Monthly Archives: 12月 2015

本の紹介508 カエルを食べてしまえ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

当事務所は、明日から1月3日まで冬季休暇をいただきます。

顧問先会社様は、明日以降も栗田の携帯電話にご連絡いただければ、通常通り対応いたします。

今日は本の紹介です。
カエルを食べてしまえ!  新版

有名なブライアン・トレーシーさんの少し前の本です。

「カエル」とは、「一番大きく重要なこと」を指します。

背表紙には、こう書かれています。

なぜ人はどうでもいいことから先にやってしまうのだろう?

時間に追われる日々において、いかに成果をあげるかについて書かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功するために最も有効なのは、何を優先させるべきかを見きわめることである。毎日、少し時間をとって、何にもじゃまされないところで静かに考えよう。リラックスしてストレスやプレッシャーのない状態で、自分の仕事や活動のことだけを考えてみるのだ。静かに考えをめぐらすことで、素晴らしいひらめきやアイデアが得られるはずだし、それによって多大な時間が節約できるだろう。あなたの生き方や仕事のしかたを変える突破口が開けることも多いだろう。」(57頁)

毎日、気づけば時間に追われている、という方は少なくないはずです。

意識して「考える時間」をつくらなければ、いつまでたっても、時間に追われる生活から抜け出せません。

私は、毎朝6時頃に事務所に来て、仕事をするのですが、この朝の2~3時間が「考える時間」となっています。

電車通勤をしている方などは、通勤時間の使い方を変えるだけで大きく習慣が変わります。

是非、みなさん、日常生活の小さなところから変えてみてはいかがでしょうか。

賃金105(槇町ビルヂング事件)

おはようございます。

今日は、労使慣行に基づく退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。

槇町ビルヂング事件(東京地裁平成27年6月23日・労経速2258号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において稼働した後、退職したXらが、Y社には従業員に退職金を支払う労使慣行が存在すると主張して、Y社に対し、それぞれ、本件労使慣行に基づく退職金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 そもそも、労使慣行については、①労使慣行が長期間にわたって反復継続し、②当該労使慣行に対し労使双方が明示的に異議をとどめず、③当該労使慣行が労使双方に、特に使用者側で当該労働条件について決定権又は裁量権を有する者に規範として認識されていることを要する

2 退職金の支払に関する労使慣行が成立している場合には、退職金の支払について定めた就業規則、労働協約、労働契約等の成文規範がないにもかかわらず、当該労使慣行を原因として退職金請求権という具体的な法的権利が発生することになるのであるから、単に一時期退職金が複数の従業員に支払われていたに過ぎない事例等と区別して、権利発生の原因事実の存否を適切に判断し得るように、その外延を明確にする必要がある。かかる見地からすると、退職金の支給基準について、具体的な数値まで全て認識していることを要するかどうかはともかくとして、退職金が「一定の基準」により算出され、支払われているという認識があるに過ぎないのでは、労使慣行の成立要件として甚だ不十分といわざるを得ず、勤続年数に比例した退職金が支払われるといった程度の認識でも十分とはいえないと解される

3 以上の次第であって、本件では、Y社において従業員に退職金を支払う旨の本件労使慣行が存在し、規範として認識されていると認めることはできない。従業員に退職金が支払われた例が散見され、退職金が相応の金額に上ることもあったにしても、これはあくまでも代表者の裁量的判断に基づく処遇であったとみるのが相当である。

労使慣行に関してわかりやすく説明してくれています。

規範を見る限り、ハードルがかなり高いことがよくわかりますね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介507 あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら

今の日本の状態を知るにはとてもよい本です。

さまざまな数値が掲載されており、今後日本がどのように進んでいくのかがよくわかります。

この本を読んで「このままではまずい」と思わない人はいないのではないでしょうか。

1度読んでおいたほうがいい本です。おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

所有ということで、私の立場で言える端的な変化は、成功者やお金持ちのタイプが変わったことだ。5年、10年前までは、所有した人がお金持ちの代表的なタイプだった。邸宅を持ち、別荘を持ち、高級車を所有し、会社を所有した。会社には社員がいた。所有を重ねて、成功者が生まれた。しかし、いまは所有しない、身軽な人が成功し、お金持ちになっていく。お金持ちのタイプが変わってきているのだ。」(148頁)

