Monthly Archives: 9月 2015

本の紹介479 孫正義の焦燥(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
孫正義の焦燥 俺はまだ100分の1も成し遂げていない

著者は日経エコロジーの記者です。

孫さんに関する本は多いですが、この本もまた孫さんのすごさを伝えています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日本の大きな企業でも、潰れてはいないけど潰れたも同然の企業があるでしょ。大きいということは、むしろ潰れる可能性があるということですよ。小さくて俊敏な企業より、大きい企業で一時代狂ったらそれは潰れるってことです。」(305頁)

会社や事業の規模が大きくなればなるほど、利益だけでなく損失の規模もまた大きくなります。

そんな当たり前のことをしっかり理解しておくことがどれほど大切か。

誰もが知っている大企業が衰退していく様子をニュースで見るたびに、このことを思い出します。

シンプルですが、本当に重要なことだと思います。

セクハラ・パワハラ13(アンシス・ジャパン事件)

おはようございます。

今日は、心身の健康を損なうことがないよう注意する義務に違反したとして損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

アンシス・ジャパン事件(東京地裁平成27年3月27日・労経速2251号12頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社がXとの労働契約上の義務として負う安全配慮義務又は労働者が労働しやすい職場環境を整える義務を怠った旨を主張し、Y社に対し、民法715条の不法行為責任又は同法415条の債務不履行責任に基づく損害賠償(慰謝料)等として合計700万円を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、50万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 CがXをパワハラで訴えるという出来事が生じたのは、主として、インストールサポートをXとCとの二人体制とした上でXをチームリーダーとする体制が維持されてきたことに起因するものと解されるのであり、人事部においてパワハラの事実はないと判断されたことも踏まえれば、この出来事の発生に関してXに特段の帰責性はないというべきである。
本件のように二人体制で業務を担当する他方の同僚からパワハラで訴えられるという出来事(トラブル)は、同僚との間での対立が非常に大きく、深刻であると解される点で、客観的にみてもXに相当強い心理的負荷を与えたと認めるのが相当であり、X自身、Xをパワハラで訴えたCと一緒に仕事をするのは精神的にも非常に苦痛であり不可能である旨を繰り返しD部長らに訴えているのであるから、Y社は、上記のように強い心理的負荷を与えるようなトラブルの再発を防止し、Xの心理的負荷等が過度に蓄積することがないように適切な対応をとるべきであり、具体的には、X又はCを他部署へ配転してXとCとを業務上完全に分離するか、又は少なくともXとCとの業務上の関わりを極力少なくし、Xに業務の負担が偏ることのない体制をとる必要があったというべきである。

2 ・・・そうすると、D部長が、Xに対し、その心理的負荷等が過度に蓄積することがないように注意して指揮監督権限を行使していたと認めることはできないから、使用者であるY社としても、Y社がXに対して負う注意義務(業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう注意する義務。)を果たしていないと認めざるを得ないというべきである。

3 Y社は、Xに対し、インストールサポートに伴い疲労や心理的負荷等を過度に蓄積してXの心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負っているところ、同義務に違反したものと認められるが、このY社の注意義務違反によりXが心身の健康を損なったものとまでは認められない。しかし、Xは、Cからのパワハラの訴えによって相当強い心理的負荷を受けたと認められるものであり、その後も、Cとの協働は精神的にも無理である旨をD部長らに繰り返し訴えていたものの、この訴えに沿った対応がとられないまま、最終的には、D部長から「この会社を辞めるか、この状況の中でやるべき仕事をやるか。」と言われ、Y社を退職するに至ったとの経緯からすれば、Xが心身の健康を損なったと認められるまでに至っていないからといって直ちにXの損害を否定することはできず、上記の事実経過に照らせば、Y社の注意義務違反によりXが精神的苦痛を被ったことは明らかというべきであるから、かかる精神的損害については50万円をもって慰謝するのが相当である。

上記判例のポイント1は、是非参考にしてください。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介478 成功読書術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
成功読書術 ビジネスに生かす名著の読み方

