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今日は、国立大学法人教職員への給与減額支給措置に関する裁判例を見てみましょう。
京都大学事件(京都地裁平成27年5月7日・労経速2252号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社との間でそれぞれ雇用契約を締結し、Y社の教職員として勤務していたXらが、平成24年8月1日から平成26年3月31日までの期間につき一定の割合で教職員の給与を減額することを内容とする「国立大学法人京都大学教職員の給与の臨時特例に関する規程」は、就業規則を不利益に変更するものであって無効であると主張し、Y社に対し、雇用契約に基づく給与請求として、それぞれ同規程により減額された俸給月額、期末手当及び勤勉手当並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 Xらは、Xらの給与水準がそもそも国家公務員や私立大学教員と比較して低い、本件給与減額支給措置によって、教育研究にも支障が生じていることなどを主張するが、Y社においては、教職員の給与減額という必要性に直面しながらも、教職員の負担をできる限り緩和するような対応が講じられており、かえって、国立大学法人の中でも最も優遇された状況にあるともいえるのであって、Xらに上記のような問題が生じているとしても、それは本件給与減額支給措置による不利益の程度の埒外の問題であるといわざるを得ない。
2 Y社においては、教職員のみならず、本件給与減額支給措置と同一の期間において、役員減額が、教職員の最も高い区分の減額率と等しい4.35%の減額率をもって実施されているのであり、本件給与減額支給措置が、教職員のみに負担を課すものではないことも、本件特例規程の相当性を基礎づけるものとなり得るというべきである。
3 本件特例規程は、教職員の給与が、社会一般の情勢に適合したものとなるように、又は国家公務員の例に準拠するものとなるように一定の減額を実施すべき高度の必要性が存したことによって制定及び改定されたものであって、これによってXらを含む教職員に生ずる不利益も、特に他の公立大学法人と比較すれば限定的なものにとどまっていることなどに照らせば、それ自体相当性を有するというべきものであり、また、その制定及び改定に当たっては、職員組合との十分な団体交渉が繰り返されているのであって、これらの事情を総合的にみると、本件特例規程による給与規程の変更は、合理的なものであると認めるのが相当である。
賃金の減額をする際、従業員から同意を得られない場合には、上記のような賃金減額の合理性を裏付けるいくつかのポイントを押さえる必要があります。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。