Monthly Archives: 10月 2015

不当労働行為123(本能寺文化会館事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、再雇用時の業務変更と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

本能寺文化会館事件(京都府労委平成27年3月3日・労判1115号92頁)

【事案の概要】

本件は、備品管理室長であった組合員Xに対し、定年退職後の継続雇用の業務としてパーキング管理を提示したことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 組合らは、Xが本館及び西館から完全に独立した駐車場管理室での一人勤務となり、本館ロビーの通行も禁止され、他の従業員との接触を断たれたため、組合活動上の不利益を被っていると主張する。
確かに勤務時間中の他の従業員との接触の機会は減少したかもしれないが、接触の機会が絶たれたわけではなく、勤務時間外も含めれば、他の従業員との接触に大きな支障が生じているとはいいがたい。また、組合らからは、本件処分により、機関の会議や情報宣伝活動等具体的な組合活動について何らかの支障が生じたとの主張や立証はない
したがって、組合活動上の不利益取扱いであるとまでは認められない。

2 以上、検討したところによれば、本件処分は不利益取扱いに当たるとまではいえない。組合らは、本件処分はXの自負と誇りを傷つけるものであるとも主張しており、従来Xは継続して本館及び西館外に位置していることやX以外に継続雇用制度を適用された者が定年時と引き続き同じ業務に従事し同等の肩書を得ていることから、Xが、本件処分により自負と誇りを傷つけられたと感じたことがうかがえなくはない。しかしながら、単に本人の主観的な感情のみをもって不利益取扱いとはいいがたく、本件の審査に顕れた主張、立証をもってしては、本件処分に未だ客観的に労組法7条1号の不利益取扱いに当たると判断し得る不利益性があるということはできないので、本件処分は労組法7条1号の「解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること」に該当すると認めるには足りない。

定年退職後の継続雇用における業務内容に変更があった事案です。

不当労働行為として争われるのは、非組合員と組合員とで扱いが異なり、かつ、その違いに合理的理由が認められない場合です。

差別的な取扱いだと疑われないように気を付けましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介484 ぼくの命は言葉とともにある(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ぼくの命は言葉とともにある (9歳で失明、18歳で聴力も失ったぼくが東大教授となり、考えてきたこと)

著者は、東京大学の教授の方です。

9歳で失明し、18歳で聴力を失った著者が考える「幸福」「人生」の意味がまとめられています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

個性の追求はもちろん大事ではありますが、そうした考え方には近現代の社会によってつくり出された価値観が影響している部分がかなりあって、本当は一人ひとりの人間の「自分らしさ」など、さほどたいしたものではないようにも感じるのです。私たちの個々の違いはそれほどたいしたものではない。それよりも人間として生きていること自体が第一に重要なことなのではないでしょうか。だから、命を与えられているということに対して、私たちはもっと謙虚になるべきだと思うのです。」(68~69頁)

なかなかこういうことを考える機会ってないですよね。

命を与えられているということに対して、もっと謙虚になるべきだと。

著者が言うからこそ意味があるのだと思います。

当たり前だと思っていること自体にもっと感謝すべきであるということに気づかされます。

忙しい毎日の中で、忘れてしまいがちですが、ふとした瞬間、こういうことを思い出せるようにしておきたいです。

不当労働行為122(R社(雇止め)事件)

おはようございます。

今日は、有期雇用の組合員2名に対する雇止めと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

R社(雇止め)事件(大阪府労委平成27年4月17日・労判1115号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xらを契約期間満了をもって雇止めしたことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

なお、会社は、雇用契約更新の可否を、①契約期間満了時の業務量、②従事している業務の進捗状況、③有期契約従業員の能力、業務成績、勤務態度、④会社の経営状況を総合的に考慮して判断したものであると説明した文書を送付した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 ・・・これらのことからすると、両組合員が期間満了後の雇用を期待することについては、一定の合理性が認められ、有期雇用契約であるから期間満了に伴い当然に契約を終了するということはできず、従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情が必要である。