著者は、元Amazonのバイヤーの方です。

タイトルからすると、読書のしかた、方法論が書かれているように思われますが、ビジネスに生かす名著30選みたいな本です。

いずれの本も誰もが認める名著ばかりです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最善手を見つけることも大切ですが、それよりももっと大切なのが悪手を指さないことです」(128頁)

わずかな差だが、悪い将棋というのは、ときどき勝つことはあっても、トータルでみると負ける率が高くなります。ところが、悪循環といいますか、悪いほうの手を持った人は、いつまでもその手に工夫を凝らす傾向がある」(129頁)

これは、「人間における勝負の研究」(米長邦雄著)の一節です。

将棋だけの話をしているのではないことは誰にでもわかることです。

たまたま勝つことはあるかもしれませんが、悪手は悪手です。

大切なことは、「変なくせ」をつけないことです。

大切にすべき信念からはずれるような仕事のしかたをしないことです。

解雇184(海空運健康保険組合事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、従業員としての資質、能力を欠く等を理由とする解雇を有効と判断した裁判例を見てみましょう。

海空運健康保険組合事件(東京高裁平成27年4月16日・労経速2250号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社が平成24年3月30日に同年4月30日付けでした解雇は、労働契約法16条に照らし無効であるなどと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、平成24年5月から毎月20日限り、月例賃金等相当額(割増賃金を含む。)として44万1718円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、XがY社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認し、Xの賃金請求について、平成24年5月から判決確定の日まで、毎月20日限り38万4100円(割増賃金を除く金額)及び遅延損害金の支払を認容した。

そこで、これを不服としてY社が控訴し、Xが附帯控訴した。

【裁判所の判断】

Y社の控訴に基づき、原判決中Y社敗訴部分を取り消す。

上記取消部分に係るXの請求を棄却する。

Xの附帯控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 ・・・以上の事実経過によれば、Xは、上司の度重なる指導にもかかわらずその勤務姿勢は改善されず、かえって、Xの起こした過誤、事務遅滞のため、上司や他の職員のサポートが必要となり、Y社全体の事務に相当の支障を及ぼす結果となっていたことは否定できないところである
そして、Y社は、本件解雇に至るまで、Xに繰り返し必要な指導をし、また、配置換えを行うなど、Xの解雇を継続させるための努力も尽くしたものとみることができ、Y社が15名ほどの職員しか有しない小規模事業所であり、そのなかで公法人として期待された役割を果たす必要があることに照らすと、Y社がXに対して本件解雇通知書を交付した平成24年3月30日の時点において、Xは、Y社の従業員として必要な資質・能力を欠く状態であり、その改善の見込みも極めて乏しく、Y社が引き続きXを雇用することが困難な状況に至っていたといわざるを得ないから、Xについては、Y社の就業規則25条7号所定の「その他やむを得ない事由があるとき」に該当する事由があると認められる。
そうすると、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、有効であるというべきである。

2 Xは、本件解雇に至るまでY社から懲戒処分を受けたことはなく、このことは、XにはY社の主張するような重大な過誤や事務遅滞はなかったことを示すものであると主張する。
しかし、XがY社から度重なる指導を受けていたことは前記認定のとおりであり、しかも、Xは2回にわたって降格・降級を受けているのであるから、本件解雇に至るまでにY社がXに対して懲戒処分をしたことがないからといって、Xに重大な過誤や事務遅滞がなかったということはできず、Xの上記主張は採用することができない

一審判決も読んでみましたが、もはや現実的には解雇を有効にすることができないのではないかと思ってしまうほどのハードルの高さです。

一般的には、能力不足を理由とする解雇は難しいわけですが、さすがにハードルが高すぎるのでは、と思ってしまいます。

一方、高裁の判断は、一審判決に比べると会社における支障を十分に判断してくれており、納得できるものです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介477 3つの真実(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 連休も終わり、またがんばって仕事をしましょう。

今日は本の紹介です。
3つの真実 人生を変える“愛と幸せと豊かさの秘密”

有名な本なので、すでに読んだことがある方も多いと思います。

小説形式で人生において大切にすべきことを伝えています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『幸せになりたい』と求めるのは、『今は幸せではない』と認めているのと同じじゃ。そして、心の底で認めたものは現実化するのじゃ。つまり、自分のことを幸せではないと認める者には、ますます幸せではない出来事が起きる」(131頁)

