Daily Archives: 2016年5月20日

不当労働行為141 法人格否認の法理により新設会社で組合員を採用しなかったことが不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、運送事業を廃止して同事業に従事していた組合員を解雇したこと、新設の運輸会社に採用しなかったことが不当労働行為にあたるとされた事例を見てみましょう。

光洋商事ほか1社事件(長崎県労委平成27年12月7日・労判1130号92頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運送事業を廃止して同事業に従事していた組合員Xらを解雇したこと、Xらを新設のZ社に採用しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社はA社長の主導によって設立されたものであり、Z社はY社の商号をB弁護士の指摘によって変更されたものであるから、Z社はA社長の主導によって設立されたものと認められる。
そして、Y社の運送事業を引き継ぐこと以外に何らかの異なる事業を営むことを目的としていたとは認められないし、実際にY社の運送事業を超えて事業を営んだ事実もない。
したがって、Z社は、Y社の運送事業部門を引き継ぐものとして設立されたと認めるのが相当である。

2 Z社設立の経緯、車両、不動産や備品、取引先、従業員、及び業務の実態などを総合すると、Z社は、法人格としては独立しているものの、それは形式に過ぎず、実質的にはY社の一部門として長崎本社営業所の運送事業を行っていると判断するのが相当である。

3 以上のとおりであるから、Y社及びZ社は実質的に同一であると認められ、そして、本件解雇及び本件不採用は、組合員4人を両社から排除することを意図して行われた不利益取扱いであり、労組法7条1号に該当する不当労働行為と判断するのが相当である。

法人格否認の法理が適用された事例です。

訴訟ではなかなか認めてくれない法理ですが、本件では労働委員会が認めてくれました。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。