おはようございます。
今日は、休職期間満了による自然退職の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
日本電気事件(東京地裁平成27年7月29日・労経速2259号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社に雇用され、業務外の傷病により休職し、就業規則の定めに基づき休職期間満了により退職を告知されたXが、休職期間満了時において就労が可能であったと主張して、休職期間満了後の賃金及び賞与、遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 本件休職命令は、解雇の猶予が目的であり、就業規則において復職の要件とされている「休職の事由が消滅」とは、XとY社の労働契約における債務の本旨に従った履行の提供がある場合をいい、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合、又は当初軽易作業に就かせればほどなく従前の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合をいうと解される。また、労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供することができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った労務の提供があると解するのが相当である(片山組事件最高裁判決参照)。
2 ・・・Xの従前の業務である予算管理の業務は、対人交渉の比較的少ない部署であるが、指導を要する事項について上司とのコミュニケーションが成立しない精神状態で、かつ、不穏な行動により周囲に不安を与えている状態では、同部署においても就労可能とは認め難い。
したがって、本件休職期間満了時において、Xが従前の職務である予算管理業務を通常の程度に行える健康状態、又は当初軽易作業に就かせればほどなく当該職務を通常の程度に行える健康状態になっていたとは認められない。
復職の可否については、多分に事実認定に依拠しているため、判断の有効性に関する予測可能性が極めて低いと言えます。
もっとも、これは労働事件の多くのケースがそうであるため、復職の可否に限ったことではありませんが・・。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。