人を責めるような気持ちでいると、自分が責められるような出来事が起きてくる。人を喜ばそうとして生きていると、喜ばしい出来事が自分に起きてくる。つまり、君が他人に対して意図していることが、反射されて君自身に返ってくるのじゃ」(140頁)

信じるか信じないかは読み手の自由ですが、思考が現実化するという考え方は、実際、経験した人は共感できるものだと思います。

偶然と片付ける人と必然と考える人の差というのは、思っている以上に大きなものです。

幸せは探すものではなく、感じるものです。

探しているうちは、ずっと不幸せな状態が続くことになります。

今いる状態で、幸せを感じることができれば、探す必要なんてなくなりますね。

不当労働行為119(甲労働者組合事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合に対する情宣活動の差止め等が認められた裁判例を見てみましょう。

甲労働者組合事件(東京地裁平成27年4月23日・労経速2248号12頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y組合の情宣活動により平穏に生活を営む利益(人格権)を侵害されたなどと主張して、Y組合に対し、人格権侵害に基づく妨害排除請求権により、Y組合の行為の差止めを求めるとともに、Y組合の違法な情宣活動により精神的苦痛を被ったなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、損害金275万及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

情宣活動の差止めを認める。

Y組合はXに対し、55万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 ・・・以上の点に照らせば、本件行為は、いかにそれがA社の不当な措置等に関し、Bから納得し得る説明を求める趣旨に出たものであったとしても、元配偶者であり私邸たる本件居宅に居住するにとどまるXにおいて、本件行為を受忍すべき理由はなく、本件行為は、Xに対する関係で、その私邸で平穏な生活を享受するというXの人格権を侵害するものであったといわざるを得ない

2 使用者の代表者であっても、私生活上の権利は尊重されるべきであるから、仮に本件居宅にBが居住していたとしても、私生活の中心なる場である本件居宅において、Y組合がBに対し団体交渉に応じるよう要求し、本件行為を行うことが正当化されるわけではない。まして、本件では、本件居宅にはBは居住しておらず、元配偶者であるXには本件居宅において本件行為を受忍すべき理由はないから、Y組合が主張する事情は、本件行為の違法性を否定する理由となるものではない。それのみならず、使用者であるA社の破産開始決定後になされた本件行為に係る団体交渉の申入れ等の行為(B宛に解雇や労働債権等に関して団体交渉を申し入れる行為)の正当性は、Bが代表者の地位を失い(会社法330条、民法653条1項)、破産財団に関する権限が破産管財人に専属する(破産法78条1項)こととなったことに伴い、そもそも容易に是認し難いし、その実効性にも疑問がある
さらに、本件仮処分決定が効力を生じた後になされた本件行為については、法の定める手続に則ってなされた裁判を無視し、法秩序を蹂躙するものであって、到底容認することができない

3 Y組合は、平成25年10月18日以降、Y組合が本件居宅への訪問行為をしていないことについても指摘するが、Y組合は、繰り返し本件居宅で本件行為に及んでおり、本件行為のなかには、応対に出たXやD弁護士の指摘や意向にもかかわらず行われ、本件仮処分決定後にもなされたものもあること、Y組合が現時点においても本件行為は正当である旨主張し続けていることに照らせば、同日以降、訪問行為が行われていないからといって、差止めの必要性が失われることにはならない

これだけやっても支払う金額は55万円と遅延損害金ですから、まったく抑止力にはなりません。

そういう意味で、組合活動は、威力があるのです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介476 人を信じても、仕事は信じるな!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人を信じても、仕事は信じるな!

