Monthly Archives: 7月 2015

本の紹介459 運を支配する(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
運を支配する (幻冬舎新書)

「雀鬼」桜井さんとサイバーエージェント藤田社長の共著です。

帯には、「なぜ運は特定の人に集中するのか?」と書かれています。

あまり「運」というものについて考えたことがないですし、成功も失敗も運のせいにしたくないというところはありますが、「運」を軽視する者は「運」に泣くことがわかる本です。

お二人の考え方がよくわかり、とてもおもしろかったです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ある有名なビジネス書には、『勝ちすぎたことが失敗の原因になっているケースが、実はものすごく多い』ということが書かれています。中身が伴った上で勝ちすぎているなら、そう簡単には崩れないかもしれませんが、勢い余って勝ちすぎた企業や人間というのは、往々にして成長のスピードが速すぎて、基盤がまだしっかりできていないことが少なくありません。
絶好調の状態を自分本来の姿だと思ってしまうと、現実に見合った対応ができなくなります。絶好調なときを基準にするのでなく、未熟な中身というものを基準に考え、行動すれば、その企業や人は軸をブレさせることなく、堅実な成長を遂げていくことが可能になると思います。」(226頁)

藤田社長の言葉です。

うまくいっているときこそ、冷静に現状を把握しなければなりません。

絶好調な状態を基準とすると、あとから修正がきかなくなってしまいます。

自分や会社の調子は、経済と同じように、アップダウンを繰り返しながら、少しずつ向上していくものだと思っています。

いいときもあれば悪いときもありますよ。

そんな波に乗りながらも、継続的に一定の成果を上げていく人が本物なのでしょうね。

労働時間40(ビソー工業事件)

おはようございます。

今日は、警備員らの仮眠・休憩時間の労働時間該当性と差額賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

ビソー工業事件(仙台高裁平成25年2月13日・労判1113号57頁)

【事案の概要】

Xらは、A社との間で労働契約を締結し、同社が保安・防災等の業務を受託していた宮城県立B病院で警備員として勤務していたが、Y社が、A社に替わって平成19年4月1日以降の上記業務を落札してこれを受託したことから、同年3月末日頃、Y社との間で、労働契約を締結し、同年4月1日以降、Y社の従業員として同種の勤務を続けていた。

本件は、Xらが、Y社に対し、Y社との労働契約上は仮眠時間や休憩時間とされていた時間帯について、実際には労働からの解放が保障されておらず、労働時間に当たるのに、その点を踏まえた適正な賃金の支払を受けられなかったと主張して、平成19年4月分から平成21年12月分までの適正な賃金と実際に支払われた賃金との差額相当額につき、主位的に労働契約に基づく未払賃金として、予備的に賃金支払拒否を理由とする不法行為に基づく損害賠償として、各々請求した事案である。

原審は、Xらの主位的請求について、仮眠・休憩時間も全部労働時間に当たると判断してXらの請求を大筋で認めた

これに対し、Y社のみが控訴をし、Xらは不服申立てをしなかった。

【裁判所の判断】

仮眠・休憩時間が全部労働時間に当たるとした原審を破棄

予備的請求は棄却

【判例のポイント】

1 実作業に従事していない仮眠・休憩時間とされている時間帯であっても、労働からの解放が保障されていない場合には、労働基準法上の労働時間に当たるというべきであり、その時間帯に労働契約上の役務の提供を義務付けられていると評価される場合には、労働者は労働からの解放を保障されているとはいえず、使用者の指揮命令下に置かれているということができ、使用者に賃金の支払義務が生じる。しかし、他の従業員が業務に従事していて仮眠・休憩時間中に実作業に従事する必要が生じることが皆無に等しいなど、実質的に実作業への従事が義務付けられていないと認めることができるような事情がある場合には、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているとは評価できず、労働基準法上の労働時間に当たらないと解するのが相当である(大星ビル管理事件最高裁平成14年2月28日、大林ファシリティーズ(オークビルサービス事件)最高裁平成19年10月19日)。

