Monthly Archives: 4月 2016

管理監督者36 飲食店店長の管理監督者性と固定残業制度の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、飲食店店長の管理監督者性と固定残業代に関する裁判例を見てみましょう。

穂波事件(岐阜地裁平成27年10月22日・労判1127号29頁)

【事案の概要】

本件は、平成20年7月からY社に勤務しているXが、Y社に対し、平成23年9月分ないし平成25年9月分の未払の時間外・休日・深夜割増賃金282万1547円があると主張して、同金員及びこれに対する遅延損害金を請求するとともに、労基法114条に基づいて、同額の付加金及び遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し282万1547円+遅延損害金を支払え。

Y社はXに対し227万8089円の付加金+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の「店長」として勤務しており、担当店舗に勤務するパート等従業員の採用、給料、昇給等について一定の権限を有しており、毎月のシフト割などを決めるほか、担当店舗の金銭の管理、食材の発注量の決定、店舗の什器備品の購入について一定の範囲の権限があったことが認められる。
しかしながら、他方で、当該店舗の営業時間を変更することはできず、パート等従業員の給料や、昇給等についても一定の枠の範囲内での権限であった上、Xに与えられていた権限は、担当店舗に関する事項に限られていて、Y社の経営全体について、Xが、決定に関与することがなされていたとは認められないのであって、企業経営上の必要から経営者との一体的な立場において、労基法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないといえるような重要な職務と権限を付与されていたということは困難である

2 また、その勤務態様についても、タイムカードを打刻することが求められ、出退勤について監理されていた上、店長が担当店舗の営業日や営業時間を自ら決定する権限はなく、休むためにはアシスト等代行者を確保する必要があったというのであるから、Xは、実質的には、自らの労働時間を自由に決定することはできないものであった。
さらに、Xの収入が、賃金センサスによる平均賃金を上回っていたとしても、Y社において、店長が賃金面で、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られていたとは認められない
以上を総合すると、Xが労基法の41条2号の管理監督者に該当すると認めることはできないというべきである。

3 Xは、少なくとも、平成25年1月7日以降は、管理職手当(管理固定残業)として毎月10万円支給されているものが、みなし残業手当83時間相当として支給されていることを認識していたと認められる。
しかしながら、上記の83時間の残業は、36協定で定めることのできる労働時間の上限の月45時間の2倍に近い長時間であり、しかも、「朝9時半以前及び、各店舗の閉店時刻以後に発生するかもしれない時間外労働に対しての残業手当」とされていることを勘案すると、相当な長時間労働を強いる根拠となるものであって、公序良俗に違反するといわざるを得ず、これがXとY社との間で合意されたということはできない
また、他方、Y社が本件において、店舗開店前や、閉店時刻以後の残業はあまり考えられないと主張していることなどに照らすと、「朝9時半以前及び、各店舗の閉店時刻以後に発生するかもしれない時間外労働」が、月83時間も発生することはそもそも想定しがたいものであったと言わざるを得ず、その意味でも、これをXとY社との間の労働契約において合意がなされたということはできない。
よって、管理者手当(管理固定残業)は時間外労働に対する手当として扱うべきではなく、月によって定められた賃金として、時間外労働等の割増賃金の基礎とすべきである。

管理監督者性と固定残業代が争点となっています。

いずれももはや昔の論点といえます。

近くに「社長、これだと裁判、100%負けますよ・・・」とアドバイスしてあげる弁護士や社労士がいたらよかったのに・・・と思ってしまいます(実際にはアドバイスをしても聞く耳を持たない経営者もおりますが)。

固定残業制度を導入する場合には、ちゃんとやらないと、基礎賃金が増えてしまうので、余計に多くの残業代を支払うことになってしまうことをまずは理解すべきです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介543 リーダーになる前に20代でインストールしておきたい大切な70のこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
リーダーになる前に20代でインストールしておきたい大切な70のこと

ここ最近、著者の本を手当たり次第にアマゾンで購入して読んでいます。

内容としては、徐々にかぶってくるのは仕方がないことです。

その点は別に批判されることではありません。

むしろ、同じような内容でも、角度を変えて、本を出し続けるということは、簡単なことではありません。

1冊につき、1つの気付きがあれば、十分元が取れるのが、本のいいところです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

上からご馳走になったら、下にご馳走する。上から育てられたら、下を育てる。・・・一番ダメなのは、上から授かったものを一人占めしてせき止めてしまう人だ。人体がインプットとアウトプットのバランスをとりながら生存しているのと同様、恩返しも流通させていかなければ淀んで腐ってしまう。」(67頁)

