Monthly Archives: 10月 2015

賃金103(Y社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、退職金減額決定は有効であり、未払退職金はないとされた裁判例を見てみましょう。

Y社事件(東京地裁平成27年7月17日・労経速2253号18頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、労働契約に基づき、Y社に対し、退職金未払部分352万余+遅延損害金の支払を求める事案である。

Xは平成元年7月、Y社との間で労働契約を締結した。Y社は、平成22年9月、Xに対し、懲戒解雇の意思表示をした。

Y社は、平成22年10月、Y社の退職金規程に従って計算したXの退職金の額である528万円余を3分の1に減額して支払う旨の決定をし、退職金176万円余から源泉所得税を控除した額を支払った。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件退職金規程は、4条以降で退職金の額を一義的に算定することができる計算方法を具体的に規定していることに照らせば、Y社における退職金が賃金の後払いとしての性格を有するというべきである。もっとも、同規程13条が懲戒解雇の場合の退職金の不支給を定めていることに照らせば、Y社における退職金には功労報償的性格をも有することは否定できない
したがって、原則として、Y社は、本件退職金規程により算定される退職金の支払義務を負うが、懲戒解雇による退職の場合で、かつ、退職者において長年の勤労の功を減殺し、又は抹消する程度に背信的な事情がある場合には、退職金を減額し、又はこれを支給しないことが許されるというべきである。

2 これを本件についてみると、Xは、度重なる遅刻をした上、上司に対し合理的な理由なく反抗的な態度をとった上、乱暴な言葉遣いで誹謗中傷やおよそ趣旨の不明瞭な反論をするなど、職場環境に悪影響を与えるような言動を繰り返したというのである。
これらの遅刻の期間、回数、上司に対する反抗的態度の内容、またこれらの言動が本件戒告処分及び本件出勤停止処分によってもなお改まる兆候が見られなかったこと等に照らせば、Xの勤務態度は、長年の勤労の功を抹消する程度に背信的なものであったと評価するほかない
よって、本件退職金減額決定は有効であり、未払い退職金はないというべきである。

非常にオーソドックスな退職金請求事件です。

実務においては、どれだけ退職金を減額するかの判断をしなければなりません。

背信性がそれほど高くないのに、大幅は退職金の減額や不支給とすると、会社側が一部敗訴する場合もありますので、注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介489 ローマ法王に米を食べさせた男(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? (講談社+α新書)

以前、ドラマ放送されていた「ナポレオンの村」の原案本です。

公務員である著者が、いかにして過疎の村を救ったのかが書かれています。

著者は、アイデアを形にする術を知っている人ですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

地域再生の視察のために、羽咋市にも役人や政治家、企業の方が何千人と来ています。それで、なんとか研修会って座学で勉強会をして、『いやあ、羽咋の試みは本当にいいですねぇ』などとほめてくれます。けれどその後に地域住民のために行動するか? しないですよ。やってみようともしない。会議のための会議ではなく、行動するための会議、お願いですからしてください。・・・地域活性化をテーマに多くの人に来ていただき、『感動しました』との言葉をよくいただきます。ありがたいです。でも、申し訳ないけれど、感動はいらないですよ。感動よりも行動です。地域の人のために動いてくださいと。」(240~241頁)

・・・なのに一億総評論家みたいになって、国が間違っている、行政がおかしいと、自分が何もしないことを棚に上げて、周りの批判ばかりしている人がどんなに多いことか。・・・そうやって批判や非難だけをくり返す人は、やがて人格まで腐ってくる。自滅しますよ。」(241~242頁)

「感動よりも行動」と著者は言っています。

このブログでも行動に移すことがどれだけ重要か、成功する人とそうでない人の違いはどこにあるのかについて書かれている本をいくつも紹介してきました。

もはや成功する方法はわかっているのです。

それでもなお、成功しないのはなぜか?