2 ・・・就業規則に会社の命令等に違反しないこと、また、業務上の指示及び計画を無視しないこととの規定があるにもかかわらず、X3組合員は、配車担当者から気に入らない車両や出勤時間を指示されるとこれを変更させ、希望どおりに休日が変更されないと変な時間の有休を取得する旨述べて有休を取得するとともに忙しいんで電話してくるなよ等と上司に対し粗暴な発言を行い、休み明けの早朝の出勤を指示されると半日有休を使うと言って話し合いの余地なく一方的に電話を切り、これについて同日分会長からの電話で出勤時間を午前5時に変更させ、休日明けは早朝出勤できないなどと言っているのであるから、同組合員は、会社の業務上の指示に従わず、会社の計画を無視しているといえ、配車が混乱するとの会社の主張は首肯できる

3 以上のことからすると、①X3組合員の勤務態度が著しく不良であり、改善の期待ができないと判断したことについて理由があるといえ、加えて、②彦根支店では、減車方針に沿ってパート・ドライバーを減員する必要があり、現に減員していったといえるのであるから、X3組合員について、雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情が存するといえる。

4 以上を総合すると、本件雇止めは、両組合員の勤務態度と減車に伴うパート・ドライバー減員の必要性等を総合的に考慮してなされたといえるのであるから、従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情が存している上、手続面で不合理な点は認められず、また、組合員であるが故になされたと認めることはできないのであるから、労働組合法7条1号に該当する不当労働行為であるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

解雇や雇止めの合理的理由を認定してもらうためには、上記命令のポイント2のような事情をいかに立証するかにかかっています。

日頃から業務記録をとる習慣をつけることから始めることをおすすめします。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介483 「愛情説法」走る!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
「愛情説法」走る! (生活人新書)

著者は、薬師寺の住職の方です。

以前、著者の講演を聴く機会があり、その際に本を買いました。

すべては「よっぽどの縁」によりつながっているということが記憶に残っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、さまざまなところに出かけて行きます。そのとき訪れた先がうまくいっている会社か、あるいはいい学校であるか、またはいい家であるかどうかが一目でおおよそわかってしまうようになりました。その尺度が『挨拶』です。『挨拶は人としての基本で、それがきちんとできないような人は何をやってもだめだ』と昔から耳にタコができるほど言われてきました。」(8頁)

私の師匠高田好胤管長は、『仏教の教養などは自分で勉強しなさい』と言われ、ほとんど教えてくださいませんでした。そのかわり、口が酸っぱくなるほど繰り返し言われたことが、『挨拶ができない者は、仕事も修業もできない』という言葉でした。」(17頁)

著者の意見に賛成です。

挨拶をした際、ちゃんとした挨拶ができない人に会うと、「この人、大丈夫?」と思ってしまいます。

逆に元気よく挨拶されるととても気持ちがいいですよね。

そういう人は、ちゃんとした教育を受けてきたのだろうな、と思います。

是非、みなさん、人に会った際は、相手よりも先に元気よく挨拶をしてみましょう。

相手も自分も気持ちがいいですよ。

不当労働行為121(三幸自動車事件)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合員の解雇を無効とする都労委救済命令の取消訴訟に関する裁判例を見てみましょう。

三幸自動車事件(東京地裁平成27年1月19日・労判1115号5頁)

【事案の概要】

Y社においてタクシー乗務員として稼働するAは、X組合に加入したことをY社に対して公然化した上で、団体交渉に出席し、ホームページに記事を掲載したり、ビラを配布したりして組合加入の呼びかけなどを行っていたところ、就業時間中に許可なく労働組合活動をしたこと、ホームページへの記事の掲載による会社の機密漏洩、虚偽の内容のビラ配布による名誉毀損及びY社役員に対する暴行を理由に、平成23年9月16日付けでY社を解雇された。

