Monthly Archives: 5月 2016

本の紹介558 人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人生で大切なことは、すべて「書店」で買える。

本を読むことの大切さが説かれています。

いろんな方が言っているとおり、本ほど費用対効果の良い買い物はありません。

1000円ちょっとで人生が変わることだってあるわけですからね。

もっとも、この本を買って読む人は、すでに、人生で大切なことはすべて書店で買えることを知っている人です(笑)

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人の話を聴いて『つまらない』と言う人がいます。本を読んで『つまらない』という人がいます。その人は知性がない人です。知性のある人は、100人中99人が『つまらない』とそっぽを向いてしまうものを、『これは面白い!』と飛び込んでいくことができます。当たり前でありきたりのことに対して、当たり前に解釈しないことが知性のある人の特徴です。」(106頁)

以前にも同じようなことを書きましたが、多くの人が「つまらない」とか「当たり前」と感じることに対して、「おもしろい」「すごい」と感じられるかが勝負だったりします。

本もセミナーも一緒ですね。

目の前にある仕事もそうですね。

仕事それ自体に「面白い」「つまらない」「大変」という意味付けはありません。

仕事に意味を与えているのは、自分自身です。

仕事を「つまらない」と感じて、何か得があるでしょうか。

だからこそ、解釈のしかたを変えなければ、何度「転職」しても「天職」に巡り会うことはありません。

人生はすべて解釈でできているといっても過言ではありません。

解釈一つで同じ人生が幸せにも不幸になります。

不当労働行為142(T社(懲戒解雇)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、確定判決に基づく債権差押命令の申立てを理由に組合員1名を懲戒解雇したことが不当労働行為にあたるとされた事例を見てみましょう。

T社(懲戒解雇)事件(大阪府労委平成27年10月23日・労判1130号93頁)

【事案の概要】

本件は、確定判決に基づく債権差押命令の申立てを理由に組合員1名を懲戒解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 懲戒解雇通知書には解雇理由として、①C組合員が自らの計算違いを差し置いて、②連絡なきまま突然に、③債権差押命令を申し立て、④その結果Y社の経済的信用を毀損し、Y社に損害を与えたことが上げられているところ、・・・当該債権差押命令申立ては、申立てまでに十分に折衝を重ねた上での正当な権利行使であるうえ、これにより、Y社の経済的信用を毀損し、Y社に損害を与えたと認めるに足る疎明はない

2 懲戒解雇に至る手続についてみるも、懲戒解雇通知書で解雇理由として記載されている、C組合員が自らの計算違いを差し置いて連絡なきまま突然に債権差押命令を申し立てたことが事実に反することは、C組合員ないし労組に確認すればすぐに判明するところ、Y社がこのような確認を行ったとの疎明はない。したがって、Y社が制裁の中から懲戒解雇を選択したことについても合理性はない

3 以上のことからすると、Y社が、C組合員を懲戒解雇したことには合理性がなく、同人が組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たる。

使用者があえて懲戒解雇を選択する以上、相応の理由が必要であり、手続を経る必要です。

感情にまかせて、安易に懲戒解雇をすることは避けましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介557 20代のうちに知っておきたいお金のルール38(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
20代のうちに知っておきたい お金のルール38

タイトルでは、「お金のルール」となっていますが、内容的には、お金というよりは仕事や生き方全般のルールについて書かれています。

簡潔にポイントが書かれているので、とても読みやすいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お金持ちは人の才能には明確な格差がある事実を認めている。成功には次の2つの決断が必要だ。1つ目は自分の何を活かして勝負するかを決断すること。2つ目は自分の何を諦めて時間を生み出すかを決断すること。何を活かすかを決断するために、何を諦めるかを見極める。諦めるためには、食わず嫌いをせずに必ず一度はチャレンジしてみる姿勢を持っている。」(142頁)

これから仕事で勝負をしようと考えている若手のみなさん、是非、ここに書かれていることを頭に入れておきましょう。

実際、自分でやってみなければ、勝てる分野なんてわかるわけないのですから。

それは決して遠回りではないのです。

自分が得意と思っている分野よりも、もっと勝てる分野に出会う可能性があることを、やる前から捨ててしまうのはもったいないわけです。

まずは慌てず、与えられた仕事は何でもやってみる!

