おはようございます。
今日は、受動喫煙等に関する安全配慮義務違反が認められないとされた裁判例を見てみましょう。
積水ハウス事件(大阪地裁平成27年2月23日・労経速2248号3頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、①Y社は、Xが勤務先であるY社工場において恒常的に受動喫煙を強いられていたにもかかわらず、受動喫煙対策を講じず、Xを受動喫煙症及び化学物質過敏症に罹患させたと主張して、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、損害賠償金296万2283円及び遅延損害金の支払を、②Y社は、関節リウマチに罹患していたXを、手足の負担がかかる作業に従事させて関節痛や手首、膝等の機能障害を生じさせたと主張して、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、損害賠償金299万9038円の一部である290万円及び遅延損害金の支払を、それぞれ請求した事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 ①Y社が、平成15年の健康増進法(25条)の施行等を受け、同年12月には、本件工場総務部事務所を禁煙とする、総務課及び業務課のある建物内に喫煙所を設ける、各課事務所に併設された休憩所内にビニールの暖簾やカーテン等で仕切られた喫煙スペースを設置する等の分煙措置を採り、その際、従業員らに対し、喫煙は喫煙所や喫煙コーナー等の指定場所で行うよう指示、指導したこと、②Y社は、平成17年8月頃、X、Y社産業医間の面談を経て、Xからミシン室を禁煙にするようにとの申入れを受け、そのt浴後の同年秋頃、ミシン室を禁煙にして同室内に禁煙の張り紙を掲示し、これにより、ミシン室でタバコを吸う者はいなくなったこと、③平成17年8月以前には、総務課及び業務課に所属していた喫煙者の中には、ミシン室で喫煙していた者がいたが、本件工場のほとんどの喫煙者は所定の喫煙所等で喫煙しており、多くの喫煙者が日常的にミシン室で喫煙していたということはなかったこと、・・・以上の諸事情が認められる。
2 そして、これらの諸事情によれば、Y社は、法改正等を踏まえ、Xを含む従業員が本件工場内で受動喫煙状態になることがないよう、Xの申出を受ければ、その都度、相応の受動喫煙防止のための対策を講じてきたものであり、Xが、Y社での勤務において、受動喫煙状態を強いられていたとまでは評することはできないのであって、Y社が受動喫煙対策に関する安全配慮義務に違反したとまでは認めることはできない。
3 ・・・以上のように、Y社は、Xからの申し出を受ける度に、Xとの面談を行うなどして、その希望や健康状態等を聴取し、ときに産業医と相談するなどして、関節リウマチに罹患していたXの身体に配慮し、Xにとって無理がなく、なるべく負担の少ない作業をその都度検討し、Xの了承を得た上で、代替作業の提案等、Xの要望に合致するような作業を提案するなどしてきたものといえる。
以上によれば、Xの関節痛の悪化等につきY社に安全配慮義務違反があったとまでは認めるに至らず、他に、Y社がXの関節痛等に関する安全配慮義務に違反したことを基礎づける事実を認めるに足りる証拠はない。
これまでにも受動喫煙を巡り裁判が起こされてきましたが、ハードルは高いですね。
まして、今回の会社のようにやるべきことをやっている場合には、安全配慮義務を尽くしていると判断されます。
なかなかここまでのことができる会社は多くないと思います。すばらしいですね。