Daily Archives: 2015年8月11日

配転・出向・転籍24(ジョンソン・エンド・ジョンソン事件)

おはようございます。

今日は、配転に違法はない等として就労義務不存在確認等請求が棄却された裁判例を見てみましょう。

ジョンソン・エンド・ジョンソン事件(東京地裁平成27年2月24日・労経速2246号12頁)

【事案の概要】

Y社の従業員であるXは、平成25年6月1日付で請求の趣旨第1項記載の外勤務に配転され、現在もその職務に従事している。

本件は、Xが、本件配転が無効であると主張して、現在の職務での就労義務がないことの確認を求めるとともに、違法な配転や退職勧奨がないことの確認を求めるとともに、違法な配転や退職勧奨によって精神的苦痛を被ったとして、慰謝料の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・Eが解雇という言葉を出したことは穏当ではないが、第5回面談の内容全体からみれば、Eは、Xが他社に転職して販売戦略等に携わる方がY社内で営業に配置されるよりもXにとって有利であるという退職勧奨の説得の一環として、上記のような発言をしていると認められるのであって、解雇か退職かを二者択一で迫るものではなく、社会的相当性を逸脱した退職勧奨とはいえない

2 本件配転に伴い賃金の減額や通勤上の著しい不便等の具体的な不利益はXに生じていない。Xが現在配置されている営業の業務が、Y社における一般的な営業業務と比べて特に過酷であるという事情も見当たらない。Xは未経験の外勤営業に配置されたこと自体が著しい不利益であると主張するが、Xの主張を前提とすれば、Xをおよそ外勤職に配置できないことと同じになるのであって、採用の限りではない

3 本件配転は、Xが介護休業を取得する予定であることを理由としてされたものとは認められないのであって、育児・介護休業法等違法を主張するXの主張は前提を欠く。また、本件指針は介護休業後に原職に復帰させることが多く行われていることに配慮すべきとしているが、法的義務として原職に復帰させることを定めた規定は見当たらないのであって、介護休業後に営業で復帰させたことが育児・介護休業法等違反に当たるとはいえない

4 以上によれば、本件退職勧奨も本件配転も違法とは認められないので、Xの請求は理由がない。

退職勧奨と配転命令の違法性が争われた事案ですが、いずれも棄却されています。

退職勧奨については、会社側も注意を払いつつ行うものですが、油断をすると違法になりかねないため、常に冷静に対応することが大切ですね。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。