そこで力をつけるのです。

これを5年も続ければ、自ずと勝てる分野が見つかりますよ。

労働者性15(NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件)

おはようございます。

今日は、労基法(労契法)上の労働者性が争われた裁判例を見てみましょう。

NHK神戸放送局(地域スタッフ)事件(大阪高裁平成27年9月11日・労判1130号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間においてY社の放送受信料の集金や放送受信契約の締結等を内容とする有期委託契約(本件契約)を継続して締結してきたXが、Y社から本件契約を途中解約されたことについて、本件契約は労働契約であり、上記解約(本件解約)は、労働契約法に基づかない無効な解雇であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働者としての地位の確認、平成25年1月からの毎月27万5720円の賃金及び遅延損害金の支払を求めるとともに、不当解雇の不法行為に基づき、慰謝料等330万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は、本件契約は労働契約的性質を有するものであり、本件解約は労働契約法に基づかないなどの理由で無効であるものの、本件契約は平成25年3月31日の経過をもって終了しているとして、地位確認の訴えを確認の利益がないとして却下し、賃金請求を同年1月から同年4月までの分及び遅延損害金の限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却した。このため、敗訴部分を不服とするY社が本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

原判決主文中訴えを却下した部分を取り消す。

被控訴人の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 本件契約により、Xは、契約開発スタッフとして、放送受信契約の新規締結や放送受信料の集金等契約上定められた業務を行うことを受託している。したがって、その定められた業務内容に関するものである限り、Xが個々の具体的な業務について個別に実施するか否かの選択ができるわけではない。もっとも、これは、包括的な仕事の依頼を受託した以上、契約上、当然のことと解される。本件では、業務の内容からして、Y社がXに対し特定の世帯や事業所を選び訪問すべき日や時間を指定して個別の仕事を依頼するなどということは、およそ予定されていないと考えられるから、Xに上記の選択権のないことを本来的な意味の諾否の自由の有無の問題ととらえるのは相当でない。

2 契約開発スタッフであるXが本件契約による受託業務を行う地域は、Y社が定期的に指定する地域であるが、ローテーション制が取られることは、本件契約の内容となっていたことであるから、業務従事地域が替わることをもって、諾否の自由がないということはできない。
また、期ごとに達成すべき目標値については、Y社において決定し、各期の当初に具体的数値として、Xらスタッフに示されることになっており、Y社とXとの協議によって決められるものではないが、これは、稼働時間に対する拘束性として検討すべきである。

3 本件契約上、1か月の稼働日数、1日の稼働時間については何も定められておらず、業務開始時刻や業務終了時刻も定められていない。
Xの1か月の稼働日数、1日の稼働時間、b放送局のスタッフの1か月の稼働日数をみても、1か月の稼働日数や1日の稼働時間は区々であり、各人によって相当幅があり、各スタッフの裁量に任されていることは明らかである。
特定の世帯等への訪問を具体的にどの日やどの時間に行うかについても、スタッフの裁量に委ねられている。
そして、目標値を達成している限りにおいては、業務計画表に記載した月間の稼働日数分働かなくても、何らY社から指導を受けることもない。
業績が不振で、その原因が稼働日数や稼働時間又は稼働時間帯に関するものであった場合には、Y社は、それに関する具体的な指導を行っていたが、その場合でも、スタッフは、その指導に従わずに目標値を達成できるのであれば、目標値の達成にこそ努めるべきであった。
目標値自体は、Y社が設定するものであるが、このようにみると、稼働時間に対する拘束性は強いものではないというべきである。
・・・このように、本件契約における場所的・時間的拘束性の程度は低いものというべきである。

4 本件契約で特徴的なことは、再委託が自由であることであり、その利用率はともかく、全国的に利用されており、現にb放送局にいるスタッフにおいても利用されていた。しかも、再委託先は、配偶者、親子にとどまらず、公募した第三者まであった
再委託に疑問を呈するスタッフの意見もあるが、このスタッフも再委託制度を利用したことには変わりはなく、再委託制度の有用性は、スタッフが自ら処理することと再委託とをどのように使い分けるかによって左右されるのであり(兼業の自由と相まって、自らの稼働は制限的に行い、第三者を利用することも考えられる。)、一概に決めつけることはできない。

