おはようございます。
今日は、営業所閉鎖による合意解約ないし整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
オクダソカべ事件(札幌地裁平成27年1月20日・労判1120号90頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、Y社に対し、平成25年6月分の給与の未払分+遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求認容
【判例のポイント】
1 同僚であるC作成の本件提案書の内容の了承をもって、Xが、退職という生活に重大な影響を及ぼす事項にかかる意思表示を行ったと認めることは困難であるといわざる得ない。
・・・Y社は、Xが、平成25年5月末までに、Cに対して引継ぎを行ったと主張する。しかしながら、仮にそのような事実があったとしても、退職についてY社からの具体的な提示がなされていない中で、Xにおいて、Y社から示された条件によっては退職に応じることもあり得るとの前提のもとで行動していたと考えることもでき、上記の判断を左右するほどの事情とはいえない。
2 Y社は、A営業所の閉鎖に伴うX及びCの転勤を指示したが、両名はこれを断ってきたことから、最終的な手段として本件解雇を行ったと主張する。しかしながら、B所長が転勤の可能性について行ってきた行動は、平成20年6月頃の話し合いの際の確認的なものや、Cを通じての打診にすぎず、これをXに対する転勤の指示や勧奨と評価することはできないから、上記Y社の主張はその前提を欠くといわざるを得ない。
3 また、Y社は、A営業所の閉鎖問題については、平成21年からの経緯があり、長年にわたって経理を担当してきたXに対して丁寧な説明は必要ではなく、手続の妥当性を欠くことはないと主張するが、当裁判所が、手続の妥当性に見出している問題点は、上記のとおり、解雇の回避に向けたXとの直接の協議の欠如や、本件回答後にY社の方から積極的に行動を取らなかった点であって、これらの点については、XがA営業所の状況を熟知していたとしても、手続の不当性が治癒されることにはならない。
4 以上のとおり、本件解雇については、Xとの直接の協議を欠き、正式な転勤命令を出すなどの措置も怠った点にXの解雇の回避に向けた努力の不十分さがあり、その点や本件解雇通知に至る経緯にはY社のXに対する不誠実な対応も見受けられ、また、Y社において全社的な人員整理の必要性はなかったのであるから、最終的にXとCの2名のうちXに本件解雇通知をした人選について相応の理由があると考えられることを考慮しても、本件解雇が「やむを得ない事業上の都合による」ものであるということはできない。
解雇する際の途中のプロセスを軽視することは避けなければなりません。
本件のような整理解雇事案では、一層慎重に手続を進める必要があります。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。