同感です。

あえてできるだけモノを所有しないと考える方って、以前よりも増えてきている気がします。

典型例は、マイホームですかね。

あえて家は持たないという選択をする人、いますよね。

所有することのメリットとデメリットやリスクを考えたときに、あえて所有しないと判断するわけです。

これは良い悪い、正しい間違っているという話ではなく、完全に価値観の問題です。

これまで当たり前とされてきたことの逆を行く価値観かもしれませんが、持つことによる制約や負担、持たないことの身軽さを考えると、できるだけモノを持たないということは十分に意味のある選択だと個人的には思っています。

みなさんはいかがでしょうか。

解雇192(K社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、経歴詐称等を理由とする労働者に対する解雇、損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

K社事件(東京地裁平成27年6月2日・労経速2257号3頁)

【事案の概要】

本件本訴事件は、平成25年12月からY社で稼働していたところ、経歴能力の詐称等を理由として平成26年4月25日限りで解雇されたXが、本件解雇は解雇権の濫用として無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金・遅延損害金の支払を求め、さらには、本件解雇後3か月分の賃金合計180万円+遅延損害金の支払を求めた。

一方、本件反訴事件は、Y社が、Xは職歴、システムエンジニアとしての能力及び日本語の能力を詐称してY社を欺罔しY社を誤解させて雇用契約を締結させたものであり、これは詐欺に当たるところ、Y社はXに支払った賃金合計230万4885円のほか、Xに代わり業務を行う者の派遣を受けて支払った2か月分の派遣料合計244万2825円とXに支払った2ヶ月分の賃金120万円との差額124万2825円の損害を受けたと主張して、不法行為による損害賠償として前記230万4885円と124万2825円の合計354万7710円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xの請求をいずれも棄却する。

Xは、Y社に対し、74万8600円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 企業において、使用者は、労働者を雇用して、個々の労働者の能力を適切に把握し、その適性等を勘案して労働力を適切に配置した上で、業務上の目標達成を図るところ、この労使関係は、相互の信頼関係を基礎とする継続的契約関係であるから、使用者は、労働力の評価に直接関わる事項や企業秩序の維持に関係する事項について必要かつ合理的な範囲で申告を求め、あるいは確認をすることが認められ、これに対し、労働者は、使用者による全人格的判断の一資料である自己の経歴等について虚偽の事実を述べたり、真実を秘匿してその判断を誤らせることがないように留意すべき信義則上の義務を負うものと解するのが相当である
そうすると、労働者による経歴等の詐称は、かかる信義則上の義務に反する行為であるといえるが、経歴等の詐称が解雇事由として認められるか否かについては、使用者が当該労働者のどのような経歴等を採用に当たり重視したのか、また、これと対応して、詐称された経歴等の内容、詐称の程度及びその詐称にようr企業秩序への危険の程度等を総合的に判断する必要がある