このような教えは、私たちも先輩から受けてきました。

先輩と食事に行って、お金を出そうものなら、本気で怒られたものです(笑)

懐かしいですね。

若いうちは、先輩にかわいがってもらい、できるだけ多くのことを教えてもらう。

そこで、社会や仕事のルールを学ぶわけです。

徐々に自分が先輩になっていき、今度は、後輩にご馳走しつつ、先輩からの教えを下に伝えていく番です。

これがまさに恩返しならぬ恩送り。

かっこいい先輩に巡り会えた後輩は、本当に幸せです。 一生の財産です。

労働災害86(市川エフエム放送事件)

おはようございます。

今日は、自殺した精神疾患を有するDJの職場復帰への対応と安全配慮義務に関する裁判例を見てみましょう。

市川エフエム放送事件(千葉地裁平成27年7月8日・労判1127号84頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが自殺をしたことについて、安全配慮義務違反があったと主張するXの相続人が、Y社に対し、損害賠償請求をした事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、約3000万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの職場復帰を認めた平成23年10月7日の時点で、・・・に照らせば、Xの精神状態や他の従業員との人間関係に改善が見られない状態で、職場復帰を認めれば、Xが再度自殺を試みることは予想できたというべきである。
・・・その結果、Xは、職場復帰後、外形的には精力的に職務をこなしていたものの、内面では、極めて多忙であることに疲弊し、職場での人間関係は更に良くなくなっていると感じていたことが認められ、その結果、Y社の職場を壊したのは自分であり、自殺することしか責任を取る方法はないと思い込み、自殺に至ったものと推認できる

2 Aは、Xの職場復帰に当たり、Bの勤務日との調整をするなど一応の配慮をしているほか、X自身、継続的にC医師の診察を受けており、専門家による指導下にあったという事情は認められるものの、そのような状況下においてすでに自殺未遂を起こしているわけであるから、このことをより深刻に捉え、Xの職場復帰の可否を判断するに当たっては、Xに臨床心理士の診察を受けさせ、あるいは、自ら臨床心理士や主治医であるC医師と相談するなど、Xの治療状況の確認や職場における人間関係の調整などについて専門家の助言を得た上で行うべきであった
しかるに、Aは、上記のとおり、自分だけの判断でXの職場復帰及び業務内容を決めたものであり、その業務内容も前記のとおり、Xの精神的・身体的状態を十分配慮したものとはいえないものであったことからすれば、Aの対応は、Xの生命身体に対する安全配慮義務に違反するものというべきである。

3 Xは、Y社に就労する以前から精神疾患に罹患しており、自殺に結びつく素因を有していたこと、Xは、自殺未遂後、主治医であるC医師から3週間ほど休むよう勧められたにもかかわらず、その指導を受け入れなかったこと、Xは、C医師にジェイゾロフトなどの服薬を止めたい旨を申し入れ、C医師の了解を得たが、この服薬の中止がXの精神状態に何らかの悪影響を及ぼした可能性を否定できないこと、Xは、Y社から10日間の休暇を取る了解を得られ、休養の機会を与えられたにもかかわらず、それをあえて短縮して職場復帰をしたこと、Y社の職場における人間関係の悪化について、X自身相当程度の寄与をしていることが認められることなどに照らせば、XとAとの立場の違いや、Y社に求められる前記安全配慮義務違反の内容を考慮しても、Xに認められる前記損害について、損害の公平な分担という観点から、過失相殺ないしその類推適用により、3割を減額するのが相当である。

精神疾患を理由とする休職後、職場復帰をさせる際、使用者としては、細心の注意を払う必要があります。

上記判例のポイント2を理解し、リスクヘッジを図るべきです。

独自の判断だけで手続を進めることは決しておすすめしません。

本の紹介542 折れないハートをつくる7つの秘訣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
折れないハートをつくる7つの秘訣―メヴィウスの翼

著者は美容室やネイルサロン等を展開するフォルテさんの社長です。

お食事にご一緒させていただいたこともありますが、鈴木社長の人柄、人間力に触れると、多くの人がファンになってしまうのがよくわかります。

本についても、とてもわかりやすく、これまで社長が勉強を重ねてきたことが凝縮されています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