方法を知っているだけで行動に移さないからです。

また、行動し続けないからです。

人間は弱いのです。

最初に決めたことをやり続けることは本当に大変です。

だから、多くの人は、結果・成果が出る前に努力を途中でやめてしまうのです。

結果がなかなか出ないことに我慢ならず、途中で投げ出してしまうのです。

繰り返しますが、もはや成功する方法はわかっています。

あとは、やるかやらないか。

やり続けるか、途中で投げ出すか。

それだけです。

セクハラ・パワハラ14(公立八鹿病院組合ほか事件)

おはようございます。

今日は、上司らのパワハラ等によりうつ病発症・自殺と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

公立八鹿病院組合ほか事件(広島高裁松江支部平成27年3月18日・労判1118号25頁)

【事案の概要】

本件の原審は、Xの遺族が、Y社らに対し、病院に医師として勤務していたXが、同病院における過重労働や上司らのパワーハラスメントにより、遅くとも平成19年12月上旬には、うつ病を発症し、自殺に至ったとして、債務不履行又は不法行為に基づき、合計2億1220万3317円+遅延損害金を求めた事案である。

原判決は、Y社に対し、約8000万円+遅延損害金の支払を命じた。

これに対し、双方が各敗訴部分を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約1億円+遅延損害金の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 本件病院において、Xが従事していた業務は、それ自体、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となる程度の長時間労働を強いられていた上、質的にも医師免許取得から3年目(研修医の2年間を除くと専門医として1年目)で、整形外科医としては大学病院で6か月の勤務経験しかなく、市井の総合病院における診療に携わって1、2か月目というXの経歴を前提とした場合、相当過重なものであったばかりか、AやBによるパワハラを継続的に受けていたことが加わり、これらが重層的かつ相乗的に作用して一層過酷な状況に陥ったものと評価される。

2 Xは、本件病院赴任後、本件病院の関係者に悩みを打ち明けたり、前任者のように派遣元の大学病院に対し転属を願い出るといった対応をしていないのであるが、使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関する労働環境等に十分注意を払うべき安全配慮義務を負っており、労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、体調の異変等について労働者本人からの積極的な申告は期待し難いものであって、このことを踏まえた上で、必要に応じた業務軽減などの労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきであるから(最高裁平成26年3月24日判決)、前任者がそうであったからといって、Xが本件疾病を発症する以前に、責任感から自ら職務を放棄したり、転属を願い出る等しなかったことを捉えて、Xの落ち度ということはできない。

3 公共団体や企業等に雇用される労働者の性格が多様なものであり、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の加重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものというべきであるから、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、被害者の性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を心因的要因としてしんしゃくすることはできないというべきである(最高裁平成12年3月24日判決)。

使用者は、上記判例のポイント2を十分理解しておかなければなりません。

従業員から申し出がない場合であっても、様子がおかしかったり、欠勤が多い場合には、業務軽減等の配慮をする必要があります。

言うは易しですが、訴訟になれば、このような判断がなされますので注意しましょう。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介488 「本物」になるクセづけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「本物」になるクセづけ

故・船井幸雄さんの10年前の本です。

本物になるために日常生活においていかなる「クセ」=「習慣」を身につければよいのかが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人の能力を決めるのは、学歴でも、学生時代の成績でもありません。学ぶことに対するモチベーションこそが、能力の高低を最終的に分けるといえるでしょう。」(51頁)

私もその通りだと思います。

学ぶこと、仕事で成果をあげることに対するモチベーションを持ち続けられるかどうか。

多くの人は、最初はフレッシュですから、学ぶことや自分の仕事に情熱を持って取り組むのですが、

1年、2年と経ってくると、だんだん最初の熱意をキープできなくなってくるのです。

一時的に努力をすることはできますが、365日、努力をし続けられる人は、やはりモチベーションが他の人とは違いますね。

「人の2倍働く、3倍努力する」

これは、私が影ながら尊敬している脳外科医の福島孝徳先生の言葉です。

いつもこの言葉を忘れることなく、日々、努力しています。

賃金102(京都大学事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、国立大学法人教職員への給与減額支給措置に関する裁判例を見てみましょう。

京都大学事件(京都地裁平成27年5月7日・労経速2252号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間でそれぞれ雇用契約を締結し、Y社の教職員として勤務していたXらが、平成24年8月1日から平成26年3月31日までの期間につき一定の割合で教職員の給与を減額することを内容とする「国立大学法人京都大学教職員の給与の臨時特例に関する規程」は、就業規則を不利益に変更するものであって無効であると主張し、Y社に対し、雇用契約に基づく給与請求として、それぞれ同規程により減額された俸給月額、期末手当及び勤勉手当並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xらは、Xらの給与水準がそもそも国家公務員や私立大学教員と比較して低い、本件給与減額支給措置によって、教育研究にも支障が生じていることなどを主張するが、Y社においては、教職員の給与減額という必要性に直面しながらも、教職員の負担をできる限り緩和するような対応が講じられており、かえって、国立大学法人の中でも最も優遇された状況にあるともいえるのであって、Xらに上記のような問題が生じているとしても、それは本件給与減額支給措置による不利益の程度の埒外の問題であるといわざるを得ない