2 本件係争期間中に仮眠・休憩時間中の警備員が例外的に実作業に従事した頻度が前記の程度にとどまっていたことにも照らすと、仮眠、休憩時間中の警備員が常時、守衛室や仮眠室でも業務に従事する態勢を要求されて緊張感を持続するよう強いられてはいなかったというべきである。
以上によれば、本件係争期間において仮眠・休憩時間中に実作業に従事した事例は極めて僅かであり(その中には必ずしも客観的に当該警備員が実作業に従事する必要性はなかったが、他の警備員への配慮等から引き受けたものもあったと見受けられる。)、例外的に実作業に従事した場合には実作業時間に応じた時間外手当を請求することとされていたのであって、Xら警備員に対しては、仮眠・休憩時間中に守衛室又は仮眠室で業務に従事する態勢を要求されていなかったのである。そうすると、Y社は、一般的、原則的に仮眠・休憩時間中も業務に従事する義務をXらに課していたものではなく、Xらも一般的にこのように義務付けられていると認識していたとは認められない。したがって、本件において、仮眠・休憩時間中に実作業に従事することが制度上義務付けられていたとまではいえないし、少なくとも仮眠・休憩時間中に実作業に従事しなければならない必要が皆無に等しいなど、実質的にXらに対し仮眠・休憩時間中の役務の提供の義務付けがされていないと認めることができる事情があったというべこである。

3 これに対し、Xらは、B病院は大規模医療機関で急患等の非常事態がいつ発生するか予測不可能であり、警備業務もこれに即時対応することが求められていて、B病院も本件仕様書で常時4人以上が実作業に対応できる態勢をとるよう定めていたのであって、Xらは仮眠・休憩時間中も緊張を強いられていたと主張する。しかし、上記のような突発的な業務に備えて、監視警備等業務に当たる警備員以外に仮眠・休憩時間帯ももう1人の警備員が守衛室で待機し、巡回警備業務中も必要があればこれに応じる態勢がとられていたこと、本件仕様書も4人以上が常時業務に従事することまで義務付けるものではなく、基本的に上記のような態勢によって対応が可能であったと認められること、Xらはシャワーを浴び、着替えをして仮眠室で仮眠をとっており、休憩時間中は必ずしも守衛室での待機が義務付けられていなかったことなど先に認定説示したところからすれば、Xらが仮眠・休憩時間中も常時緊張を強いられていたと認めるのは困難であり、上記主張は採用することができない。

労基法上の労働時間性の問題の中でも、この警備員等の仮眠・休憩時間の問題は、業務内容について丁寧に主張立証しなければ、結論がどちらに転ぶかわかりません。

この事案でも一審と二審で結論が異なっています。

労使ともに注意が必要な分野です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介458 速さは全てを解決する 『ゼロ秒思考』の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
速さは全てを解決する---『ゼロ秒思考』の仕事術

著者は、マッキンゼーで14年間活躍された方です。

タイトルのとおり、「スピード」を重視した仕事法や勉強法を紹介してくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事を速く進めるうえで重要な点は、できることは全部前倒しすることだ。・・・早めにやるほうが精神的には楽で余裕があるので、落ち着いて広い視点から取り組むことができる。心に余裕があるので頭もよく働く。・・・『ぎりぎり』だと、目先のことにあくせくし、先手を打つこともできず、想定がはずれたときに挽回のチャンスもなく、好循環など起こりようもない。人の協力も得にくい。ストレスが強くなり、体も心も疲れ果てる。」(57頁)

いまさら言うまでもないことですが、仕事が速い人は、着手が早いのです。

とっかかりが遅いと、それだけで出遅れているわけです。

ぎりぎりになって着手することだけは避けなければなりません。

とにかく着手することが大切です。

特にヘビーな仕事の場合には、「できるところから手をつける」という発想を持ち、少しずつ攻略するのです。

すべては習慣の問題です。

賃金97(全駐留軍労働組合事件)

おはようございます。

今日は、ストライキ支援のための年休取得と未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

全駐留軍労働組合事件(那覇地裁平成26年5月21日・労判1113号90頁)

【事案の概要】

本件は、沖縄県内のアメリカ合衆国軍隊基地に勤務するXらが、年次有給休暇の時季指定権を行使したにもかかわらず、年次休暇時間分の賃金の支払いを受けていないとして、雇用者であるY国に対し、各自、未払賃金及び遅延損害金、付加金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y国はXらに対し、各自、別紙未払賃金一覧表の各未払賃金額欄記載の金員及び遅延損害金を支払え。

Y国はXらに対し、同額の付加金+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件年休申請は、Xらの有する有給休暇の範囲内でされたものであり、その有給休暇の取得に違法はない。そして、Y国は、何ら時季変更権の行使等の主張をしないから、帰するところ、Xらに対し、未払となっている本件各未払賃金を支払う義務を負うものというべきである
したがって、Xらの請求のうち、Y社に対して本件各未払賃金及びその遅延損害金の支払いを求める部分は理由がある。