美容師のカリスマブームが訪れる以前、人手不足で非常に苦労していた時代があった。新卒といわれる学生さんは、僕のような小さな美容室にはなかなか就職してくれない。当時は僕も、早朝からいくつもの美容学校をまわり、先生にご挨拶をする毎日だった。・・・ある日、求人に大成功しているサロンの噂を聞きつけた。さっそく僕はそのサロンの経営者に会いに行き、話を伺うことにした。
『すごいですね。毎年、50人以上、入社されると聞きました。僕も毎日走り回って頑張っているんですが・・・なんでうまく行かないんでしょうかね?』
『ハハハ。それで何校ぐらいまわったの?』
『30校ぐらいでしょうか』
『鈴木君、それじゃあ、やっているうちに入らないよ。僕は北はオホーツクから南は西表島(沖縄県)まで行ったよ。まわった数は・・・そうだなぁ、各種学校も含めて、400校くらいかな』
”バットで頭を殴られた感じ”・・・という表現があるが、その時の僕の気持ちを表現するなら、まさにそれだった。僕は、自分が恥ずかしかった。『本気のつもり、やっているつもり』の落とし穴とはこういうことか!本気にも、『レベルと質』があるのだ。・・・」(66~67頁)

「本気のつもり、やっているつもり」の落とし穴について、ご自身の経験を交えて説明されています。

近くに圧倒的な努力をしているメンターがいる人は、本当に幸せなことです。

自分では本気でやっている「つもり」でも、近くに、自分の何倍も努力している人がいるのを見ると、「もうダメだ」という言葉が「まだダメだ」に変わります。

今の自分を変えたいという人は、今のレベルの努力では足りないということを自覚させてくれるメンターに話を聞きに行きましょう。

刺激を受けまくって、翌日から日々の習慣、考え方を変えるのです。

不当労働行為137(埼玉県国保連合会事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、臨時職員である組合員の雇用契約更新に当たり、組合と交渉することなく、組合員に雇用契約更新回数の制限などの条件を個別に提示したことが不当労働行為にあたるかが争われた事例を見てみましょう・

埼玉県国保連合会事件(埼玉県労委平成27年10月22日・労判1126号87頁)

【事案の概要】

本件は、臨時職員である組合員の雇用契約更新に当たり、組合と交渉することなく、組合員に雇用契約更新回数の制限などの条件を個別に提示したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y社が、契約期間が3月31日までの臨時職員に対して、4月1日以降の契約更新に係る個別面接を2月下旬に行うことは、対象者の更新希望の有無を確認し、更新を決定するのに必要な行為であり、その内容、時期からして合理的なものといえる。
また、その態様・程度も例年どおり更新希望の確認と勤務条件等の書面への署名又は押印を求めるもので、個別面接の趣旨からして合理的な範囲にとどまる

2 組合は、個別面接当日の朝に団体交渉を申し入れたことをもって、異議申入れをしたのにY社が個別面接を強行したかのような主張をなすものであるが、当該要求書には「3月7日までに団体交渉を行うことを申し入れます。」と記載されていることから組合が団体交渉を個別面接時に行うように申し入れたとは認めることができない。また、前述のとおりこの時期に個別面接を行うことは合理的なものと言えることから、当該要求書をもってY社が個別面接の中止や延期をすべきであったとみることもできない。執行委員長を含む組合員においても個別面接実施自体を異議なく受け入れ、勤務条件等の書面に各自了承サインまでしている。

3 よって、・・・組合嫌悪の念から組合の存在を否定し、あえて個別面接を行ったものとは言えず、労組法7条3号で禁止する支配介入に該当しない。

団体交渉継続中に、組合を飛び越して、各組合員と交渉をすることは原則として許されませんが、今回の事案は、特に不合理な対応ではなかったため、不当労働行為にはあたりませんでした。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介541 1日ひとつだけ、強くなる。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
1日ひとつだけ、強くなる。

著者は、日本初のプロゲーマーの方です。

以前にも、著者の本である「勝ち続ける意志力」「勝負論」を紹介しました。

勝負に対する心構えは、職業を超えてとても参考になります。

さて、この本で「いいね」と思ったのはこちら。

僕は対戦において得意不得意を作らないようにしているけれど、それにはこういった背景もある。何でもできるようにしておかないと、いざとなったときに変化ができない。そういう意味で『僕には得意技がある』というのは恥ずかしいことだと思っている。得意ではないことを、放置しているような側面があるからだ。得意なことだけやっていると、いつかは行き詰まる。・・・そして、得意なことというのは伸びしろに欠けることが少なくない。ついついそこに頼るし、普段からそこに力も入れている。気がついたら幅がなくなっていて、いざ対応されると、それっきりとなることもある。」(251~252頁)