2 Y社においては、教職員のみならず、本件給与減額支給措置と同一の期間において、役員減額が、教職員の最も高い区分の減額率と等しい4.35%の減額率をもって実施されているのであり、本件給与減額支給措置が、教職員のみに負担を課すものではないことも、本件特例規程の相当性を基礎づけるものとなり得るというべきである。

3 本件特例規程は、教職員の給与が、社会一般の情勢に適合したものとなるように、又は国家公務員の例に準拠するものとなるように一定の減額を実施すべき高度の必要性が存したことによって制定及び改定されたものであって、これによってXらを含む教職員に生ずる不利益も、特に他の公立大学法人と比較すれば限定的なものにとどまっていることなどに照らせば、それ自体相当性を有するというべきものであり、また、その制定及び改定に当たっては、職員組合との十分な団体交渉が繰り返されているのであって、これらの事情を総合的にみると、本件特例規程による給与規程の変更は、合理的なものであると認めるのが相当である。

賃金の減額をする際、従業員から同意を得られない場合には、上記のような賃金減額の合理性を裏付けるいくつかのポイントを押さえる必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介487 グーグル検索だけでお金持ちになる方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
グーグル検索だけでお金持ちになる方法-貧乏人が激怒する2020年のマネー戦略

午堂さんの本です。

表紙には「経済格差は検索格差!」と書かれています。

どういう意味かは読めばわかります。

本の内容というよりは、著者のバイタリティに刺激を受けています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

平凡なワードで検索すれば、平凡な結果しか出てこない。しかし非凡なワードで検索すれば、非凡な結果が出てくる可能性が高くなる。・・・検索において重要なのは、『自分の生き方を変革させる』ために役立つ(であろうと思われる)キーワードの組み合わせを考えることです。」(61頁)

いかなるキーワードで検索するかにより、知り得る情報は大きく異なることを私たちは経験上知っています。

何を知っているかよりも、どのようにリサーチするかのほうがよほど重要なわけです。

著者の意見では、この検索のしかたが、最終的には経済格差につながるというわけです。

大袈裟ととらえる人もいると思いますが、私はそうは思いません。

結局すべては日々の習慣の問題なので、情報の入手方法に長けている人は、そうでない人に比べて、あらゆる面で合理的、効率的な判断をしているのではないでしょうか。

もっといい方法はないか、と常に考えながら生活をすることが、自分を高めることにつながるのだと思います。

解雇185(学校法人早稲田大学(解雇)事件)

おはようございます。

今日は、教授に対する適格性欠如を理由とする解雇の有効性と反訴損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人早稲田大学(解雇)事件(東京地裁平成26年12月24日・労判1116号86頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の設置するA大学の教授であったところ、茨城県つくば市が行った風力発電機設置事業に関与したが、当該事業において莫大な損害が発生し、Y社がその一部を負担することとなった。

被告は、XがA大学教授としての適格性を欠くとして、Xを解雇した。

本件本訴は、Xが、本件解雇が無効であると主張して、地位確認と解雇後の賃金の支払を求めるとともに、本件解雇や本件解雇まで命じられた長期間の自宅待機が違法であると主張して、慰謝料の支払を求める事案である。

本件反訴は、Y社が、Xには、Y社がつくば市に対して支払った賠償額の8割について責任があると主張して、Xに対し、損害賠償の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

原告の本訴請求は棄却する。

XはY社に対し、2239万5712円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、上記の義務を履行しなかったのであり、本件風力発電機が稼働しなかったことについての責任が認められる。
Xは、Y社が本件契約において、免責条項を入れるなり、保険を掛けるなりしていれば、Y社に損害が生じなかったと主張する。契約条項については、後述のとおり、Y社の管理の甘さにも問題がある。しかしながら、Xは、学外提携リスクマネジメント委員会の委員長として、本件契約について契約研究時審査に掛けるかどうかを検討していたところ、同委員会の委員には弁護士も含まれていたにもかかわらず、弁護士以外の委員のみの意見を聞いて、問題がないと判断し、委員長としては委員会の開催申請を行わなかったのであり、本件契約において被告が負担すべき損害の範囲が限定されるように対処されなかったことについて、原告にも責任の一端はある。
また、本件契約のような契約によって生じた損害をカバーする保険があるかどうか明らかではないし、例えあったとしても、巨額の税金が無駄となったことについて、Y社が社会的に非難されていたことに変わりはないのであって、Y社に損害が生じなければよいという問題ではない
本件風力発電機が稼働しないことで、Y社が多額の賠償責任を負ったということは広く報道され、A大学の研究機関としての信用が大きく毀損されたことは明らかである。
Xは、自己の義務を履行しなかったことによって、Y社に多額の損害を与え、Y社の信用を毀損したのであり、しかも、そのことについて、何ら反省の態度を見せていないことからすれば、XにA大学の教員としての適格性が欠けているとの教授会、理事会の判断は相当なものと認められる。