5 そのほか兼業が許容されており、スタッフに就業規則は適用されず、社会保険の適用もない。

6 以上によれば、①本件契約においては、諾否の自由の問題を取り上げるのは相当でなく、②Y社のスタッフに対する助言指導は、業績の不振を契機として主として稼働日数や稼働時間等についてされるものであり、限定された場面におけるものということができる。③本件契約上、1か月の稼働日数や1日の稼働時間は、スタッフの判断で自由に決めていくことができ、実際の稼働をみても、スタッフにより、時期により様々である。目標値はY社が設定するとしても、稼働時間に対する拘束性は強いものとはいえない。場所的拘束性も、訪問対象の世帯等がその地域内にあるというだけで、訪問以外の場面ではその地域内での待機を強いられるわけではない。④本件契約の事務費は、基本給とまではいえず、そのほかの給付も出来高払の性格を失っていない。⑤本件契約においては、第三者への再委託が認められており、実際にも再委託制度を利用している者がいた。⑥兼業は許容され、就業規則や社会保険の適用はない。なお、⑦本件契約による業務を遂行する上で必要な機材等はY社によって貸与されている。
このように②から⑥まで、とりわけ、稼働日数や稼働時間が裁量に任されており、時間的な拘束性が相当低く、⑤のとおり、第三者への再委託が認められていることに着目すれば、⑦の事情を総合しても、本件契約が、労働契約的性質を有すると認めることはできない

高裁は、一審の判断を覆し、労働者性を否定しました。

判決理由でも述べられているとおり、上記判例のポイント4が大きいですね。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介556 経営者が絶対に「するべきこと」「してはいけないこと」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
経営者が絶対に「するべきこと」「してはいけないこと」―50「Do’s」&「Don’ts」FOR BUSINESS SUCCESS

タイトルのとおり、経営者がするべきこととしてはいけないことが書かれています。

奇をてらうのではなく、原理原則に基づいた経営をするのが王道であることを再認識することができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

40年以上の経営経験から、強く実感していることがある。それは『優れた経営者には例外なく原理原則とバランス感覚がある』ということだ。・・・原理原則の対局には我流、自己流がある。自己流のみに溺れると企業の成長は早晩止まってしまう。優れた経営者は、自己の個性やアイデンティティは大切にしながらも、原理原則を見事に身に付けている。これが第一の能力であり、第二がバランス感覚だ。」(3頁)

問題は、この「原理原則」や「バランス感覚」をどう学ぶか、です。

私は、自分がメンターだと思う経営者に教えを乞うことが一番だと思っています。

頻繁に会い、直接話を聞く、本を出しているのであればすべて読んでみる。

そしてとにかく真似をしてみる。

それも中途半端にではなく、徹底的に真似をするのです。

「こういう場面であの人はどういう行動をとるのだろう」と想像してみる。

この繰り返しです。

いつしか、真似をしていることすら忘れてきます。

無意識にメンターと同じような行動や考え方をとるようになっていたら完璧です。

解雇201(税理士事務所 地位確認請求事件)

おはようございます。

今日は、退職合意の成立は認められないとされた裁判例を見てみましょう。

税理士事務所 地位確認請求事件(東京地裁平成27年12月22日・労経速2271号23頁)

【事案の概要】

本件は、税理士事務所を営むYに税理士業務の補助として雇用されていたXが、Yから既に合意退職していることを理由に労務提供を拒否されているとして労働契約上の権利を有する地位の確認、平成26年2月分以降の賃金+遅延損害金、並びに違法な退職強要による不法行為に基づく損害賠償金56万2353円+遅延損害金の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

