Monthly Archives: 3月 2016

賃金110(ANA大阪空港事件)

おはようございます。

今日は、退職功労金の権利性と内規の就業規則該当性に関する裁判例を見てみましょう。

ANA大阪空港事件(大阪高裁平成27年9月29日・労判1126号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員及び元従業員の相続人が、Y社が労働組合に交付した書面に記載されていた退職功労金の支給基準は就業規則と一体のものとして労働契約の内容となっているとして、Y社に対し、労働契約に基づき、退職功労金及び遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、Y社が労働組合に交付した書面に記載されていた退職功労金の支給基準は労働契約の内容となっているとは認められないとして、Xらの請求をいずれも棄却したので、これを不服とするXらが本件各控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 旧退職金規程7条は、退職功労金について「在籍中に特に功労のあった者に対しては基本退職金の計算の範囲内での功労加算として加給する」と定めているが、在籍中に特に功労があった者に対して退職功労金を支給することを抽象的に定めているだけであり、同条によっては退職功労金の支給対象者及び支給額は確定しないから、旧退職金規程7条に基づいて、直ちに退職功労金を請求することはできず、使用者が「特に功労があった者」に当たるか否かを査定するとともに、具体的な算定方式や支給額を決定することによって初めて具体的な金額が確定するものと解される

2 日本語の通常の意味として、「内規」とは、「内部の規定、内々の決まり」を意味するから、それが就業規則と異なることは明らかである。加えて、昭和55年基準は、労使の合意として書面が作成されていない。これらからすると、Y社が昭和55年基準に従って退職功労金を労働契約の内容とする意思を有していなかったことが認められるから、Y社は昭和55年基準を就業規則として定めたものではなく、どのような者を「特に功労があった者」と認めるか、及び退職功労金の支給額をいくらにするかはあくまでもY社の運用に委ねられていることを前提としつつ、その運用基準として昭和55年基準を定めたものと認めるのが相当である
そうすると、昭和55年基準は旧退職金規程7条の内容を具体化するものではあるが、昭和55年基準自体は就業規則の一部ではないから、昭和55年基準はY社とY社の従業員との間の労働契約の内容としてY社を拘束するものではないというべきである。

原告としてはチャレンジングな訴訟だったと思いますが、裁判所の判断は特に驚くような内容とはなりませんでした。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介538 仕事の技法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
仕事の技法 (講談社現代新書)

帯には、「相手からの『言葉以外のメッセージ』を感じ取る この一つの技法を身につけるだけで『仕事力』は、圧倒的に高まる」と書かれています。

本の内容も、帯に書かれていることの重要性が説かれています。

結果を出している人は、もはや無意識のレベルでやっていることではありますが。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

我々が、顧客から仕事を得るとき、買って頂くのは、実は、『商品』ではない。買って頂くのは、我々自身の『人間』である。そして、我々がどのような『人間』であるかは、優れた人物には、その面構えや身のこなしから、自然と伝わってしまう。それは、『言葉以外のメッセージ』として、自ずと伝わってしまう。」(190~191頁)

人を外見で判断してはいけない、という価値観があることは承知していますが、

多くの場面で、人は人を外見で判断していることは事実です。

特に若い頃は、「面構え」や「身のこなし」だけで何がわかるんだ、と感じてしまうかもしれませんが、わかる人にはわかってしまうということをまず受けとめる必要があります。

例えば、私たち弁護士も例外ではありません。

司法試験の合格順位と弁護士としての活躍度合いは当然のことながら比例していません。

自分の仕事は、顧客に何を売る商売なのかということを考えることはとても大切なことです。

この答えがずれていると、いくら努力をしても的外れのため、結果は出ません。

うまくいっている人とできるだけ時間を共有し、その人の一挙手一投足を観察し、「この人は顧客に何を売っているのだろうか」を掴むことはとても勉強になると思います。

是非、やってみてください。

不当労働行為135(甲野堂薬局事件)

おはようございます。

今日は、担当商品の賞味期限切れを理由として、組合員に業務改善を命じ、損害賠償を請求し、出勤停止処分に付し、解雇したことが不当労働行為にあたるかについて判断した事案を見てみましょう。

