賃金100(サンテレホン事件)

おはようございます。

今日は、東京本社で勤務していた者の賃金不払等の事件につき、大阪地裁から東京地裁への移送が認められた事件について見てみましょう。

サンテレホン事件(大阪地裁平成27年3月25日・労経速2249号3頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社に対し、Y社の事業所で働いていた間の時間外労働に対する未払賃金及び賃金不払等を内容とする債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として基本事件の提起に要した弁護士費用相当額の損害金の支払いを求める事案である。

Y社は、民事訴訟法16条1項又は17条により基本事件を東京地方裁判所に移送すべきである旨主張している。

【裁判所の判断】

東京地方裁判所へ移送する。

【判例のポイント】

1 基本事件においては、本件未払賃金の存否に関し、XにおけるY社の就労実態が主たる争点となることが予想されるところ、Xは、本件雇用契約の期間を通じ、東京本社において就労していたのであるから、Xの就労実態を知る者やXの就労実態に関する検証物で移動が困難なものは、Xが就労していた東京本社ないし東京地方裁判所の管轄区域内に所在すると考えられる一方、一件記録上、大阪地方裁判所の管轄区域内には、Y社を除き、Xの就労実態を知る者や上記のような検証物があることはうかがわれない

2 ・・・加えて、Y社の就業規則には、賃金の支払方法につき、「給与は全額を、原則、通貨にて直接本人に支払うが、本人が希望する場合には、本人が指定する銀行その他金融機関の本人名義預貯金口座へ振り込むことにより、支払うことができる」(給与規程4条1項)とあるほかに特段の定めはなく、相手方の賃金はその指定する銀行口座への振込みにより支払われていたこと、相手方は、大阪地方裁判所の管轄区域内に事務所を有する弁護士を代理人として選任し、基本事件の提起遂行を委任しているが、争点及び証拠の整理は電話会議システムを使用して行うことも可能であることをも併せ考慮すれば、Xの指摘する、Xが一給与所得者にすぎないことやY社の事業規模といった事情を考慮してもなお、基本事件を東京地方裁判所に移送する必要があると認められる。

実務上、管轄裁判所の問題はとても重要ですが、本件のような場合には、やはり東京地裁への移送が認めるのが相当です。

是非、参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。