X組合は、本件解雇は、Y社が組合及びその活動を嫌悪し、反組合的言動を繰り返した上でAを不当に解雇することによりY社から組合を排除しようとした不当労働行為であるとして、東京都労働委員会に対し、①本件解雇を撤回し、Aを原職に復職させ、本件解雇の翌日から復職までの間の賃金相当額を支払うこと、②謝罪文を交付及び掲示することを求めて救済申立てをしたところ、平成25年7月2日、都労委は、本件解雇はAが組合員であること及び労働組合の正当な行為をしたことを理由とした不利益取扱いに該当するとともに、Aを排除することによりY社における組合の影響力を排除しようとした支配介入にも該当するとして、本件解雇の撤回、Aの原職への復職、本件解雇の翌日から原職復職までの間の賃金相当額の支払並びに本件解雇が不当労働行為と認定されたこと及び今後このような行為を繰り返さないよう留意することを記載した文書の組合への交付及びY社営業所内での10日間の掲示を命ずる命令を発した。

本件は、Y社が、本件命令を不服としてその取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇は、前記のとおり組合及び組合活動等を嫌悪するY社が、Y社における唯一の組合員であるAに対して行ったものであり、前記のとおり、第2回団体交渉への出席や組合活動としてのホームページへの掲載行為及び組合ビラの作成・配布行為について解雇を相当するに足りる重大な非違性が認められないところ、平成23年4月30日のAの腹部と本部長の腹部との接触も、前記でみたとおりの程度・態様にとどまるものであったにもかかわらず、これをもってAによる暴行行為と認定した上で、上記の団体交渉への出席やホームページへの掲載及び組合活動と併せて解雇理由として本件解雇に及んでいることからすれば、本件解雇は、実質的には、AがY社における唯一の組合員であり、団体交渉等の組合活動を積極的に行っていたことを理由に行われたものと推認するのが相当である。

2 そうすると、本件解雇は、Aが労働組合の組合員であり、労働組合の正当な行為をしたことを理由にY社がAに対してした不利益な取扱いであると認めることができるから、労働組合法7条1号の不利益取扱いに該当するとともに、本件解雇によりY社の唯一の組合員であるAが解雇された結果、Y社が組合の関与を受けなくなる点で、同条3号の支配介入にも該当すると認めることができる。

解雇事由としては不十分という判断です。

特に会社としては組合敵視をしているわけでなくても、解雇に合理的理由が認められない場合には、その裏返しとして、不当労働行為と判断されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介482 私はどうして販売外交に成功したか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
私はどうして販売外交に成功したか (Life & business series)

1964年に第1刷発行の本です。

50年前の本ですが、今読んでも全く気になりません。

やはりいつ時代でも通用する基本的な考え方があるのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ゼネラル・エレクトリック社の副社長ハリー・エルリッヒャーは、世界でも有数な大購買者の立場にある一人だが、この人が、『最近、ある購買部門の会合で、セールスマンが売込みに失敗する最大の原因はどこにあるか、ということを調べるために、投票による世論調査をしたことがあります。ところが、この投票の結果は、三分の一までがセールスマンがおしゃべりをし過ぎるためだということになっていました。これは大いに注意をしなければならないことです』といっていた。」(101~102頁)

何度かこのブログでも同じようなことが書かれている書籍を紹介してきました。

要するに、「しゃべり過ぎは失敗のもと」ということです。

肝に銘じなければいけません。

これは、セールスマンに限ったことではなく、あらゆるサービス業に共通する点です。

ボールを持ちすぎないことです。

ボールが自分のところに来たら、不必要にボールをキープせず、パスをすることです。

顧客は、セールスマンの得意げなリフティングなんて見たいとは思っていないのです。

顧客は、みな自分でボールを触っていたいのですから。

配転・出向・転籍27(大和証券ほか事件)

