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今日は、諭旨解雇は無効だが普通解雇は有効とされた裁判例を見てみましょう。
X高等学校事件(東京地裁平成27年2月18日・労経速2245号15頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と雇用契約を締結して労務を提供していたXが、Y社がした諭旨解雇及び普通解雇がいずれも無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金請求権に基づく、諭旨解雇後の未払賃金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し、246万3809円+244万3930円に対する遅延損害金を支払え
Xのその余の請求を棄却
【判例のポイント】
1 Y社は、本件非違行為には、都条例18条の6違反の犯罪が成立する旨主張する。しかし、本件非違行為は、本件被疑事実とは、日時・場所及び態様を異にする行為であり、本件諭旨解雇事由における都条例18条の6に違反する行為であると認めることはできない。
2 Y社就業規則72条1項ただし書は、出勤停止以上の懲戒に該当すると判断されるときは、査問のため調査委員会を設ける旨を定める。この点、懲戒が、Y社の懲戒権の発動として行われる不利益な処分であり、これが正当化されるためには、当該懲戒を受ける者に対し、特段の支障なき限り、弁明の機会が与えられる必要があるというべきであり、そのような観点からすれば、Y社就業規則が定める調査委員会の査問は、特段の支障なき限り、Xに対して直接なされることを要求しているものと解するのが自然かつ妥当であると解される。
これを本件についてみると、調査委員会は、本件諭旨解雇に当たり、Xに対する査問を行っておらず、本件諭旨解雇には、Y社就業規則72条1項ただし書が規定する手続違反があるというべきである。・・・加えて、Y社が懲戒処分通知書において、本件諭旨解雇事由における非違行為の内容を明らかにしておらず、本件訴訟で、当初、本件諭旨解雇事由として主張した本件非違行為が、本件被疑事実とは、日時、場所及び態様を異にする行為であったことからすれば、Y社(調査委員会)は、本件諭旨解雇を決定する手続において、本件被疑事実自体を把握しておらず、Xが実際に行った行為を確定しないままに、本件諭旨解雇をしたことが強く推認され、そのことからも、本件諭旨解雇の手続面における相当性を認めることはできないというべきである。
3 ・・・ところで、Xが民法536条2項により、本件諭旨解雇後の賃金を請求するためには、XがY社に対する就労の能力及び意思を保持していることが必要であるところ、Xは、平成25年4月1日から、本件学校とは別の高等学校において、常勤講師として勤務し、平成26年4月からは、常勤専任講師として勤務しており、同校の社会保険にも加入していることが認められ、このことからすれば、Xは、Y社が主張するとおり、平成25年4月1日の時点で、Y社に対する就労の意思と能力を保持していたと認めることはできない。
懲戒解雇につき、適正手続違反を認定した裁判例です。 参考になります。
また、上記判例のポイント3は、解雇後、別の会社に就職した場合に問題となります。
復職の意思がない判断されないように労働者側としては注意しなければなりません。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。