2 そもそも雇用関係は、仕事の完成に対し報酬が支払われる請負関係とは異なり、労働者が使用者の指揮命令下において業務に従事し、この労働力の提供に対し使用者が賃金を支払うことを本質とするものであり、使用者は、個々の労働者の能力を適切に把握し、その適性等を勘案して労働力を適切に配置した上で、指揮命令等を通じて業務上の目標達成や労働者の能力向上を図るべき立場にある。
そうすると、労働者が、その労働力の評価に直接関わる事項や企業秩序の維持に関係する事項について必要かつ合理的な範囲で申告を求められ、あるいは確認をされたのに対し、事実と異なる申告をして採用された場合には、使用者は、当該労働者を懲戒したり解雇したりすることがあり得るし、労働者が指揮命令等に従わない場合にも同様であるとしても、こういった労働者の言動が直ちに不法行為を構成し、当該労働者に支払われた賃金が全て不法行為と相当因果関係のある損害になるものと解するのは相当ではない
また、使用者が業務上の目標とした仕事について労働者の能力不足の故に不測の支出を要した場合であっても、当該支出をもって不法行為による損害とするのは相当ではない。労働者が、前記のように申告を求められ、あるいは確認をされたのに対し、事実と異なる申告をするにとどまらず、より積極的に当該申告を前提に賃金の上乗せを求めたり何らかの支出を働きかけるなどした場合に、これが詐欺という違法な権利侵害として不法行為を構成するに至り、上乗せした賃金等が不法行為と相当因果関係のある損害になるものと解するのが相当である

丁寧に一般論を説明してくれています。

経歴詐称の事案において、非常に参考になる裁判例ですね。

是非、参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介506 数こそ質なり(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
数こそ質なり 「人の10倍の手術数」の心臓外科医が実践するプロの極意 (角川書店単行本)

著者は、心臓血管外科医で埼玉医科大学教授の方です。

元ローソン社長、現サントリー社長の新浪剛史さんの弟さんです。

兄弟の対談も掲載されています。

人の10倍の手術数」を誇る著者のすごさがこの本から伝わってきます。

脳神経外科医の福島先生と同じくすごいドクターですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

多くの手術をしているほど、手術に臨む際にどういうやり方ができるかという選択肢が広がる。前で書いたことにもつながるが、年間二十例や三十例くらいの手術しかしていない医師と、年間三百例の手術をしている医師との差はそうしたところでついてくる。医師のなかにも、夜はできるだけ定時にあがりたいし週末は好きなことをやって羽を伸ばしたいと考えている人もいるだろう。そういうことを優先的に考えているのなら、絶対にできないのが心臓外科医という仕事である。私たちの仕事にゴールはない。」(85~86頁)

誰かを助ける、誰かを守るとは、そういうことなのです。

毎日定時に帰宅し、週末は趣味をしながら、人の10倍の手術などできるわけがありません。

この本の著者に限らず、一流は、みなワークライフアンバランスです。

労働基準法が適用される方以外は、とにかくハードワークを続け、人よりも多くの場数を踏み、1日も早く一人前になろうと努力するのが普通です。

プロとはそういうものです。

誰に言われるのでもなく、強い覚悟と高い志を持って仕事に臨む人だけが選ばれ続けるのだと確信しています。

有期労働契約59(市進事件)

おはようございます。

今日は、学習塾講師の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

市進事件(東京地裁平成27年6月30日・労経速2257号16頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結し、Y社経営の学習塾で講師として稼働していたところ、年齢を理由として雇止めされたAと、能力を理由として雇止めされたBが、いずれの雇止めも無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の地位の確認並びに雇用契約に基づく給与及び遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 50歳不更新制度は、同制度を支える社会的事実が存在しないのに50歳を超えて雇用契約を更新しないこととするものであるから、定年制度との異同や、雇用対策法との関係について検討するまでもなく、合理性のある制度とは到底認められないし、社会的相当性も到底認められないものといわざるを得ない
学習塾等の経営会社が生徒にとって魅力ある授業を求め、魅力ある授業をできない塾講師について雇用を継続しないこと自体には問題がないとしても、それを実際の基準として具体化する方法とその適用の在り方は慎重に検討されなければならず、50歳不更新制度のように、一律に50歳をもって理想的な授業ができなくなると決めつけることはできないのであって、かかる一律の基準には合理性も社会的相当性も認められず、これは、解雇であれば解雇権濫用に当たるものというべきである

