おはようございます。
今日は、定年後の再雇用が認められなかった裁判例を見てみましょう。
国際自動車事件(東京地裁平成27年1月29日・労経速2241号9頁)
【事案の概要】
本件は、Y社と雇用契約を締結し、タクシー運転手として稼働し、64歳の定年を迎えたXが、定年後も、Y社による雇用が継続するとの労使慣行、又は黙示の合意の成立、若しくは合理的な雇用継続に対する期待があるにもかかわらず合理的な理由なく再雇用を拒否されたこと、のいずれかの事情の下、Y社に再雇用されていると主張し、主位的に、Y社における労働契約上の地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づき、再雇用後の賃金及び遅延損害金の支払いを求め、予備的に、当該再雇用の拒否が権利濫用若しくは不当労働行為であり不法行為に該当すると主張し、損害賠償の一部として500万円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 定年退職後の再雇用は、それまでの雇用契約とは別個の新たな契約の締結に外ならない。すなわち、使用者は労働者を再度雇用するか否かを任意に決めることができ、新たな雇用契約の内容については、労働者及び使用者双方の合意(申込み及び承諾)が必要であり、労働者において、新たな雇用契約が締結されるはずであるとの期待を有して契約の締結を申し込んだとしても、使用者において、当該期待に応ずるべき義務が生ずる基礎がなく、それゆえ、申込みに対する承諾なくして労働者と使用者間に新たな雇用契約が締結したというべき法的な根拠はない。
2 なお、念のため、Xによる定年後の雇用継続への期待が合理的なものであったかを検討するに、Y社においては、事実上、定年後の乗務員の再雇用は労働者供給事業によるとの運用が確立しており、就業規則25条2項に基づく再度の雇用など、労働者供給事業以外の枠組みによる再雇用は、XがY社に入社した時点では既に行われていなかったところ、Xも、遅くとも平成24年11月上旬の時点では、Y社からの回答により、このことを認識していた上、Xが定年に達した時点では、Xの所属組合である全労及びなかまユニオンのいずれも、Y社との間で労働者供給に関する基本契約の締結に至らず、かつ、労働者供給事業の許可も取得していなかったことを踏まえると、Xの期待が、Y社における具体的な状況に照らして合理的なものであったとはいえない。
3 本件は、定年退職後の新たな雇用契約の締結(雇入れ)の問題であるところ、雇入れの拒否は、それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り、労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いには当たらないと解するのが相当である(最高裁平成15年12月22日判決)。
久しぶりの継続雇用に関する裁判例です。
争点としては、上記判例のポイント1と2の2点がありますので、注意しましょう。
高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。