おはようございます。
今日は、動物施設職員2名に対する配転命令の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
公益財団法人えどがわ環境財団事件(東京地判平成26年11月26日・労判1115号68頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の職員であるX1及びX2が、Y社から平成24年4月1日付でされた配転命令が無効であると主張して、本件配転命令に基づく勤務の義務がないことの確認を求めるとともに、本件配転命令が不法行為に当たると主張して、慰謝料の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
配転命令は無効
慰謝料請求は棄却
【判例のポイント】
1 X1の異動先であるみどりの推進係は、X1の異動後の平成26年まで動物関連事業を分担業務としていなかったため、X1に動物関連事業の業務を担当、調整させるために異動させたとするY社の主張は認められず、また、H事務局長は、X1が若手の職員を取り込んでBを孤立させ、飼育班内の人間関係を悪化させているという誤った認識に基づき本件配転命令を決定したものであり、本件配転命令が自然動物園の人間関係等の改善を目的としたものということもできないから、X1に対する本件配転命令は業務上の必要性を欠くものとして無効である。
2 Xらは、本件配転命令により、職業上の不利益を被ったと主張する。しかしながら、X1がみどりの推進係において担当している業務は、相応のキャリアを持った職員が担当すべきものであって、人格権侵害と評価されるような処遇を受けているとは認められない。また、X2が担当している業務は、X2が担当すべき業務とされている動物飼育であって、職業上の不利益は認められない。
また、Xらの主張する組合活動上の不利益については、組合員が同一の職場に配置されることが保障されているわけではないこと、本件組合の組合員が全員江戸川区内に勤務していることに鑑みると、本件配転命令によって本件組合の組合活動が若干不便になったことは否めないが、それをもって法律上の不利益とは評価できない。
したがって、本件配転命令は違法であるが、損害が認められないため、不法行為に基づく慰謝料請求権は認められない。
本件については、Xらが組合員のため、不当労働行為に該当するのではないかが別途争われています。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。