2 Xは、本件契約におけるY社の履行補助者であって、Y社に損害賠償金の負担が生じないように本件契約における義務を履行すべき義務を負っていたのであるが、上記のとおり、本件契約において要求されていた義務を履行せず、本件損害賠償金の支払を生じさせたのであるから、Y社との関係でも、履行補助者としての義務に違反したと認められ、Xは、本件損害賠償金の支払によってY社に生じた損害につき、責任が認められる

3 そこで、本件損害賠償金の支払によってY社に生じた損害についてのXとY社との間の負担割合について検討する。
本件契約の締結を承認した理事会においては、本件契約によって生じるリスクの有無についても、申請者から独立した者によるリスクのチェックや法的観点からのリスクのチェックがされたのかについても審議されていない。この当時、Y社内においては、そのようなチェックをする体制は構築されておらず、実際に行われたのは、申請当事者であるXがリスクマネジメント委員会の委員長として、研究契約時審査に掛ける必要がないと判断したことのみであった
このように、外部の者から業務を請け負う際に生じるリスクに対する管理体制が構築されていなかったことが、本件契約の業務委託料が1750万円であるにもかかわらず、Y社がつくば市に対して、1億円を超える損害賠償金の支払を余儀なくされた大きな原因であるというべきである。
そうすると、本件契約から生じるリスクに対する管理体制を構築していなかったY社に損害の多くの部分を負担させるのが相当である。
したがって、本件損害賠償金のうちXに負担させるべき額は、本件損害金の元本の4分の1である2239万5712円をもって相当額と認める。

会社から従業員に対して損害賠償請求をする場合、この裁判例のような議論をすることになります。

訴えられた従業員としては、支払うべき損害額を抑えるために、会社に損害拡大を防止する体制の不十分さ等を主張することになります。

参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介486 勉強について、私たちの考え方と方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
勉強について、私たちの考え方と方法

船井総研小山社長(当時)と棋士の羽生さんとの共著です。

著者の組合せがとてもおもしろいですね。

本の内容は、「勉強」にとどまることなく、仕事やプライベートに関する考え方に及んでいます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は将棋をやっていて、闘争心はあまり必要ないんじゃないかと思うんです。もちろん対局ですから、戦いの場には違いないんですけど、手を考えていく時に、闘争する必要はないと。むしろその場面がどういう状況で、その次にいかに自然な選択ができるか、流れに沿っているかなどの方が大事なので。すごく勝ちたいとか相手を打ち負かそうという気持ちは、もちろんまったくないとダメなんでしょうけど、将棋を指す上であまり重要ではないと思います。」(132~133頁)

闘争心剥き出しにしてくる弁護士がいる中で、このような考え方は本当に新鮮です。

だいたい闘争心剥き出しという状態は、頭に血が上っており、冷静な判断ができていません。

大きな声で相手を威圧しようと試み、偏った正義感に基づき、自己正当性を主張するという姿勢ですね。

最初の数秒感、声の大きさや威圧感に驚きますが、次第に慣れてしまうものです。

よく聞いてみると、たいしたことは主張していないこともあります。単に大きな声で小さなことを誇張しているだけなのです。

闘争心は外に出すものではなく、内に秘めておくくらいがちょうどいいのかもしれません。

派遣労働22(日本精工(外国人派遣労働者)事件)

