不当労働行為132(学校法人順正学園事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、団交開催までに長期間を要したことおよび賃金は人事院勧告に準拠しているとの説明に終始したY学園の対応が不当労働行為とされた例を見てみましょう。

学校法人順正学園事件(岡山県労委平成27年7月23日・労判1123号166頁)

【事案の概要】

本件は、団交開催までに長期間を要したことおよび賃金は人事院勧告に準拠しているとの説明に終始したY学園の対応が不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 上記の団体交渉に至る経緯については、いずれも、Y学園は組合の団体交渉の申入れに対して、速やかに返答せず、組合から日程調整の督促を受けて対応している状況が認められ、こうした学園の対応は誠実な態度とは認めることができず、誠実交渉義務に違反するものである。

2 国家公務員の給与を賃金の基準とすることも、それ自体は不合理なものではなく、また、学園事務局の給与担当者の人数を考慮すれば、学園の主張する人勧準拠にも一定の合理性は認められ、そして人勧準拠とするかどうかは学園の裁量的判断事項に属するものである。
しかし、Y学園に問われているのは、団体交渉の際、Y学園が組合に対し、組合の理解を得られるように、人勧準拠が合理的であるとする根拠を一定の財務資料を含む具体的な資料等を示して説明するなどの努力をしたかどうかの点にあるのであって、本件救済申立てまでの学園の態度は、人勧準拠という結論を述べるにとどまっており、誠実な交渉態度と評価することはできない

3 組合が開示を求めている賃金支給要領が労働条件に関するものであることは明らかであり、その運用の基準が明らかとならない限り、これに関する労働条件を話し合う基礎となるものがないことになるから、仮に手元資料的なものしかないとしても、その内容を組合に示し、その運用について真摯に話し合うのが適切な団体交渉のやり方であり、組合設立以降、長年にわたる組合からの開示要求に対し開示をしていない状況が継続していたことを踏まえると、26年1月21日の団体交渉における学園の対応も、誠実な交渉態度であったと認めることは困難である

使用者側は、具体的な説明を避けたい気持ちが働くと、このような対応になってしまいがちです。

しかし、誠実交渉義務を負っている以上、団体交渉でお茶を濁してその場を納めることは無理だと理解しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。