おはようございます。
今日は、大学の准教授、教授に対するパワハラを理由とする懲戒処分が無効とされた裁判例を見てみましょう。
T大学事件(東京地裁平成27年9月25日・労経速2260号13頁)
【事案の概要】
本件は、学校法人であるY社との間で雇用契約を締結し、Y社の設置する大学で准教授又は教授を務めていたXらが、同僚の教員や事務職員に対し、パワハラ行為若しくはこれを助長する行為、又は、これらを隠ぺいする目的で口止め行為をしたこと等を理由に、Y社から停職を内容とする懲戒処分を受けたことから、同処分が無効であるとして、Y社に対し、①同処分の無効確認、②停職とされていた期間の給与の支払い、③停職とされたことを理由とする賞与の減額分の支払、④解嘱されたY大学の入学試験問題出題委員会の委員の地位にあることの確認、⑤④の委員報酬の支払、⑥不当な懲戒処分を受けたことにより精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用)の支払、⑦以上のうち、金銭支払請求については、遅延損害金の支払を、それぞれ求めている事案である。
【裁判所の判断】
懲戒処分は無効
→①、②、③認容
【判例のポイント】
1 X1に対する約2か月の停職についてみると、既に判断したとおり、X1懲戒理由については、G准教授が外面的にはXらとの良好な関係を保っており、その深刻な被害感情に思いが及ばなかったとしてもやむを得ないところがあり、Gの健康状態への影響も客観的には明らかではないことからすると、Gの心情等をX1に理解・自覚させた上で改善を待つなどの機会を与えないまま、いきなり停職という重い処分を科すことの相当性には疑問を持たざるを得ない。なるほど、Y社懲戒規程によれば、懲戒処分には停職よりも重い諭旨・懲戒解雇もあり、X1に対する停職期間も定め得る期間の上限と対比すれば重いものではないという見方も可能である。しかし、停職期間中の給与支払の停止、これに伴う賞与の減額分を合わせると、X1の被る損失は189万3028円にも達するものであり、こうした事情も踏まえるならば、約2か月の停職はX1懲戒理由と均衡を欠いた不相当なものといわざるを得ない。
2 Xらは、本件各処分が不法行為を構成するとして慰謝料等の支払を求めている。しかし、既に判断したところによれば、Xらはそれぞれについて懲戒理由とされた事実のうちの一部が認められ、停職よりも軽い懲戒処分であれば適法かつ有効にすることができたと考えられることからすれば、本件各処分が無効であることを前提として、X1については処分の無効確認、Xらについて停職期間中の給与等の支払が認められることに加えて、Xらに精神的苦痛が発生したものとして慰謝料等の請求を認めるのは相当でない。本件各処分が量定上重すぎることを理由に無効とされたものであることを勘案すると、本件各処分が学内報に掲載され公表されている点も上記結論を左右しないというべきである。
懲戒処分に理由があったとしても、処分が重すぎるということで無効とされています。
処分の相当性の問題は、本当に難しいですね。
裁判になった場合にいかなる判決となるのか、事前に予測することがとても難しいです。
ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。