Daily Archives: 2016年2月23日

不当労働行為131(日本郵便(越谷局)事件)

おはようございます。

今日は、組合員の懲戒処分に関して苦情処理会議で審理されたことなどを理由に団交に応じなかったことが不当労働行為とされた命令を見てみましょう。

日本郵便(越谷局)事件(埼玉県労委平成27年10月7日・労判1123号163頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の懲戒処分に関して苦情処理手続で審理されたことなどを理由に会社が団体交渉に応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 義務的団交事項は、団体交渉の対象事項のうち、団体交渉の対象事項のうち、団体交渉権保障の核心的部分を構成するのであるから、法的保障の意義は大きく、それを制限することは原則として許されない。義務的団交事項は、憲法28条及び労組法によって使用者に対する労働組合からの団体交渉申入れに応じなければならない義務を伴って保障されているからである。

2 すなわち、組合員の労働条件や処遇に関する基準については団体交渉で行い、組合員の処遇等に関する個別的人事権の行使については苦情処理手続で行うというように、区別して各々の手続に委ねることを労働協約に定め、個別的人事権の行使に関する事項を団体交渉の対象事項から除外し、苦情処理手続の下に据えること自体は可能である。しかし、その場合には、団体交渉権保障の趣旨を尊重し、苦情の内容を十分に聴き取る姿勢が示される実質的な審理がなされ、会社側は自らの主張について客観的な資料に基づいて説得するなど労使対等の立場で問題解決にあたるといった団体交渉の趣旨を損なわないものでなければ、団体交渉制度に代置するとはいえない

3 ・・・以上によれば、個別的人事権の行使に関する事項を団体交渉の対象事項から除外し、苦情処理手続に代置する本件協約等の定めは、規定上からは、苦情処理手続が団体交渉権の保障する実質審査を例外的に保障するにとどまるものに過ぎない。
また、実際の運用においても、苦情の内容を十分に聴き取る姿勢が示されたり、会社側が自らの主張について客観的な資料に基づいて説得したりするなど労使対等の立場で問題解決にあたるといった団体交渉の趣旨を損なわないような実質審査を行っているとは認められない。
よって、本件苦情処理手続は、団体交渉権保障の趣旨に照らして団体交渉に代置しうるものとはいえない

4 以上のとおり、本件協約等における苦情処理手続は、個別的人事権の行使に関する事項について、団体交渉に代わって、実質的で慎重な協議や審理が行われることが制度的に担保されているとはいえない。
また、現にそのような運用がなされていると評価することは到底できない。
したがって、実質的に団体交渉に代わる手続として機能しているとみなすことはできない。
よって、・・・かかる会社の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。

あまり見ることのない争点ですね。

苦情処理手続をもって団体交渉の代わりとすることは、よほどの手続的な保障をしない限り、使用者が団交応諾義務を果たしたとはいえないのではないでしょうか。

そう考えると、あえてこのような制度を設ける意義があるのか疑問です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。