おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
今日は、賃上げの団交において回答の根拠となる財務諸表の持ち帰り及び書き写しを拒否したことが不当労働行為とされた事例を見てみましょう。
H運送事件(大阪府労委平成27年7月28日・労判1124号91頁)
【事案の概要】
本件は、賃上げの団交において回答の根拠となる財務諸表の持ち帰り及び書き写しを拒否したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 Y社は、①そもそも、労働組合に使用者の会計書類の閲覧謄写請求権はない旨、②Y社は、団交の席上において、資料を提示し、閲覧に応じたものであり、さらには、専門家の同道を条件に、会社備付けの会計書類の閲覧を申し出たのであるから、組合の資料提出要求への対応としては、それで必要かつ十分である旨主張する。
しかしながら、労働組合に使用者の会計書類の閲覧謄写請求権があるか否かの問題と、会計書類についての使用者の団交における対応が不当労働行為に当たるか否かとは別の問題であり、Y社の①の主張には理由がない。
Y社の②の主張については、確かに、使用者は、団交に際し、労働組合が求める資料の全てを開示し、提供することまで求められるものではない。しかしながら、使用者は、団交での労使の合意形成に向けて、自らの主張を十分に説明し、相手方の理解を得る努力をしなければならず、これらを怠った場合には、使用者の対応は不当労働行為となり得るものである。
2 ・・・そうすると、Y社は、24年春闘に係る団交において、組合の要求に応じられない理由を十分に説明し、組合の理解を得る努力をすることなく、組合が求めた資料の持ち帰り及び書き写しを拒否したのであって、かかるY社の行為は不誠実であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
会社の気持ちはわからないではありませんが、残念ながら不当労働行為にあたります。
経営者のみなさんは、まずは団体交渉のルールを過去の事例等から一通り勉強する機会を設ける必要があります。
多くの場合、ルールを知らないことが原因とトラブルが拡大化しているように思いますので。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。