2 Bについては、生徒に「授業がわかりやすい」などと感じさせるには不足があり、授業の進め方等に改善すべき点があったことや、生徒からその旨のクレームがあったこと、E教室長から何回かアドバイスをしたこと等が一応は認められるものの、Y社において、これが喫緊の課題として認識され、重大事としての対応がとられるほどの状態であったと認めることはできないから、この点をもって、Bを雇止めにすることに合理性があるとするY社の主張はたやすく採用することができない
・・・Y社は、様々な事情を挙げて、本件B雇止めには合理性がある旨主張するが、いずれも合理性を認めるには不十分であり、また、これらの不十分な事情を総合しても十分な合理性を認めることはできないから、本件B雇止めについて合理性を認めることはできない。・・・したがって、本件B雇止めは、解雇であれば解雇権濫用に当たるというべきである。

50歳不更新制度に合理性が認められないことは争いがないところです。

会社としては、労務管理をもう少し上手いことやらなければいけません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介505 斎藤一人の道は開ける(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
斎藤一人の道は開ける (PHP文庫)

斎藤一人さんに関する本です。

久しぶりに読んでみましたが、学ぶべき点が多いですね。

ファンが多いのも頷けます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕は自分より優れた人間に出会うたびに、批判的な目で分析し、アラさがしをしてきたような気がする。一人さんが言ってくれたように、『負けん気が強い』といえば元気よさそうだけれど、そこにはたぶん嫉妬や劣等感ってやつも混じっている。たとえば、『あいつは自分より勉強や仕事ができる』とか、『自分より頭がよさそうだ』なんて思いながら、その劣等感を誤魔化すために、どこかに欠点はないかとさがす。そしてその欠点を見つけて安心する。これじゃ伸びるわけがない。さがさなければいけないのは、反対にその人の優れたところだったのだ。そして、それをさっさと自分のものにしろと一人さんは言う。」(145~146頁)

こういうことを素直に言える人って素晴らしいと思います。

探さなければいけないのは、他人の欠点ではなく、その人の優れたところなのです。

特に成長著しい人やうまくいっている人を前にすると、嫉妬や劣等感から無意識のうちに、その人の悪いところ探しをしてしまうのです。

そんなことをしていても今置かれている状況は変わらないのです。

いいところはいいところと素直に評価し、しっかり盗み、真似するのです。

そこからしか先へは進めません。

解雇191(オクダソカべ事件)

おはようございます。

今日は、営業所閉鎖による合意解約ないし整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

オクダソカべ事件(札幌地裁平成27年1月20日・労判1120号90頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、Y社に対し、平成25年6月分の給与の未払分+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 同僚であるC作成の本件提案書の内容の了承をもって、Xが、退職という生活に重大な影響を及ぼす事項にかかる意思表示を行ったと認めることは困難であるといわざる得ない。
・・・Y社は、Xが、平成25年5月末までに、Cに対して引継ぎを行ったと主張する。しかしながら、仮にそのような事実があったとしても、退職についてY社からの具体的な提示がなされていない中で、Xにおいて、Y社から示された条件によっては退職に応じることもあり得るとの前提のもとで行動していたと考えることもでき、上記の判断を左右するほどの事情とはいえない。

2 Y社は、A営業所の閉鎖に伴うX及びCの転勤を指示したが、両名はこれを断ってきたことから、最終的な手段として本件解雇を行ったと主張する。しかしながら、B所長が転勤の可能性について行ってきた行動は、平成20年6月頃の話し合いの際の確認的なものや、Cを通じての打診にすぎず、これをXに対する転勤の指示や勧奨と評価することはできないから、上記Y社の主張はその前提を欠くといわざるを得ない。

3 また、Y社は、A営業所の閉鎖問題については、平成21年からの経緯があり、長年にわたって経理を担当してきたXに対して丁寧な説明は必要ではなく、手続の妥当性を欠くことはないと主張するが、当裁判所が、手続の妥当性に見出している問題点は、上記のとおり、解雇の回避に向けたXとの直接の協議の欠如や、本件回答後にY社の方から積極的に行動を取らなかった点であって、これらの点については、XがA営業所の状況を熟知していたとしても、手続の不当性が治癒されることにはならない