XがYに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

YはXに対し、平成26年3月10日から本判決確定の日まで、毎月10日限り月額16万円の割合による金員+遅延損害金を支払え。

その余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 Yは、平成25年12月4日に本件退職合意が成立した旨主張しているところ、確かに、Xは、同日の午前中にY事務所において、Yとの会話の中で、翌年1月末に退職する旨発言し、同じ日に同僚である他の事務員らにも同旨を口頭で伝え、帰宅後にはYに対して退職を前提にしたメールを送信し、同月5日、翌6日の勤務時間中は何事もなく推移し、同日の退職間際に退職しない意思を表明し本件退職合意の存在を否認しているため、外形的には同月4日に本件退職合意が成立して同月6日に退職の申出を撤回しようとしているようにも見える
しかし、本件で確定的な退職申し出の意思表示があるか否かを検討するに、平成25年12月4日当時、XはこれまでYから退職勧奨を受けたことはなく、退職に関して全く問題意識がないままYとの面談を開始していること、面談中もX自らが退職を発言するまで退職の話題は全く出ていないこと、当時は正社員としてY事務所に勤務していたものであり、簡単に退職を決意するような動機も見当たらないこと、その発言に至る経緯を見ると、同日、Xは出勤した際にYから前日の電話保留時間の件や勤務態度の件で問題点を指摘され反省を求められ、これを素直に受け入れることができないでいる中で突如として退職の申し出を述べているのであり、熟慮の上で発言しているとは考えられず、むしろ自己の非を指摘されてその反発心から突発的になされた発言と理解するのが素直であること、発言後の経緯を見ても、同日午後、Xは他の事務員にも退職する旨を伝えているが、同時に、上記保留時間の件に関係するCに対して謝罪し、自分が退職するのはCが原因ではない、これから確定申告の時期で繁忙期なのに申し訳ないなど、他の事務員との関係を修復しようとする態度が強調され、また、同日帰宅後にYに対してメールを送信しているところ、その内容は、Yに対し、時間を割いてもらい感謝する意思を丁重に表明した上、Cを含む他の事務員にも迷惑をかけたことを謝罪する内容であり、XがYから指摘された問題点を反省して今後は努力する旨をあえて強調している様子が窺われ、この状況からは軽率に退職を発言したことを後悔しつつも自分からは退職申し出の撤回を言い出すことができず、周囲が自分を理解して退職を引き留めてくれるのを期待している心情も読み取れること、同日に退職する旨発言してから、翌5日は通常どおり勤務し、翌6日の夕刻に退職しない旨発言しているところ、その間に退職を前提とした手続が取られた形跡はないことに鑑みると、本件では、Yの発言をもって確定的な退職の意思表示があるとはいえず、本件退職合意の成立は認められない

2 Xは、平成25年12月6日の退職直後にY事務所内で話し合いをしていた際、Yが突然席から立ち上がり、Xを室外に追い出すためにその身体に1回どんと突いた上、力ずくで押しやるという不法な有形力を行使し、これにより全治約10日間の右胸部打傷を負わせた旨主張する。
・・・この状況からすると、YはXに退職勧奨する中でかかる行動に出たというよりも、その日はXに早く退勤してもらいたいと思う中で、Xに対して言葉で懇請する際に付随する行為として多少身体に触れたものと推認され、それほど強い有形力の行使があったものとは考えがたい。また、右胸部打傷の診断書が提出されているが、上記会話を見ても、押された際にそれほど痛がっている気配はない上、それどころかその後もXとYの会話が継続している状況であり、上記診断書記載のとおりの負傷をしているとはにわかに考えがたい。したがって、YがXの身体を多少押した程度の有形力を行使したとしても、違法といえる程度の有形力の行使があるとは認められない

確定的な退職の意思表示があったか否かが争われています。

ぎりぎりの判断ですので、担当する裁判官によっては判断が異なっていたと思われます。

また、有形力の行使がなされ、被害者が診断書を証拠として提出してきたとしても、それだけで当然に違法性や損害が認定されるものではありません。

なんでもかんでも不法行為とは評価されないわけですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介555 たった1人との出逢いで人生が変わる人、10000人と出逢っても何も起きない人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
たった1人との出逢いで人生が変わる人、10000人と出逢っても何も起きない人

タイトルに出てくる「たった1人との出逢いで人生が変わる人」と「10000人と出逢っても何も起きない人」の差って何でしょうね。

この本では、安易な「人脈づくり」はおやめなさいと言っています。

すればするほど人生を変える「たった1人」から遠のくわけです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人脈がすばらしいということは、人望が厚いということ。ここに議論の余地はない。では人望の厚い人というのはどんな人だろうか。誰にでもいい顔をする人ではない。反対だ。身近な人を大切にする人が人望の厚い人だ。仕事でいえば関わった人を大切にする。この人と一生付き合っていこうと決めた人をとことん大切にする。一生付き合っていこうと決めた人が、助けて欲しい時にすべてを放り出しても飛んでいく。」(127頁)

そうです。これが「たった1人」なのです。

どれだけたくさんの人を知っていても、それが浅い関係であれば、1000人であっても、10000人であっても、同じことです。

助けてほしいときにすべてを放り出しても飛んでいける関係は、もはや「人脈」などいう薄っぺらい言葉では言い表せません。

そういうつながりを「仲間」「兄弟」と呼ぶのではないでしょうか。

生きているうちに、仲間・兄弟が1人でもできれば、10000人の人脈よりもよほど価値があると思います。

不当労働行為141 法人格否認の法理により新設会社で組合員を採用しなかったことが不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、運送事業を廃止して同事業に従事していた組合員を解雇したこと、新設の運輸会社に採用しなかったことが不当労働行為にあたるとされた事例を見てみましょう。