2 Y国は、全駐労による交渉や申入れ等を受け、本件年休申請につき在日米軍が適法な時季変更権を行使しないことへの懸念を有していたものであるところ、本件各未払賃金が現実化した後もその支払をせず、本件訴訟において、一旦は時季変更権の主張をしたもののこれを撤回し、その後に至っても未だ各未払賃金を支払っていないのであるから、このようなY社による本件各未払賃金の不払の状況や、これによるXらの不利益は軽視することはできない
そうであれば、Y社に対し、本件各未払賃金と同額の付加金の支払を命ずるのが相当である。

3 付加金の支払による制裁の対象は、当該労働者の雇用主であると解されるところ、Y社と在日米軍は、いわば雇用主の権利義務を分掌しているものと見ることができるから、両者を併せて制裁の対象ととらえることができる。しかるに、付加金の支払を命ずることによって、Y国がその制裁を受けることはいうまでもないが、在日米軍についても、Y国は、命ぜられた付加金の支払をした後に、在日米軍に対してその求償をすることができるのであるから、その意味において、在日米軍も制裁を受けるということができるのである(仮に、在日米軍がその償還を拒んだとしても、制裁が無意味であるとまでいうことはできないし、いずれにしても、本件と同様の事態を招かないという意味において、制裁の効用を認めることできると考えられる。)。

国の方はあまり強く争う気持ちが見られませんね。

付加金のことを考えると控訴をして有給分を支払って終わりにしたいところです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介457 「最高の結果」はすべてを「捨てた」後にやってくる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
「最高の結果」はすべてを 「捨てた」後にやってくる

これまでにも何冊か紹介をしてきました早川勝さんの本です。

「捨てる」ことにフォーカスした本です。

著者の本を読むと、日常生活における弱さや甘えが吹っ飛ぶので、とても好きです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私の人生においても、誰に相談することなく、捨てて、捨てて、捨てまくってきた。安定を捨て、積み上げた実績も捨て、ときには地位や名誉も捨ててきた。『逃げることなく、チャレンジしてきた』のだ。
人生における重要な決断をするとき、最も相談してはいけない『不幸のメッセンジャー』は”両親”である。両親は反対するのが仕事だ。親の願いは、子供の成功や成長ではない。実の子供には、『ぬるま湯』で苦労することなくヌクヌクと育ってほしいのだ。それが親の愛なのである。『いつまでも子供でいてくれること』それが親の願いなのだ。親のいうことを聞いていたら、成功を手に入れることはできない。両親へは、100%事後報告にすること。人生の重要な決断を下すときには、絶対に不幸のメッセンジャーに相談してはならない。」(37~38頁)

本当にやりたいことについて、事前に誰かに相談するという感覚が僕にはよくわかりません。

相談して、「やめておきなさい」と言われたらやめるのでしょうか。

その程度の気持ちならば、やらないほうがいいでしょう。

きっと少し挫折したら、すぐにやめてしまうでしょうから。

多くの場合、事前の相談をする人は、「相談」ではなく、単に「背中を押して欲しい」だけなのです。

甘えん坊さんなのです。

安定を捨てて、次のステップに進むことこそが、成長だと考える人には、この本に書かれていることがわかるのでしょうね。

解雇180(アメックス(休職期間満了)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、就業規則の変更に伴う復職拒否・退職扱いの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

アメックス(休職期間満了)事件(東京地裁平成26年11月26日・労判1112号47頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約(労働契約)を締結した後、業務外傷病(うつ状態)により傷病休暇及び療養休職を取得したXが、療養休職期間満了時に休職事由が消滅したから、X・Y社間の雇用契約がY社の就業規則により終了するものではないなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金支払請求権に基づき、休職期間満了日(雇用契約終了日)の翌日である平成24年12月21日以降の賃金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Xが、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

賃金+遅延損害金の支払いを命じる

【判例のポイント】

1 Y社は、労働契約法10条により、本件就業規則24条3項がXを拘束する旨主張する。
しかし、本件就業規則24条3項は、従来規定されていない「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを、療養休職した業務外傷病者の復職の条件として追加するものであって、労働条件の不利益変更に当たることは明らかであるY社において、従前から上記復職条件が業務外傷病者の復職条件として労使間の共通認識となっていたことや、本件変更前から本件内規の本件判定基準9項目により、上記の復職条件を満たすか否かを判断する運用をしていたことを認めるに足りる証拠はない
そして、業務外傷病のうち特に精神疾患は、一般に再発の危険性が高く、完治も容易なものではないことからすれば、「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件とする本件変更は、業務外傷病者の復職を著しく困難にするものであって、その不利益の程度は大きいものである一方で、本件変更の必要性及びその内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらないことからすれば、本件変更が合理的なものということはできない
したがって、本件変更は、労働契約法10条の要件を満たしているということはできず、本件就業規則24条3項がXを拘束する旨のY社の主張を採用することはできない。