甲野堂薬局事件(中労委平成27年7月1日・労判1126号89頁)

【事案の概要】

本件は、担当商品の賞味期限切れを理由として、組合員Aに業務改善を命じ、損害賠償を請求し、出勤停止処分に付し、解雇したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

なお、Y社とAは、それぞれ地位不存在確認等請求および地位確認等請求の別件訴訟を提起していたが、平成25年12月19日、Aの解雇を無効とし、地位確認について最高裁で確定し(最判平成26年3月6日)、Y社は、解雇期間中の賃金を支払い、Aは、会社に復職している。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 解雇の理由がA組合員の些細な言動をあえて指摘したに過ぎないものであったこと、Y社がA組合員を会社から追い出したいと考えていたものと推認されること、労使間の対立がピークを迎えていた状況下で同解雇が行われていたものであったことからすれば、当該解雇は、A組合員の活動をけん制ないし抑制することを目的としていたY社が、社内の唯一の組合員であったA組合員を会社から追い出すことを企図し、業務改善命令及び損害賠償請求を始めとする一連の行為の最後の仕上げを目的として行ったものと認めるのが相当である。

2 以上からすると、Y社の21年11月30日付け業務改善命令及び損害賠償請求、同日付け懲戒処分、同年12月30日付け業務改善命令並びに22年2月23日付け解雇はいずれもA組合員が組合員であることないし同人の組合活動を理由として行われたものであり、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たる。

組合員に対する解雇等に合理的理由が認められない場合には、不当労働行為にあたります。

このような場合の不当労働行為該当性については、労働組合法特有の話というよりは、一般的な解雇事案と同様の判断をすれば足ります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介537 人生の9割は出逢いで決まる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
人生の9割は出逢いで決まる

まさにタイトルのとおりですね。

帯には「出逢いを探すな。出逢いは活かせ。」と書かれています。

人脈を広げたいと躍起になっている人には多くの気付きを与えてくれる本です。

探すのではなく、活かすのです。

とてもいい本です。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思っているのはこちら。

出逢いがないか、出逢いの質が低いのは、今のあなたが輝いていないからだ。出逢いに対して愚痴るのではなく、自分が勝てる土俵で勝つ努力をすることだ。そうしてあなたが輝くようになれば、自然と成功者との良い出逢いのチャンスは訪れるはずである。」(57頁)

まさにそのとおりです。

「あなたが輝く」というのは、言い方を換えれば、「力をつける」ということです。

著者も言うように「自分が勝てる土俵で勝つ努力をする」ことがとても大切なのだと思います。

人が休んでいるときにこそ努力を続けるのです。

自分に強いモチベーションがあれば、屁でもないことです。

一生懸命に努力している人を、周りの人は放っておきません。

ひたむきな姿を見たとき、周りの人が手を差し伸べてくれます。

これこそが本当の「出逢い」です。

今、自分にできることを精一杯やる。

力をつけることが「出逢い」への近道なのだと信じる。

継続こそが成功への必要条件であることを胸に刻む。

そういうことなのだと思います。

解雇198(日本航空(客室乗務員)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、休職をしていた客室乗務員に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本航空(客室乗務員)事件(大阪地裁平成27年1月28日・労判1126号58頁)

【事案の概要】

本件は、被告の会社更生手続中に更生管財人が行った整理解雇の対象となった原告が、整理解雇は無効であるとして、①労働契約上の地位にあることの確認と、解雇後、平成23年1月支払期から本判決確定までの賃金の支払を求めるとともに、②原告に対する整理解雇や退職勧奨が違法なものであったとして、損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件整理解雇は、対象とされる労働者に解雇されるに足りる責めに帰すべき事由がないにもかかわらず行われるものである以上、仮に人員削減の必要性が肯定できるとしても、解雇されるか否かを分ける本件人選基準の設定については、もちろん使用者側の裁量が認められることは否定できないものの、恣意的なものであってはならず、解雇されなかった労働者との比較において、当該労働者に解雇を受忍させるに足りる合理性が必要というべきである。
本件整理解雇における人選基準は、(a)病欠・休職等基準(復帰日基準も含む)、(b)人事考課基準、(c)年齢基準で構成されている。
病欠・休職等基準については、客観的な基準をもって対象者を選定するものであり、Y社の恣意性が入る余地がないほか、私傷病等による休職・病欠がある者については、客観的な事実として、現実に一定期間就労していないのであるから、当該期間に休職・病欠することなく現実に勤務していた他の労働者と比較した場合に、Y社の業務に従事していないという点において、Y社に対する貢献度が劣ると評価せざるを得ないし(これは、当該労働者の業務遂行能力が、他の労働者と比較して劣るということを意味するものではない。)、また、将来の貢献度を想定するにあたっても、過去に休職・病欠がある者は、ない者と比較した場合に、相対的に劣る可能性があると判断することも、あながち不合理ともいえない