光洋商事ほか1社事件(長崎県労委平成27年12月7日・労判1130号92頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が運送事業を廃止して同事業に従事していた組合員Xらを解雇したこと、Xらを新設のZ社に採用しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社はA社長の主導によって設立されたものであり、Z社はY社の商号をB弁護士の指摘によって変更されたものであるから、Z社はA社長の主導によって設立されたものと認められる。
そして、Y社の運送事業を引き継ぐこと以外に何らかの異なる事業を営むことを目的としていたとは認められないし、実際にY社の運送事業を超えて事業を営んだ事実もない。
したがって、Z社は、Y社の運送事業部門を引き継ぐものとして設立されたと認めるのが相当である。

2 Z社設立の経緯、車両、不動産や備品、取引先、従業員、及び業務の実態などを総合すると、Z社は、法人格としては独立しているものの、それは形式に過ぎず、実質的にはY社の一部門として長崎本社営業所の運送事業を行っていると判断するのが相当である。

3 以上のとおりであるから、Y社及びZ社は実質的に同一であると認められ、そして、本件解雇及び本件不採用は、組合員4人を両社から排除することを意図して行われた不利益取扱いであり、労組法7条1号に該当する不当労働行為と判断するのが相当である。

法人格否認の法理が適用された事例です。

訴訟ではなかなか認めてくれない法理ですが、本件では労働委員会が認めてくれました。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介554 私たちの人生の目的は終わりなき成長である(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
私たちの人生の目的は終わりなき成長である

タイトルがいいですね。

人生の目的は、「成功」ではなく「成長」だということです。

それも「終わりなき」成長です。

こう考えた時点で、「やりきった」という、いわゆる「燃え尽き症候群」のような感情は生まれないのでしょうね。

死ぬまでにどこまで成長できるのか、それこそが人生の目的だと考えています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

相手の短所を指摘するのはそれこそ幼児でもできるが、相手の長所を見つけることは知性がなければできない。」(153頁)

寛容という言葉が死語になりつつある現在の日本においては特にそうですね。

いずれも習慣の話だと思います。

人の良いところを探すくせがついている人は、自然とそれができるのに対して、その逆もまたしかり。

これは、メンターとの関係についても同じことが言えると思います。

メンターから学ぼうとするときは、メンターの良いところだけを見ればいいのです。

メンターに100%の完璧さを求めてはいけません。

そんなの無理ですから。

100%完璧な人などいないことは、自分が一番わかっているはずです。

100%を求めているうちは、永遠にメンターは見つかりません。

本当は目の前にいるのに。

いいところはそのまま受け入れる。

よくないところはそのまま受け流す。

そのくらいの寛容さをメンティーは持つべきです。

よくないところがあっても、それを含めて、自分がメンターとして選んだわけですから。

不当労働行為140(P社(配転等)事件)

おはようございます。

今日は、通勤中の交通事故の後遺症を理由に、配転し、配転に伴い賃金を減額したことが不当労働行為にあたらないとされた事例を見てみましょう。

P社(配転等)事件(兵庫県労委平成27年12月24日・労判1130号90頁)

【事案の概要】

本件は、通勤中の交通事故の後遺症を理由に、大型トラックドライバーからパソコン解体開梱作業等に配転し、配転に伴い賃金を減額したことが不当労働行為にあたるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、Xの本件事故による症状固定後の状況について、集中力、注意力が低下しているにもかかわらず、その自覚症状がなく、適切な安全対策が取れないような状態であって、大型トラックを運転させることは非常に危険であると判断したものであり、安全管理上、Xを大型トラックドライバーから配置転換したことには合理的な理由があるものと認められる。

2 本件賃金減額について、本件配置転換によって職務が変更になったことに伴うものであること、結果としてXの明確な同意が得られたとは言えず、その点において、私法上問題があると評価される余地があるものの、Y社はXに対して同意を得るよう、それなりに話し合いをしていること、加えて平成25年3月21日の団体交渉において、Y社が、職種の変更に伴い賃金の減額が生じるが、障害年金が支給されることによって減額分は補填されるなどと説明したことからすると、Y社がXの賃金月額が減少するとしても、減額分は障害年金により補填されると認識していたものと推認できることを併せ考えれば、Y社の労組に対する嫌悪を決定的な動機としてなされたものということはできず、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当すると認めることはできない

この決定は非常に参考になりますね。

私法上問題がある場合でも、会社に組合嫌悪の動機が認められない場合には、不当労働行為にはあたらないと判断される場合があるということです。

どのような事情が結論に影響しているのか、是非、参考にしてください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。