株式会社武蔵野の小山社長の本です。

このブログでも何度か紹介したことがあります。

小山社長の本は、いつも、細かい点で経営のヒントを与えてくれます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・まさにマネすることは最高の創造です。マネの効用は他にもあります。マネを繰り返していると、『何をマネするべきか』という見る目、判断力が育ってきます。それだけ感性が鋭くなってくる。いつでも、どこでも『良いやり方があれば、マネする』と狙っているので、普段から『あの人は、どうして成績がいいのか?』『あの会社がうまくいっている秘訣はどこか?』などを見極めようとします。そんな訓練を日々行っていれば、感性が磨かれるのは当然です。」(95頁)

まさに小山社長の仰るとおりです。

真似が得意な人は、日常生活の中で、もはや無意識のレベルで「いいとこ探し」をしているのです。

業種を問わず、成功している例を見ると、成功の要素を見出そうとします。

それをすぐにアレンジして自社に取り入れる。 その繰り返しを日々の生活の中で自然とやっているのです。

「悪いとこ探し」が大得意な社会の中で、そんなことには全く興味を示さず、ひたすら人や会社などの良い面を見つけるくせがついていれば、いやでも成功しますよね。

労働災害84(積水ハウス事件)

おはようございます。

今日は、受動喫煙等に関する安全配慮義務違反が認められないとされた裁判例を見てみましょう。

積水ハウス事件(大阪地裁平成27年2月23日・労経速2248号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社に対し、①Y社は、Xが勤務先であるY社工場において恒常的に受動喫煙を強いられていたにもかかわらず、受動喫煙対策を講じず、Xを受動喫煙症及び化学物質過敏症に罹患させたと主張して、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、損害賠償金296万2283円及び遅延損害金の支払を、②Y社は、関節リウマチに罹患していたXを、手足の負担がかかる作業に従事させて関節痛や手首、膝等の機能障害を生じさせたと主張して、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づき、損害賠償金299万9038円の一部である290万円及び遅延損害金の支払を、それぞれ請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①Y社が、平成15年の健康増進法(25条)の施行等を受け、同年12月には、本件工場総務部事務所を禁煙とする、総務課及び業務課のある建物内に喫煙所を設ける、各課事務所に併設された休憩所内にビニールの暖簾やカーテン等で仕切られた喫煙スペースを設置する等の分煙措置を採り、その際、従業員らに対し、喫煙は喫煙所や喫煙コーナー等の指定場所で行うよう指示、指導したこと、②Y社は、平成17年8月頃、X、Y社産業医間の面談を経て、Xからミシン室を禁煙にするようにとの申入れを受け、そのt浴後の同年秋頃、ミシン室を禁煙にして同室内に禁煙の張り紙を掲示し、これにより、ミシン室でタバコを吸う者はいなくなったこと、③平成17年8月以前には、総務課及び業務課に所属していた喫煙者の中には、ミシン室で喫煙していた者がいたが、本件工場のほとんどの喫煙者は所定の喫煙所等で喫煙しており、多くの喫煙者が日常的にミシン室で喫煙していたということはなかったこと、・・・以上の諸事情が認められる。

2 そして、これらの諸事情によれば、Y社は、法改正等を踏まえ、Xを含む従業員が本件工場内で受動喫煙状態になることがないよう、Xの申出を受ければ、その都度、相応の受動喫煙防止のための対策を講じてきたものであり、Xが、Y社での勤務において、受動喫煙状態を強いられていたとまでは評することはできないのであって、Y社が受動喫煙対策に関する安全配慮義務に違反したとまでは認めることはできない

3 ・・・以上のように、Y社は、Xからの申し出を受ける度に、Xとの面談を行うなどして、その希望や健康状態等を聴取し、ときに産業医と相談するなどして、関節リウマチに罹患していたXの身体に配慮し、Xにとって無理がなく、なるべく負担の少ない作業をその都度検討し、Xの了承を得た上で、代替作業の提案等、Xの要望に合致するような作業を提案するなどしてきたものといえる。
以上によれば、Xの関節痛の悪化等につきY社に安全配慮義務違反があったとまでは認めるに至らず、他に、Y社がXの関節痛等に関する安全配慮義務に違反したことを基礎づける事実を認めるに足りる証拠はない。

これまでにも受動喫煙を巡り裁判が起こされてきましたが、ハードルは高いですね。

まして、今回の会社のようにやるべきことをやっている場合には、安全配慮義務を尽くしていると判断されます。

なかなかここまでのことができる会社は多くないと思います。すばらしいですね。

本の紹介475 決まりかけた人生も180度逆転できる!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
決まりかけた人生も180度逆転できる!: 自分が〝報われる〟働き方 (単行本)

