不当労働行為129(ユアサ商事事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員の継続雇用後の再雇用拒否等を議題とする団交申入れに応じなかったことと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

ユアサ商事事件(中労委平成27年6月17日・労判1121号93頁)

【事案の概要】

本件は、Xユニオンが、Y社に対し、A1組合員の継続雇用後の再雇用拒否等を議題として団交を申し入れたところ、Y社が、A1を再雇用を拒否した事実はないこと、5回にわたって団交に応じ、説明を尽くしてきたこと等を理由に本件団交申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、東京都労委に救済申立てを行った事案である。

同労委は、申立てを棄却したので、本件再審査を申し立てた。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。
→初審命令を維持

【命令のポイント】

1 組合は、5回の団体交渉を通じ一貫して、高年法の趣旨に関する組合の解釈、つまり、65歳までの雇用を確保することが原則であるとの主張を主要な根拠として、A1の契約更新を求めていた。高年法の解釈と運用については、会社は、第2回団体交渉において、65歳までの雇用を義務づけるものではないという見解を示し、以後その見解を変えることはなく、この点についても両者の考え方は平行線をたどっていた。当時、高年法については、65歳までの雇用確保を必ずしも義務づけるものではなく、高年法の趣旨に沿った実質的な運用を求めるというものであり、その旨は、組合も団体交渉で述べていた。したがって、A1の契約更新の可否を判断するに当たり、高年法の解釈と運用に関して、上記のように会社と組合との見解が相違したとしても、そのことをもって、会社の対応を不相当であると断じることはできない状況であった

2 こうした団体交渉の状況に鑑みれば、組合が、能力評価の不相当性や高年法の趣旨を踏まえてA1の契約更新を要求した点は、組合と会社の間で更に交渉を重ねても、それ以上進展する見込みがない段階に至っており、少なくとも第5回団体交渉の時点で、会社と組合の間の団体交渉は行き詰まりに達していたといわざるを得ない。

ここで注意すべきなのは、会社としては、団体交渉のあまりにも早期の段階で、「これ以上交渉しても平行線である」と判断してしまうことは避けるべきである、ということです。

平行線をたどっていると思われても、それでも一定の回数を重ねることには意味があると考え、団体交渉に応じるべきだと考えます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。