4 以上のとおり、本件解雇については、Xとの直接の協議を欠き、正式な転勤命令を出すなどの措置も怠った点にXの解雇の回避に向けた努力の不十分さがあり、その点や本件解雇通知に至る経緯にはY社のXに対する不誠実な対応も見受けられ、また、Y社において全社的な人員整理の必要性はなかったのであるから、最終的にXとCの2名のうちXに本件解雇通知をした人選について相応の理由があると考えられることを考慮しても、本件解雇が「やむを得ない事業上の都合による」ものであるということはできない

解雇する際の途中のプロセスを軽視することは避けなければなりません。

本件のような整理解雇事案では、一層慎重に手続を進める必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介504 常識をひっくり返せばメシの種はいくらでもある(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
常識をひっくり返せばメシの種はいくらでもある

残業禁止、ホウレンソウ禁止など、ユニークな経営で知られている未来経営創業者の本です。

著者の本は、これまでにも何冊かこのブログで紹介してきましたが、今回の本もこれまで同様、常識の逆を行く発想、「差別化」の大切さが参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

とにかくお客さんにウケるためには、知恵と手間とコストをかけることが鉄則だ。その労を惜しむようでは、”差別化”していくことなどできるはずがないのだ。そしてそれは、商品づくりに限ったことではない。個人個人が社会人として認められるためにも、また人として成長していくためにも知恵と手間とコストをかけるべきである。特に若いうちは、自分の対応力を高めるためにセミナーに参加したり、いろいろな人に会うことだ。あるいは、本を読むのもいいだろう。とにかく自分を磨いていこうという意識を持ち続けることだ。」(161頁)

自分自身を商品として考えられる人は、既に自分自身の「差別化」を図る準備をしているはずです。

これは意識の問題なのですが、自分が単なる一労働力と捉えているのと商品と捉えているのとではまるで準備のしかたが違うと思うのです。

プロのスポーツ選手がその良い例ではないでしょうか。

プロのスポーツ選手は、みな自分のことを商品として考えているため、オフシーズンにもいわゆる「自分磨き」をするわけです。

自分の価値を少しでも高めていこうと思うからこそ、徹底した準備を重ねることができるのだと思います。

不当労働行為128(日本IBM事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、予定されていた団交議題に組合員6名の解雇問題を追加するよう求める組合の申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるとされた命令を見てみましょう。

日本IBM事件(中労委平成27年6月17日・労判1119号93頁)

【事案の概要】

本件は、予定されていた団交議題に組合員6名の解雇問題を追加するよう求める組合の申入れに応じなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、9.21団体交渉において、組合による・・・要求書の趣旨説明や抗議に対して一応の対応をしているものの、その内容は、具体的な説明を行わないまま結論のみを述べるものであったり、抽象的かつ同一の内容は、具体的な説明を行わないまま結論のみを述べるものであったり、抽象的かつ同一の内容の説明を繰り返すものであったということができ、また、Aら6名が自主退職を選択するかどうかについて重要な要素である解雇理由や自主退職の場合の条件についても具体的に明らかにせず、A4ら6名に対する解雇予告通知問題については、そもそも9.21団体交渉における協議対象とはしないとの姿勢に固執していたのであるから、9.21団体交渉において同問題に関する実質的な協議を行うという組合の申入れの目的は達せられていないというべきである。

2 以上によれば、Y社は、組合の指定した9.21団体交渉において、A4ら6名に対する解雇予告通知問題を議題として実質的に協議すべき義務があったにもかかわらず、同問題について実質的な協議を行わず組合の申入れに応じなかったのであるから、このようなY社の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に該当するというべきである。

使用者側がどこまで具体的に回答したらよいのかは、実際のところ、判断が難しい場合があります。

具体的に回答しても特段支障がない場合は問題ありませんが、そうでない場合には、どこまで回答すべきについて検討しなければなりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。