については、団体交渉の場において本件組合側からの提案がされており、また、希望退職者の募集については、本件解雇の後である平成25年7月にA科を含む複数の教科の教員について行われているにもかかわらず、Y社は、本件解雇前には、これらの措置を一切講じていない
Y社は、本件解雇に先立ち、一定程度の人件費削減を行い、また、Xに対して、退職金の割増しを条件とする退職勧奨もしているが、本件解雇の当時におけるY社の経営状態に鑑みれば、本件解雇が正当化されるためには、これらに止まらず、本件解雇に先立って、希望退職者募集等の相応の解雇回避措置が尽くされていなければならないというべきであるところ、本件において、Y社が十分な解雇回避措置を尽くしたと評価することはできない。

整理解雇の必要性が高くない状況においては、解雇回避努力の程度についてかなり厳しく見られることになります。

過去の判例を検討し、どの程度、解雇回避措置を講ずればよいのかを十分に検討する必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。