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今日は、元従業員による割増賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。
ハンナシステム事件(大阪地裁平成26年10月16日・労判1112号76頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、①平成22年5月21日から24年2月16日までの間の労働契約に基づく未払いの時間外割増賃金、休日割増賃金および深夜割増賃金の合計613万2756円ならびに遅延損害金を求めるとともに、②22年11月21日から24年2月16日までの間の割増賃金等に対する付加金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。
【裁判所の判断】
Y社はXに対し、合計568万8723円+遅延損害金、付加金352万657円の支払え。
【判例のポイント】
1 Y社は、原告との間で、基本給には月20時間分の割増賃金等が含まれる旨の合意があり、割増賃金等として月額4万2000円は支払済みであると主張する。しかし、Xは、Y社在職中にこのような説明を受けたことやこのような合意をしたことは一切ないと供述し、他にY社主張の合意を認めるに足りる証拠もない。そして、基本給に割増賃金等が含まれる合意については、割増賃金等に当たる部分とそれ以外の部分とを明確に区分することができる場合に限り、その有効性を認めることができると解されるところ(最高裁昭和63年7月14日判決)、Y社がXに交付していた給与支給明細書には、支給項目として基本給と交通費としか記載がなく、そのような明確な区分がされているものとは認められず、その計算方法をY社がXに周知していたことを認めるに足りる証拠もないことからすれば、仮に、Y社主張のような合意があったとしても、有効な合意とは認められない。よって、Y社の主張はいずれにしても理由がない。
2 Y社の就業規則及び賃金規程では、法定外休日についても割増率1.35とし、労働基準法37条を超える定めをしているから、この部分に対応する付加金の請求をすることはできないというべきである。
3 Y社は、平成22年以降、多額の欠損金が生じ、給与の遅配等が生じており、平成24年6月には一度、手形の不渡りを出していること、Y社では、X以外の従業員に対しても割増賃金等が支払われていないことが認められるが、付加金は、労働基準法114条所定の同法違反行為に対する制裁としての性質を有するものであることを考慮すれば、付加金の支払を命じることの可否及びその額を検討するに当たり、これを減免の事情として斟酌することはできず、この点に関するY社の主張は理由がない。
固定残業制度を中途半端に導入するとこうなります。
会社の経営状況は付加金の減免理由にならないので注意しましょう。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。