おはようございます。

今日は、転籍先での嫌がらせについての転籍元の責任に関する裁判例を見てみましょう。

大和証券ほか事件(大阪地裁平成27年4月24日・ジュリ1484号4頁)

【事案の概要】

本件は、Y1社からY2社に出向して同社で営業業務に従事していたXが、Y2社への転籍同意書に署名押印したが転籍の合意は成立していない又は無効であるなどとして、Y1社に対し、労働契約に基づき、労働者たる権利を有する地位にあることの確認及び転籍後の平成25年4月以降の賃金の支払を求めるとともに、Y2社に出向した後、上司から様々な嫌がらせを受けて精神的損害を被ったが、これらの行為は、被告らが共謀して行ったものであるとして、共同不法行為に基づき、Y1社及びY2社に対し、連帯して、慰謝料200万円及び遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y1及びY2はXに対し連帯して150万円+遅延損害金を支払え

その余の請求を棄却する

【判例のポイント】

1 本件転籍は、平成25年4月1日にXがY1社を退職するとともにY2社に入社することを内容とするものであるから、Bはその旨の申込みをし、Xはこれを了承して同内容の合意が成立したことになる。・・・Xが退職願などの書類を作成しなかったことは本件転籍の効力を妨げるものではない

2 BはY2社を代理して意思表示を行う権限を有していたと認められるので、BとXとの間に成立した合意の効力は、Y1社だけでなく、Y2社に対しても効果が帰属する。Xが本件同意書に署名押印したことにより、本件転籍につき三者間で合意が成立した。

3 Y2が、旧第二営業部室内にXの席を設けるなどしてXを隔離したこと、約1年にわたり新規顧客開拓業務に専従させ、1日100件訪問するよう指示したこと、Xの営業活動により取引を希望した者の口座開設を拒否したことは、Xに対する嫌がらせであり、不法行為に該当する。

4 BはY2社でのXの業務内容につき報告を受けており、Y2社のXに対する対応を認識していた。Xが本件転籍までY1社の社員であり、新規顧客開拓業務への専従についてはBからもXに説明していたことからすれば、Y2社が上記嫌がらせをY1社と何ら相談することなく行っていたとは考え難い。
Y1社らは、XはY1社入社以来様々な業務に従事したが期待される役割を果たせず、勤務態度等にも問題があり、営業業務への配属後も同様の結果であったなどと主張しており、Y1社にはXを退職に追い込む動機がある。
以上によれば、Y2社はY1社の了解を得た上でXに対する嫌がらせを行っていた

珍しい裁判例ですね。

上記判例のポイント4の認定はどうなんでしょうかね・・・。担当する裁判官により判断が異なる部分だと思われます。

一応このような判断もあり得るということは理解しておきましょう。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介481 売れない時代に売る新常識(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
売れない時代に売る新常識

5年程前に出版された本ですが、今読み返しても古さを感じさせません。

著者は元アップル・ジャパンのシニアマーケティングプロデューサーの方です。

マーケティングに関する基本的な考え方がわかる本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

踊らされる側に甘んじるか、踊らす側に回るかの違いだ。…絶対に負けないカードは存在しないし、ゲームに勝ち続けることも不可能だ。だが間違いなくいえることは、未来を創り出す姿勢を放棄すれば、時の流れに巻き込まれフォロワーへと転落する可能性が高くなる、ということだ。」(279~280頁)

きっと終わりのない進歩や競争に、いつしか疲れてしまうのでしょうね。

進化し続けることを楽しめるかどうか、結局、ここがポイントになってくるような気がします。

決して「楽」ではない状況を「楽しむ」ことができるかどうか。

いかがでしょうか。

経済情勢や身の回りの環境に自己の意に反し踊らされ、不平不満を言ったところで状況は変わらないことを知りながらも、不平不満を言うしか方法がない・・・こんな人生を楽しむことは私にはできません。