2 病欠・休職等基準該当者の中でその後に乗務復帰している者については整理解雇の対象から除外するという新たな対象者を絞る要件(復帰日基準)を付加した以上、その基準日については、手続的にできるだけ本件解雇通知に近い遅い時期とするのが合理的であり、同基準を付加した本件人選基準を示した本件人選基準変更日(同年11月15日)とすることに技術的・現実的な支障があることもうかがわれないにもかかわらず、少なくとも復帰日基準の基準日とした同年9月27日から復帰日基準を公表した同年11月15日の間に乗務復帰した者を、依然として、本件整理解雇の対象にとどめることには合理的な理由がないといわざるを得ない
・・・本件人選基準については、基準日の前後で本件整理解雇の対象になるか否か重大な差異が生じるからこそ、基準日の設定の合理性はより厳格に審査しなければならないのであって、そのことがY社の主張するような基準日の設定に関するY社の広範な裁量を根拠づけることにはならない。しかも、前記で判示したことは、単に基準日の前後で復帰日基準の適用の効果が分かれて不合理であるというのではなく、同基準を付加した趣旨とその基準日の設定が整合していないから不合理であるというものであって、Y社の上記主張は理由がない。

3 整理解雇が無効であり、雇用契約上の地位を有することが確認され、いわゆるバックペイが支払われることで、労働者としての地位が回復され、また、経済的損害も填補されることからすれば、整理解雇が解雇権の濫用に当たるとして無効となる場合であっても、そのことをもって直ちに不法行為が成立することになるものではなく、当該整理解雇が、当該労働者を排除することのみを目的としたり、当該労働者に対する嫌がらせとして行われたものであるなど、その手段・態様に照らし、著しく社会的相当性に欠けるものである場合に、不法行為に当たると解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件整理解雇が解雇権の濫用として無効となるのは、Y社が当初の人選基準案を公表した後、その後、労働組合からの要望を受けて、復職日基準を追加して本件人選基準を公表したものの、復職日基準の基準日を人選基準が確定した日ではなく、当初の人選基準案を発表した日とした点が合理性を欠くと判断されたためであるものの、Y社によるそのような復職日基準の基準日の設定が、Xに対する嫌がらせであるなど著しく社会的相当性を欠くとまではいえず、ほかに、本件整理解雇が、著しく社会的相当性に欠けるものであることをうかがわせる事情があることを認めるに足りる証拠もない

ぎりぎりのところで無効となっている感じがします。

上記判例のポイント3に書かれているとおり、裁判所は、人選基準に合理性がないというところで解雇を無効としています。

裁判体が変われば解雇が有効と判断される可能性は十分残されていると思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介536 情熱・熱意・執念の経営(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
情熱・熱意・執念の経営 すぐやる! 必ずやる! 出来るまでやる!

日本電産の永守社長の10年以上前に出版された本です。

仕事に対する情熱・熱意・執念が本当に伝わってきます。

経営者に限らず、経営者を目指している人は、必ず読んでおくべき一冊です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

三十年以上の間にたくさんの社員を採用してきました。その中で、つくづく感じることは、人間の能力には大差がないということです。人の総合的な能力の差というのは、天才は例外としても、秀才を含めてせいぜい五倍、普通は二、三倍程度の違いしかありません。しかし、やる気、意欲、意識の差は百倍の開きがあると感じています。つまり、高い能力を持っていても、やる気や意識の低い人を採用するより、多少能力は劣っていたとしても、やる気や意識の高い人を採用するほうが、はるかに戦力になります。」(103頁)

