おはようございます。
今日は、就業規則変更による運行手当減額の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
中野運送店事件(京都地裁平成26年11月27日・労判1124号84頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員(運転手)であるXらが、Y社の就業規則の一部をなす「運行に関する手当明細表」の変更により賃金が減額となったが、当該不利益変更は高度の合理がなく無効であるとして、従前の運行手当明細表に基づく賃金の支給を受けるべき労働契約上の地位の確認を求めるとともに、平成23年9月分以降に支給された賃金と従前の運行手当明細表に基づき支給されるべき賃金との差額の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
X1を除くすべての原告につき平成22年4月1日に定められた運行手当明細表に基づく賃金支給を受けるべき労働契約上の地位を有することを確認する。
*X1は訴訟途中でY社を退社したため。
【判例のポイント】
1 Y社は、経営状態の改善のために、人件費の削減により資金(キャッシュフロー)を得ることを目的として本件改定を行ったものであり、本件改定の一応の必要性があったことは認められる。しかし、平成23年8月に本件改定を行わなければならないとするだけの高度の必要性を窺わせる事情は、特段、見当たらない。
2 そして、Y社が本件改定に先立ち本件組合に行った説明は、本件組合に示された改定の内容も変遷しており、その変遷の理由も明らかではなく、また、本件改定の必要性等の理由の説明も、当初はなされず、その後も説明自体が変遷しており、さらには、理由を裏付ける客観的な資料は何ら提供されていないのであり、これらに照らすと、Y社が、本件改定に先立ち、本件組合に対して十分な説明を行っていたものということはできない。
3 以上に加えて、本件改定がXらに与える不利益が少ないとはいえないこと、本件改定に対する代償措置もとられていないことに照らすと、上記の本件改定の一応の必要性を考慮してもなお、未だ、本件改定に合理性があるということはできない。
就業規則の変更により賃金を減額する場合には、他の労働条件の変更に比べてもより慎重に行う必要があります。
「高度の必要性」が求められていますので、軽い気持ちで行うとやけどします。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。