2 業務外傷病により休職した労働者について、休職事由が消滅した(治癒した)というためには、原則として、休職期間満了時に、休職前の職務について労務の提供が十分にできる程度に回復することを要し、このことは、業務外傷病により休職した労働者が主張・立証すべきものと解される。

3 休職制度が、一般的に業務外の傷病により債務の本旨に従った労務の提供ができない労働者に対し、使用者が労働契約関係は存続させながら、労務への従事を禁止又は免除することにより、休職期間満了までの間、解雇を猶予するという性格を有していることからすれば、使用者が休職制度を設けるか否かやその制度設計については、基本的に使用者の合理的な裁量に委ねられているものであるとしても、厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」から、本件内規中に掲げた本件判定基準9項目を全て満たした場合にのみ復職を可能であるとする運用を導くことは困難である。
また、本件内規は、平成23年7月頃、Y社人事部において、業務外傷病により傷病休暇及び療養休職を取得した従業員の復職判断のための内部資料として作成されたものにすぎず、従業員には開示されていないから、上記の運用が本件雇用契約の内容として、Xの復職可否の判断を無条件に拘束するものではない

4 そして、本件情報提供書は「軽度日中の眠気が出現する以外は気分、意欲とも改善している」、「当初は時間外勤務は避ける必要がある。又、質量ともに負担の軽い業務からスタートして徐々にステップアップすることが望ましい。」との所見の趣旨はD医師が述べるとおりであり、Y社としては、本件診断書及び本件情報提供書の内容について矛盾点や不自然な点があると考えるならば、本件療養休職間満了前のXの復職可否の判断の際にD医師に照会し、Xの承諾を得て、同医師が作成した診療録の提供を受けて、Y社の指定医の診断も踏まえて、本件診断書及び本件情報提供書の内容を吟味することが可能であったということができる
Y社は、そのような措置を一切とることなく、何らの医学的知見を用いることなくして、D医師の診断を排斥し、本件判定基準9項目のうち、・・・を満たしていないと判断しているところ、そのようなY社の判断は、Xの復職を著しく困難にする不合理なものであり、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものというべきである

非常に重要な裁判例です。

休職期間に関連する問題は、会社としても対応がとても難しいですね。

「正解」がよくわからない中で、できる限りの対応をするという姿勢が求められます。

顧問弁護士や顧問社労士とともに対応していくことが強く求められます。

本の紹介456 限界はあなたの頭の中にしかない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
限界はあなたの頭の中にしかない

ジェイ・エイブラハムさんの本です。

著者の本をたくさん読んできましたが、どの本もとても勉強になります。

今回の本もおすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

凡庸で終わる人々が決して本気でやろうとしないことがあります。目指すゴールに近い人々や、違う背景や違う発想をして成功している人々と話をすることです。わざわざ会いに出向くことです。彼らの話を真剣に聴いてみることです。…しかし、多くの人はそれをやりません。自分の居心地の良い世界から出ようとしません。ゴールの設定もしません。メンターも持ちません。成長も決意をしません。それで現状から抜け出せるはずがないのです。…ゴールのビジョンを明確に持つことは大切です。しかし、願っているだけでは何も変わりません。…目標を紙に書いているだけでは何も変化しません。」(198~199頁)

いかがですか。

ここまではっきり言われると気持ちがいいですね(笑)

本気で変わろうとしていないから、変わらないのだと。

願っているだけでは何も変わらない。 目標を紙に書いているだけでは何も変わらないのです。

目標を明確に持ち、それに向かって、毎日、怠けることなく、やるべきことをやり続けることです。

とても地道で気が遠くなることかもしれません。

でも、この方法が、目標を達成するための最も確実な方法だと確信しています。

解雇179(コンチネンタル・オートモーティブ事件)

おはようございます。

今日は、休職期間満了時に復職可能であったと判断できないとして賃金の仮払いが認められなかった裁判例を見てみましょう。

コンチネンタル・オートモーティブ事件(横浜地裁平成27年1月14日・労経速2244号3頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社に対し、休職事由が消滅したにもかかわらず、休職事由が消滅していないとして休職期間満了による退職の扱いをしているのは不当として、未だXはY社との間で労働契約が継続していることを前提に、賃金の仮払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