私は、その人のパフォーマンスの出来不出来を決めるのは、能力だけではなく、また、やる気、意欲、意識だけでもないと思っています。

これらの要素を足し算するのではなく、かけ算することにより結果が決まってくるのだと思います。

「能力」+「やる気、意欲、意識」ではなく、「能力」×「やる気、意欲、意識」。

だから、いくら能力が10だとしても、やる気、意欲、意識が1だと10にしかならず、

逆に、能力が2でも、やる気、意欲、意識が10の人は、20になるのだと思うのです。

私を含め、自分には天才的な能力がないと思う人は、やる気、意欲、意識で勝負するのです。

能力がなく、やる気、意欲、意識もないのでは、どうにもなりません。

人の2倍働き、3倍努力する。 脳神経外科医の福島先生の言葉が思い出されます。

有期労働契約62(エヌ・ティ・ティ・ソルコ事件)

おはようございます。

今日は、長年更新を繰り返してきたパート社員に対する雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

エヌ・ティ・ティ・ソルコ事件(横浜地裁平成27年10月15日・労判1126号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社のパートタイム社員として勤務していたXが、Y社との間で15年7か月にわたり期間1年又は3か月の雇用契約を約17回更新してきたにもかかわらず、Y社が平成25年11月28日にXの業務遂行能力不足ないしY社の業務上の理由により同年12月31日をもってXを雇止めにしたのは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上不相当であると主張して、Y社に対し、雇用契約が更新されたものとして雇用契約上の地位確認を求めるとともに、本件雇止め後の賃金・賞与及び遅延損害金の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、NTTのグループ会社からコールセンター業務を受託して運営することを主な業務としているところ、Xが従事していた104業務は、受託業務の中でも長く受託されてきた業務であり、規模が縮小しているとはいえ、同様に長く受託してきた他の業務が終了したり、一部の業務は他社に移行したりする中で、一定の人員が確保され、なお継続しているもので、Y社の恒常的・基幹的業務であると認められる。

2 ・・・Xは、賃金が低くパートタイム社員と扱われているが、一般の常用労働者とほぼ変わらない勤務条件で勤務していたものと認められる。
さらに、Xの雇用契約更新状況をみると、約17回の更新を経て勤続年数が15年7か月に及んでおり更新手続は、契約期間終了前後にロッカーに配布されるパートタイマー雇用契約書に署名押印し、これを提出するというごく形式的なものであり、形骸化していたといわざるを得ない。
この点、B所長は、更新の際に面談等をしていたと証言するが、その内容は具体性を欠いており、信用できない。
以上に鑑みれば、本件雇止めは、期間の定めのない雇用契約における解雇と社会通念上同視できると認めるのが相当である。
したがって、X・Y社間の雇用契約は労働契約法19条1号に該当すると認め、本件雇止めについては、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められるか否かを判断する。

3 ・・・Y社のいう他業務への転出の勧めは、他業務の内容等を掲示して紹介するというものにとどまり、他業務を希望する社員は改めて他業務の担当部署で採用面接を受けなければならず、適性がなければ採用されないのであるから、雇止め回避策としては不十分であるといわざるを得ない
また、Y社が雇止め対象者に対し雇用継続の希望を確認して他業務の紹介等をしたのは、雇止めの通告後であると認められ、通告前に個別に雇用継続の希望を確認したり、希望する業務を聴取したりしたことは認められないから、Y社の上記措置は雇止め回避策ではなく、雇止めを前提とした不利益緩和策にすぎない

4 本件雇止めについては、人員削減の必要性は存在するものの、客観的に合理的な理由あるいは社会通念上の相当性の要件充足性の程度は弱いものであるから、相応の手厚い雇止め回避措置を講じることが期待されるところ、Y社は、Y社の他業務担当部署への異動を予定していないとしても、雇止め後に引き続き円滑に他業務に従事できるよう雇止め通告前から調整を図るなど、より真摯かつ合理的な努力をする余地があったというべきであるから、人員削減の必要性の点における上記要件充足性の程度の弱さを補完するに足りる程度に手厚い雇止め回避努力がされたとは認められない