おはようございます。

今日は、派遣労働者12名による派遣先会社への地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本精工(外国人派遣労働者)事件(東京高裁平成25年10月24日・労判1116号76頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社から派遣先会社であるY社に対し、派遣元会社に雇用され、平成18年11月10日以前は、業務処理請負の従事者として、翌11日以降は、労働者派遣の派遣労働者として、Y社の工場等において就業していたXら(帰化者を含む日系ブラジル人)が、Y社と派遣元会社との労働者派遣契約の終了に伴い、Y社の工場における就業を拒否されたことについて、主位的に、(1)派遣元会社と派遣先であるY社との間の契約関係が請負契約であった当時のXら、派遣先会社であるY社及び派遣元会社の三者間の契約関係は、違法な労働者供給であり、XらとY社との間で直接の労働契約関係が成立しており、平成18年11月11日以降、派遣元会社と派遣先会社でありY社との間の契約関係が労働者派遣契約に変更された後も、労働契約関係は変化なく維持されていたから、Xらと派遣先会社であるY社との間に直接の労働契約関係が継続していたというべきであること、(2)そうでないとしても、XらとY社との間には、黙示の労働契約が成立していたというべきこと、(3)(1)及び(2)の労働契約の成立が否定されるとしても、Y社には、派遣法40条の4に基づき、Xらに対する雇用契約申込義務があったというべきであるから、XらとY社との間には当該義務に基づく労働契約が成立していたというべきであることを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに上記労働契約に基づいて平成22年1月以降の月例賃金等の支払を求めるとともに、予備的に、(4)長年にわたりXらの労務提供を受けてきたY社には、Xらに対する条理上の信義則違反等の不法行為が成立すると主張して、Y社に対し、それぞれ200万円の慰謝料等の支払を求めたものである。

原審は、Xらの主位的請求をいずれも棄却し、予備的請求を、50~90万円の限度で認めた。

当事者双方が、それぞれ敗訴部分を不服として控訴した。

【裁判所の判断】

原判決中Y社敗訴部分をいずれも取り消す。

上記各取消部分に係るXらの予備的請求をいずれも棄却する。

Xらの本件控訴をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社は、冨士TRYと労働者派遣契約を締結するまでは、長年にわたり、請負契約の形式を使って実態は労働者派遣としてXらを受け入れてその労務の提供を受けてきたのであり(いわゆる偽装請負)、これは派遣法に違反していたことは明らかである。そして、このようなY社の対応は、当時の派遣法が製造業務について労働者派遣を禁止していたことを考慮したことによるものであると推認されるところである。しかし、Xらは、偽装請負の下においても、継続して冨士各社に雇用され賃金の支払を受けていたのであり、実態が労働者派遣とした場合と比べて、Xらに不利益があったとは認められない
したがって、Y社が偽装請負の下でXらから労務の提供を受けていたことをもって、Xらの権利又は法律上保護された利益が侵害されたものと認めることはできず、Y社に不法行為責任があるということはできない

2 Y社が冨士TRYと労働者派遣契約を締結するに際して、Xらに説明をしなかったとの点は、労働者派遣契約の前後を通じて実態は労働者派遣であることに変わりがなく、また、この点の説明は第一次的には使用者である冨士支社がすべきものである。この点においても、Y社に不法行為責任があると認めることはできない。

3 Y社の藤沢工場で就労していた日本人の派遣労働者が正社員に採用され、日系ブラジル人の派遣労働者が採用されなかったとの事実は認められるが、本件全証拠によるも、日本人と日系ブラジル人との取扱いに上記のような差異が生じた具体的な経緯、理由等は明らかではなく、国籍を理由として差別的取扱いを受けたとまでは認められないから、不法行為が成立するということはできない。

上記判例のポイント1の視点は、是非、参考にしてください。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介485 世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60

ジム・ロジャーズさんの本です。

こういう方が普段どのようなことを考え、どのようなことを大切にしているか、興味があります。

この本には、著者の考えがとてもわかりやすくまとめられています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

行き当たりばったりでお金を使うことは財政破綻につながるだけでなく、人生で何が大切かということを忘れさせてしまいます。今、投資しようと思っているものが本当に価値のあるものなのか。あるいは、その効果が一過性のものなのか。お金を使う前に、そういったことを賢明な頭で考えることこそが重要なのです。」(37頁)

大金持ちの著者が言うのですから、間違いありません。

浪費なのか投資なのかという視点を持ってお金を使っている人って、そんなに多くないような気がします。

なお、ここでいう「投資」は、株や不動産にお金を使うという意味ではなく、自分の価値を高めるためにお金を使う、ということを指します。

プライベートな時間をすべて趣味に使う人もいる中で、将来を見据えて、自分に力をつける努力を続けている人も、事実、いるわけです。

5年後、10年後、その差はもはや埋めようもないほど広がっています。

「自分に投資をする」「自分の価値を高める」という思いを持てるか持てないか、まずはそこだと思います。