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今日は、最高裁判決確定後の休職命令、休職期間満了による退職が認められた裁判例を見てみましょう。
日本ヒューレット・パッカード事件(東京地裁平成27年5月28日・労経速2254号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であったXが、職場で嫌がらせを受けた等と主張して欠勤を重ねたため、Y社がXを諭旨退職処分にしたが、当該諭旨退職処分が無効であることが平成24年4月27日の最高裁判所の判決により確定したため、Xが復職を求めたところ、Y社が、Xの心身の不調を理由にXの就労申出を拒絶し、Xに対し、平成25年1月11日付けで休職を命じ、さらに、平成26年11月14日、休職期間が満了することとなる同月30日付けでXの退職の手続をとる旨通知したことから、Xが、Y社に対し、①上記休職を命ずる命令の無効確認、②労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、③Y社がXの就労を拒絶している期間中労働契約に基づきY社がXに対し支払うべき賃金及び賞与並びに遅延損害金の各支払、④平成27年2月分以降の賃金及び遅延損害金の支払、⑤平成27年6月以降の賞与及び遅延損害金の支払、⑥不当な就労申出の拒絶及び違法な本件休職命令に係る不法行為に基づく慰謝料及び遅延損害金の支払を各求めた事案である。
【裁判所の判断】
Xの訴えのうち、Y社がXに対し平成25年1月11日に命じた休職命令が無効であることの確認を求める請求に係る部分を却下する。
Xのその余の請求をいずれも棄却する。
【判例のポイント】
1 Xは、平成24年4月に本件最高裁判決が出された後、Y社に対し、復職を求めていたのであるから、本件休職命令が発せられた平成25年1月11日の時点において、Xには就労の意思があり、本件労働契約に基づき就労する旨の申出をしていたことが明らかである。したがって、同日の時点において、Xが本件労働契約の債務の本旨に従った履行をすることができる状態にあったのであれば、Y社が本件休職命令を発し、その履行を拒絶したことは、Y社による受領拒絶となり、かつ、その履行に必要な被告の協力が得られない結果、Xの債務が履行不能になったということもできるから、Xは、賃金請求権を失わない。そして、本件休職命令は本件就業規則所定の要件を欠くことになるから、その休職期間が満了したことを前提とするXの自然退職も認められない。
2 本件において、そもそもY社が主張するようなXの精神的な不調の存在が認められないのであれば、特段の事情がない限り、Xは復職を申し出ることにより、債務の本旨に従った履行の提供をしたものと認めることができる。また、仮に精神的な不調の存在によりXが従前の職場において労務の提供を十分にすることができない状況にあると認められる場合であっても、本件労働契約において職種や業務内容が特定されていたことを認めるに足りる証拠はないから、Xの能力、経験、地位、Y社の企業規模、Y社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らしてXが配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができるときは、なお、債務の本旨に従った履行の提供があったものと認められる余地がある(最高裁平成10年4月9日判決)。
3 ・・・これらの事実にかんがみると、本件休職命令が出された平成25年1月当時において、Xには、妄想性障害の疑いがあり、休職して治療することを必要とするような精神的な不調が認められる状況にあったことを推認することができる。
4 Xの請求のうち、本件休職命令が無効であることの確認を求める請求は、過去の事実の確認を求めるものであって、本件休職命令が無効であることを前提とする現在の権利関係の確認や、当該現在の権利関係に基づく給付請求によるべきであるから(現にXは、本件において、これらの確認及び給付請求をしている。)、確認の訴えの利益を欠くものである。
復職の可否が問題となる場合、労働者の主治医の判断と産業医の判断が異なることがあるわけです。
その場合、どちらの判断が適切かを巡り労使双方から主張立証がなされることになります。
過去の裁判例を読んでいると、裁判所がどのような点を重視しているのかがわかってきます。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。