自分に力をつけることでしか現状を打開することはできません。

不平不満を言う時間があったら、自分に少しでも力をつけるために努力をするべきです。

不当労働行為120(平和タクシー事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、労働委員会の救済命令の裁量と私法規範との整合性に関する争点を見てみましょう。

平和タクシー事件(広島高裁平成26年9月10日・ジュリ1485号4頁)

【事案の概要】

Y労働委員会は、平成24年4月、タクシー事業を営むX社が、その従業員でZ組合の組合員であるAら7名に対して乗務停止などを内容とする本件懲戒処分をしたことが不当労働行為であると認め、懲戒処分を取り消し、給与相当額の本件バックペイを命じる本件救済命令を発した。

一方、Aらは、裁判所に対して、懲戒処分がなければ得られたはずの給与相当額の支払等を求める訴訟を提起しており、1審判決は平成24年8月、控訴審判決は平成25年3月に言い渡され、確定した。

判決は、本件懲戒処分を無効とした上で、Aらの給与相当額の支払いをX社に命じていたところ、X社は、判決の命じた金額の全額を弁済した。なお、その額は、Y労働委員会の命じた本件バックペイの元本額を下回っていた。

その間、X社は、本件救済命令の取消しを求めて訴えを提起した。1審は、本件バックペイの支払を命じた部分について、民事訴訟で確定した額を超える部分を取り消し、超えない部分については訴えを却下した。

【裁判所の判断】

原判決を取り消し、X社の本件救済命令の取消請求を棄却

【判例のポイント】

1 救済命令の目的は、不当労働行為によって損なわれた労働者の個人的・財産的価値の回復を図ることだけにあるのではなく、組合を含めた正常な集団的労使関係秩序の迅速な回復・確保を図ることにもあること、したがって、救済命令におけるバックペイの賦課は上記目的に基づく公法上の義務であって、民事判決が命じる私法上の義務とは異なるとされていること等を考慮すると、確定した民事判決に基づいて私法上の義務が履行されたとしても、それによって直ちに公法上の義務を課した救済命令の目的が達せられたとはいえず、・・・取消しを求める訴えの利益は失われない

2 救済命令の趣旨・目的は、使用者の不当労働行為により生じた事実上の状態を是正することにより、正常な集団的労使関係の迅速な回復・確保を図ることにあると解されるから、救済命令の内容は、私法的な意味での原状回復と同義とは解されず、私法上の権利関係に従った回復措置に限定されるものではない
ただ、救済内容が、実質的に私法上の権利義務の実現と共通する面を有する場合には、その救済の結果について私法上の権利義務との調整が可能であるか、そのかい離の程度が救済命令の目的からして許容される範囲内にある必要はあるというべきである。

上記判例のポイント1は、知識として押さえておく必要があります。

その前提として、どのような事案において、今回のような問題が起こるのかを理解しなければ、使える知識にはなりませんね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介480 リーダーは背中で語れ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
リーダーは背中で語れ

株式会社ネクシィーズ近藤社長の本です。

スーパーセールスマンであった近藤社長が大切にしていることが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『孫さん、あのNTTと本気で闘うつまりなんですか。相手はある意味国力ですよ』
お上に歯向かったりしたら絶対に叩かれますよ、という話です。そのときに孫さんが平然と言い放った言葉がすごかった。
『近藤君、男が戦いを挑むんだったら、NTTくらいがちょうどいいんだよ。それ以下に向かっていったら弱い者いじめと言うんだ』
僕はそれ聞いた瞬間、全身に鳥肌が立ちました。完全に心を鷲づかみにされた。」(162~163頁)

「それ以下に向かっていったら弱い者いじめと言うんだ」

孫さんのこの言葉だけでノックアウトですね。

トップがどこを目指すのかによって、会社の性格は決まります。

現状維持を目指す会社と天下一を目指す会社で、会社の性格が同じはずがありません。

みなさんの会社のトップは、どちらですか?