おはようございます。
今日は、学習塾講師の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
市進事件(東京地裁平成27年6月30日・労経速2257号16頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結し、Y社経営の学習塾で講師として稼働していたところ、年齢を理由として雇止めされたAと、能力を理由として雇止めされたBが、いずれの雇止めも無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の地位の確認並びに雇用契約に基づく給与及び遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
【判例のポイント】
1 50歳不更新制度は、同制度を支える社会的事実が存在しないのに50歳を超えて雇用契約を更新しないこととするものであるから、定年制度との異同や、雇用対策法との関係について検討するまでもなく、合理性のある制度とは到底認められないし、社会的相当性も到底認められないものといわざるを得ない。
学習塾等の経営会社が生徒にとって魅力ある授業を求め、魅力ある授業をできない塾講師について雇用を継続しないこと自体には問題がないとしても、それを実際の基準として具体化する方法とその適用の在り方は慎重に検討されなければならず、50歳不更新制度のように、一律に50歳をもって理想的な授業ができなくなると決めつけることはできないのであって、かかる一律の基準には合理性も社会的相当性も認められず、これは、解雇であれば解雇権濫用に当たるものというべきである。
2 Bについては、生徒に「授業がわかりやすい」などと感じさせるには不足があり、授業の進め方等に改善すべき点があったことや、生徒からその旨のクレームがあったこと、E教室長から何回かアドバイスをしたこと等が一応は認められるものの、Y社において、これが喫緊の課題として認識され、重大事としての対応がとられるほどの状態であったと認めることはできないから、この点をもって、Bを雇止めにすることに合理性があるとするY社の主張はたやすく採用することができない。
・・・Y社は、様々な事情を挙げて、本件B雇止めには合理性がある旨主張するが、いずれも合理性を認めるには不十分であり、また、これらの不十分な事情を総合しても十分な合理性を認めることはできないから、本件B雇止めについて合理性を認めることはできない。・・・したがって、本件B雇止めは、解雇であれば解雇権濫用に当たるというべきである。
50歳不更新制度に合理性が認められないことは争いがないところです。
会社としては、労務管理をもう少し上手いことやらなければいけません。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。