私たちの感覚からすると、得意分野があることは決して悪いことではなく、むしろ良いことだと考えますが、、著者の考え方は違うようです。

得意ではないことを、放置しているような側面がある」と捉えているようです。

自分の得意な形に持って行ける場合には勝てるけれど、不得意な形になったらとたんに弱い、というのは、勝負に対する心構えとしてはまだまだなのかもしれませんね。

もう1つ。

得意なことだけやっていると、いつかは行き詰まる」という考え方。

あるレベルまで来ると、以前のような伸びを期待することができなくなります。

その壁を乗り越えるために必要なのは、自分が蔑ろにしてきた「不得意分野」における知識や経験、視点なのかもしれません。

そういう意味で、やはり自分の不得意分野を放置することは勝負の世界では「弱さ」につながるのでしょう。

配転・出向・転籍29(T社事件)

おはようございます。

今日は、出勤停止の懲戒処分、配転命令が有効とされた裁判例を見てみましょう。

T社事件(東京地裁平成27年9月9日・労経速2266号3頁)

【事案の概要】

本件は、使用者であるY社から、元交際相手の男性との復縁工作を探偵社に依頼した行為に関し3日間の出勤停止の懲戒処分を受け、その後、配転命令を受けたXが、Y社に対し、前記懲戒処分及び配転命令は無効かつ違法であると主張して、①出勤停止ないし休職期間中の賃金7万0975円及び遅延損害金の支払、②配転先の部署であるY社の電力・社会システム技術開発センター高機能・絶縁材料開発部環境機能性材料開発担当において勤務する雇用契約上の義務のないことの確認、及び③違法な懲戒処分及び配転命令により受けた精神的苦痛について不法行為に基づく損害賠償請求として200万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件依頼行為は、本件男性及び被害女性のプライバシーを正当な理由なく侵害する行為で、かつ、社会通念上相当とはいえない行為である。そして、本件依頼行為がなければ起きなかった本件名誉毀損等の行為により、被害女性はインターネット等において実名をもって著しく名誉を毀損され、その結婚式の二次会は中止を余儀なくされ、Y社は数日間の業務妨害により多数の従業員による対応を余儀なくされた。つまり、本件依頼行為は、それ自体が権利侵害である上、起きた結果はさらに重大である。
そうすると、Xが、本件名誉毀損等の行為が行われることについて認識、認容していなかったこと、Xにとって初めての非違行為であること、被害女性と示談が成立していること、Xが、交際相手から他の女性との結婚を伝えられ、焦りの余りとった行動であることを考慮しても、出勤停止3日の懲戒処分を行うことは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、懲戒権の濫用であるとはいえない(労働契約法15条)。

2 Y社としては、被害女性の二次的な被害及び他の従業員の動揺等による業務遂行の支障を避けるため、被害女性が業務でしばしば訪問するIECにXを配置しておくことはできず、Xを被害女性との接触可能性が少ない部署に配転する業務上の必要性があったと認められる。

3 配転先の選定については、被害女性が業務で訪問している部署や訪問する可能性が高い部署を外し、かつ、Xの学部時代の専攻である無機材料の物性分析と関連がある、素材の性質の分析に関わる部署を選定していること(Xは本件配転先で一定の成果を上げている)、Y社は、本件配転前に居住していたXの自宅から通勤時間が2時間弱程度かかることに配慮し、Y社の寮の利用を提案していることからすれば、本件配転において、Xを退職させる目的があったとは認められない

4 本件配転により、Xの自宅からの通勤時間は1時間以内であったのが、2時間程度になったが、その通勤時間が、首都圏において一般的に通勤時間として許容できない範囲であるとはいえないし、Y社がXに対し、本件配転先に近い寮の利用を提案していることからすれば、通勤時間が長いため著しい不利益があるとのXの主張は採用できない。

5 Xには本件配転前後で基本給の変更はなく、初めての部署であることを考慮し、自立的な業務遂行ができること等を要件とするフルフレックス制を適用しない合意をしたため、本件配転後の平成26年1月から同年9月まで業務手当10万5100円が支給されなくなり(その代わりに勤務時間に応じて時間外労働手当が支給されることとなった)、一時的に手取り額が減少した。他方、平成26年10月からフルフレックス制が適用されて、本件配転前より多額の10万7720円の業務手当が支給されている。そうすると、・・・その趣旨目的、賃金が減少していた期間、代替措置に照らし、著しい不利益とまでは認め難い。

