おはようございます。
今日は、Y市が、事務手数料徴収にかかる契約の締結に応じないことを理由に組合費のチェック・オフを中止したことが不当労働行為にあたるとされた例を見てみましょう。
泉佐野市(チェック・オフ)事件(大阪府労委平成27年7月28日・労判1123号165頁)
【事案の概要】
Y市が、事務手数料徴収にかかる契約の締結に応じないことを理由に組合費のチェック・オフを中止したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 一般に、使用者には労働組合に対して便宜供与を行うべき義務はなく、使用者が便宜供与を中止又は組合に不利益のある方式に変更することが、直ちに不当労働行為に当たるとはいえないが、本件においては、昭和49年頃から、給与条例に基づき組合費は事務手数料を徴収することなくチェック・オフされてきたことが認められ、このように、長期間継続されてきたチェック・オフを中止又は変更するには、合理的な理由が必要であり、Y市は、組合に対し、その理由を明らかにして説明を行い、理解を得る努力を行う必要があるというべきである。
2 Y市の組合への説明状況等についてみると、Y市が組合に交付した文書には、行政改革の一環として、便宜供与のあり方について見直しを行い、給与からの控除について事務手数料を徴収することにした旨の記載があることは認められるが、これ以外に事務手数料の導入の経緯や根拠、理由を記載した部分は見当たらず、また、チェック・オフを中止するまでの間に、Y市が組合に対し、給与からの控除に係る事務手数料を徴収することについて理由等を記載した書類を別途、交付し、説明をしたとする疎明はない。
3 したがって、Y市は、長期間にわたり便宜供与として行ってきたチェック・オフについて、慎重な検討を行わないまま、事務手数料を徴収することを決定し、組合に対し、その決定に従わなければチェック・オフ自体を中止するという態度を取り、必要な説明もないまま一方的に負担を強いたというのが相当である。
以上のとおりであるから、Y市が、組合費のチェック・オフについて、事務手数料を徴収する旨申し入れ、組合が事務手数料の支払に応じなかったことを理由に、チェック・オフを中止したことは、組合に対する支配介入に当たり労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
一度導入した制度を長年にわたって採用し続けてきているわけですから、制度を廃止する場合には、その合理的な理由を説明しなければ、組合だって納得しません。
だからこそ、使用者は、その場のノリや軽い気持ちで新しい制度を導入することは避けるべきなのです。
個々の従業員との関係における労働条件の不利益変更の問題もまさに同じ視点で考えるべき問題です。
導入するのは簡単ですが、廃止するのはとても大変なのです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。