多くの裁判例が労契法19条2号事案であるのに対し、今回の裁判例は1号事案です。

どのような場合に19条1号に該当するのかをこの裁判例から読み取り、実務に活かしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介535 田中角栄100の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
田中角栄 100の言葉 ~日本人に贈る人生と仕事の心得

田中角栄さんの言葉を集めた本です。

リーダーシップの塊みたいな方です。

とても魅力的な方です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

戸別訪問3万軒、辻説法5万回、これをやれ。やり終えたら改めてオレのところに来い。」(164頁)

これは、選挙に出馬したいという新人の立候補希望者が角栄さんの事務所にやってくると、必ずこの言葉をかけたそうです。

まずはやるべきことをやれ、ということです。

やるべきことをやらずに成功したいと願う人が多すぎると言いたいのではないでしょうか。

いかに楽をするかばかりを考える癖がついていると、地道な努力ができない体質になってしまいます。

一度身についた癖・習慣を変えるのはとても大変なことです。

最初が肝心なのです。

不当労働行為134(H運送事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、賃上げの団交において回答の根拠となる財務諸表の持ち帰り及び書き写しを拒否したことが不当労働行為とされた事例を見てみましょう。

H運送事件(大阪府労委平成27年7月28日・労判1124号91頁)

【事案の概要】

本件は、賃上げの団交において回答の根拠となる財務諸表の持ち帰り及び書き写しを拒否したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、①そもそも、労働組合に使用者の会計書類の閲覧謄写請求権はない旨、②Y社は、団交の席上において、資料を提示し、閲覧に応じたものであり、さらには、専門家の同道を条件に、会社備付けの会計書類の閲覧を申し出たのであるから、組合の資料提出要求への対応としては、それで必要かつ十分である旨主張する。
しかしながら、労働組合に使用者の会計書類の閲覧謄写請求権があるか否かの問題と、会計書類についての使用者の団交における対応が不当労働行為に当たるか否かとは別の問題であり、Y社の①の主張には理由がない。
Y社の②の主張については、確かに、使用者は、団交に際し、労働組合が求める資料の全てを開示し、提供することまで求められるものではない。しかしながら、使用者は、団交での労使の合意形成に向けて、自らの主張を十分に説明し、相手方の理解を得る努力をしなければならず、これらを怠った場合には、使用者の対応は不当労働行為となり得るものである

2 ・・・そうすると、Y社は、24年春闘に係る団交において、組合の要求に応じられない理由を十分に説明し、組合の理解を得る努力をすることなく、組合が求めた資料の持ち帰り及び書き写しを拒否したのであって、かかるY社の行為は不誠実であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

会社の気持ちはわからないではありませんが、残念ながら不当労働行為にあたります。

経営者のみなさんは、まずは団体交渉のルールを過去の事例等から一通り勉強する機会を設ける必要があります。

多くの場合、ルールを知らないことが原因とトラブルが拡大化しているように思いますので。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介534 なぜ、成功者たちは「フシギな習慣」を持っているのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
なぜ、成功者たちは「フシギな習慣」を持っているのか? ~すぐできる医科学的にも正しい成功法則44

タイトルの通り、成功者のみなさんの習慣を集めた本です。

なかにはどんな意味があるのかよくわからない習慣もありますが、多くは納得できる習慣ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一日の時間の98%は今日、明日と繰り返される毎日の本業のために使い、あとの2%は10年または20年先のために使いなさい」(糸川英夫)(83頁)

言うは易く行うは難し。

これを毎日毎日継続できる人は、5年後、10年後、間違いなく頭角を現しています。

わかっちゃいるけどできないのが人間です。

愚直にこれをやり続ける人にこそ成功が約束されているわけです。

毎日、必ず30分は日常の仕事とは直接関係のない勉強にあてる。

毎日、通勤電車の行き帰りの時間、スマホでゲームをするかわりに、資格試験の勉強をする。

やろうと思えば、誰でもできることですが、多くの人はなかなか続かないのです。

習慣の力を知っている人であれば、もはや特別な話ではありません。

あとはやるかやらないか。 やり続けるか、途中で投げ出すかだけです。