出勤停止3日という絶妙な懲戒処分であるため、処分の相当性についても問題なく認められています。

配転命令については、会社が退職勧奨の目的がないことを裏付けるために、どのようなアプローチをしたらよいのか、是非、この事例から読み取って下さい。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介540 友だちをつくるな(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
友だちをつくるな

友だちをつくるな、だそうです(笑)

別につくってもいいと思いますけど。

著者の言いたいことをこのタイトルだけから読み取るのは難しいですね。

中身を読めば、言いたいことがわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

「人間関係で独り相撲を取って悩んでいる人の共通点は、みんなに好かれようとしていることだ。古今東西問わず、これまでにみんなに好かれることに成功した人間はただの一人もいない。みんなに好かれようとするのは、自然の摂理に反する行為なのだ。」(65頁)

人間の悩みの多くは、人間関係に関するものだと言われます。

これだけ人がいるのですから、好きな人、嫌いな人はいますよ。

また、何をやっても、何を言っても、全員から共感されることなどありません。

そもそもそれを期待することが間違っているのです。

他人に共感されないといてもたってもいられない人には辛い現実かもしれませんが、受け入れざるを得ません。

別にいいじゃないですか、みんなにわかってもらえなくても。

自分がやりたいようにやって、分かってほしい人にだけ分かってもらえたら、それで十分幸せですよ。

不当労働行為136(NHK(全受労堺支部)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、交渉ルールおよび労使慣行を理由に、労組支部の指定する者が出席する支部との団交に応じなかったことが団交応諾義務に違反するかが争われた事例を見てみましょう。

NHK(全受堺支部)事件(中労委平成27年11月4日・労判1126号86頁)

【事案の概要】

本件は、交渉ルールおよび労使慣行を理由に、労組支部の指定する者が出席する支部との団交に応じなかったことが団交応諾義務に違反し不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 本件出席ルールについてY社とX組合との間で合意があったと認めることはできず、本件出席ルールがY社とX組合との間で拘束力を有していたものとはいえず、事前了解や本件出席ルールを根拠にY社の団交拒否に正当な理由があったと認めることはできない

2 労働組合の交渉担当者の選任は労働組合の自主的判断に委ねられるものであるところ、X組合側の出席者はA特別執行委員一人ではなく、従前から交渉していたX組合の者もいるのであり、基本的にY社側で前提事項の説明等を繰り返す必要が生ずるなどして交渉に顕著な混乱が生じるおそれがあるとはいえず、A特別執行委員自身に交渉を行う上で不適切とされるような問題があるとの証拠もない。仮にY社が交渉に混乱が生じるおそれがあると懸念するとしても、それは交渉の具体的方法の問題として、X組合との間の事務折衝等において具体的に懸念を表明し、混乱するような事態が生じないように進行を打ち合わせたり、X組合が事前にA特別執行委員との間で入念な準備等をしたりするなど自主的な取組によって解決することが可能な事柄であり、このような手順を踏むことなく、一律に出席を拒否する正当な理由とはならない

上記命令のポイント2は押さえておきましょう。

安易に団交を拒否することは避けましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介539 柳井正 わがドラッカー流経営論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
柳井正 わがドラッカー流経営論

柳井社長が、ドラッカーの本を読み、どのように経営に活かしてきたのかがよくわかります。

読み込みのレベル自体が勉強になります。

もう一度、ドラッカーの本を読んでみたくなるのではないでしょうか。

早速、本棚からドラッカーの本を引っ張り出してきました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

働き方に関する提言としてドラッカーはこんなことも言っています。『成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする』(『経営者の条件』)。つまり、時間は無限ではない。自分の時間を常にチェックして自分の潜在能力を発揮するためには集中することが大切だ、というわけです。・・・だから『いつまでに達成する』という明確な時間の目標をあらゆるシーンで考えて集中するべきだと思うんです。」(113~114頁)

時間も人生も有限です。

年齢を重ねるごとにこのことを認識するようになります。

若い頃は、時間も人生も無限に存在するような錯覚がありましたが、それも20代までですね。

周りがやっているから自分も仕方なくやる・・・といったことはすべてやりたくなくなってきますね。

何とは言いませんが(笑)。

限られた時間の中でできることは、もともとそんなに多くはないはずです。

経営者に限らず、人生の目的を「自身の成長」に置いている人は、その目的に反する行為はあえて「時間の無駄」だと割り切ってみてはいかがでしょうか。