タイトルはともかくとして、よくある感じの自己啓発本です。

特に目新しい内容はありません。

いつも書いていますが、知っているかどうかではなく、やるかやらないかの問題ですね。

当然のことですが、この本を読むだけでは、180度逆転することは不可能です。

実行にうつすことが求められます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

40代になった現在も、私は『自分よりも強い人を味方につけろ』と人からアドバイスされる。成功する人は、皆これをやっているのだ。・・・人と協力して成果を出していくビジネス社会で、一人だけで結果を出そうとしても、うまくいくわけがない。なかなか飛躍のきっかけがつかめないのは、そのあたりを勘違いしているからだ。・・・だから『誰かに助けてもらうこと』をよしとし、『助けてもらえる人』を目指す。そのために『自分が勝つ』ことより、『相手を勝たせること』を重視するのは当然のことだと思う。」(52~53頁)

「助けてもらえる人」を目指す、というのはわかりやすいフレーズですね。

要するに、いざというときに助けてもらえるような、「かわいげのあるやつ」になることが大切です。

みなさんの周りにもいませんか? 目上の力を持っている方にかわいがられている人。

目上の人にかわいがられる人の共通点を是非、観察してみてください。

そういう若者がどんどん上に引っ張り上げられ、徐々に社会で力をつけていくのです。

賃金101 (コンチネンタル・オートモーティブ事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、賃金の支払場所は労働者の労務提供場所であるとして、移送の申立てを認容した裁判例を見てみましょう。

コンチネンタル・オートモーティブ事件(広島高裁平成27年3月17日・労経速2249号9頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社を債務者として広島地方裁判所に申し立てた基本事件(地位保全及び賃金仮払い仮処分命令申立事件)について、Y社が、基本事件の「本案の管轄裁判所」(民事保全法12条1項)は、広島地方裁判所ではなく横浜地方裁判所であると主張して、同裁判所への移送の申立てをしたところ、原決定は、これを認め、基本事件を横浜地方裁判所に移送する旨の決定をしたことから、Xが本件抗告をした事案である。

【裁判所の判断】

抗告棄却

【判例のポイント】

1 賃金を労働者の預貯金口座に振り込む方法により支払うことは、賃金の通貨払いの原則に反するものであるが、労働者がこれに同意するときは、その例外として許容されていることから(労働基準法24条1項ただし書)、前記のXとY社との振込みに関する合意は、上記通貨払いの原則の例外として認められるためにされたものと解される。このように、上記の合意は、特段の事情がない限り、賃金の支払方法についての合意にすぎず、その支払場所(義務履行地)に関する合意を含むものではないと解するのが相当である。本件において、上記特段の事情の主張及び立証はない。

2 賃金の支払場所は、もともと、労働者が労務を提供する場所であるとするのが、その合理的意思に沿うものであると認められることからすると、たとえ、賃金を労働者の預貯金等の口座に振り込む方法が一般的になっていても、労働者の住所地を賃金の支払場所とは考えないのが通常であると解されること、したがって、賃金の支払が預貯金口座に振り込む方法であったとしても、賃金の支払場所は、労働者の労務提供場所とするのが、使用者及び労働者の合理的意思に合致すると解される。仮に、賃金の支払場所につき上記の合意が存在したとは認められないとしても、以上説示したところによれば、民法484条又は商法516条1項の規定を適用する前提を欠くというべきであり、労働者の住所を支払場所とするのは相当ではない。

3 本件においては、Xは、かつてはY社広島事務所において勤務していたが、平成26年1月1日以降Y社本社において勤務していたのであるから、賃金の支払場所は、Y社本社であると認められる。少なくとも、本件支店又はXの住所が賃金の支払場所であると認めることはできない。したがって、賃金の義務履行地を管轄する裁判所は、広島地方裁判所ではなく、Y社本社の所在地を管轄する横浜地方裁判所である。

非常に参考になる判断です。

是非、残業代等の賃金請求事件で管轄が問題となった際には参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。