申立て却下

【判例のポイント】

1 Y社は、復職が可能という主治医の診断書は、Xの強い意向に従って作成されたものであるから全く信用できないと主張している。
確かに主治医の平成26年10月27日から通常勤務に問題がない旨の診断書は、Y社からXに対し、休職期間満了の通知が届き、「焦って目が覚めたと言ってきて、会社に戻りたい、頑張ろうと思う」との話があったため、希望どおりに書いたというものである。これは、医学的に軽快したということが理由になっているのではなく、Xの強い意向によることが理由と考えざるを得ない。そうすると、Y社からXに宛てて出された平成26年10月10日付けで送付された休職期間が満了して退職となる旨の通知をXが受領する以前に示された診断書が、前記認定した主治医がY社代理人に述べたXに関する病状とも整合しており、医学的にみたXの病状を示しているといえる
すると、Xについては、平成26年10月29日の休職期間満了時に復職可能であったと判断することはできず、就業規則第49条第1項に該当するとは認められない。したがって、被保全権利の存在は疎明されていない。

2 Xは、平成26年10月末の時点で預金を26万ほどしか有していなかったとしても、その後、Xは、1年6か月は受給できる傷病手当金の受給申請を行い、月25万円を超える傷病手当金を受給し、今後も受給できる状況である。・・・Xについて、賃金の仮払いを受けなければ生活が困窮し、回復し難い損害を被るおそれがあるとは疎明されないので、保全の必要性は疎明されていない

3 以上からすると、被保全権利の存在及び保全の必要性いずれについても疎明がされているとはいえないから、本件申立ては却下することとする。

休職期間満了時の対応は、簡単ではありません。

労使ともに、留意すべき点が多々あります。

複数の裁判例から実務におけるヒントを拾い出し、応用することが求められます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介455 最高の営業デビュー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
日本一のセールスコンサルタント直伝 最高の営業デビュー

セールスコンサルタントの本です。

テクニックというよりは、心構えが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今、日本人が使わなくなりつつある言葉で、『惻隠のこころ』という言葉があります。これは、誰かが困っているのを見たら、自分のことのように心を痛めるような、そういった心のことです。それを『惻隠のこころ』といいます。平たくいえば『思いやりのこころ』になるのですが、『思いやり』という言葉だけでは、十分に言い表せない、もっと深い情愛を感じさせる言葉です。…お客さんを気遣い、心配し、目を配って、親切にする。相手の心をくみ、降らぬ先の傘をさしてあげようとする。そうした優しさを大事にしてほしいと願っています。」(186~187頁)

姿勢・考え方とテクニックを分けるとして、テクニックが効果を発揮するのは、姿勢や考え方がセットされていることが大前提です。

どれだけ自己犠牲を払えるか。

そして、そのことを自己実現として捉えることができるか。

嫌々やるのでは、とても続きません。

特に私たち弁護士は、このような気持ちを持ちあわせているかどうかで、仕事に対する幸福感が天と地ほど変わってきます。

賃金96(ハンナシステム事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、元従業員による割増賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

ハンナシステム事件(大阪地裁平成26年10月16日・労判1112号76頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社に対し、①平成22年5月21日から24年2月16日までの間の労働契約に基づく未払いの時間外割増賃金、休日割増賃金および深夜割増賃金の合計613万2756円ならびに遅延損害金を求めるとともに、②22年11月21日から24年2月16日までの間の割増賃金等に対する付加金及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、合計568万8723円+遅延損害金、付加金352万657円の支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、原告との間で、基本給には月20時間分の割増賃金等が含まれる旨の合意があり、割増賃金等として月額4万2000円は支払済みであると主張する。しかし、Xは、Y社在職中にこのような説明を受けたことやこのような合意をしたことは一切ないと供述し、他にY社主張の合意を認めるに足りる証拠もない。そして、基本給に割増賃金等が含まれる合意については、割増賃金等に当たる部分とそれ以外の部分とを明確に区分することができる場合に限り、その有効性を認めることができると解されるところ(最高裁昭和63年7月14日判決)、Y社がXに交付していた給与支給明細書には、支給項目として基本給と交通費としか記載がなく、そのような明確な区分がされているものとは認められず、その計算方法をY社がXに周知していたことを認めるに足りる証拠もないことからすれば、仮に、Y社主張のような合意があったとしても、有効な合意とは認められない。よって、Y社の主張はいずれにしても理由がない

2 Y社の就業規則及び賃金規程では、法定外休日についても割増率1.35とし、労働基準法37条を超える定めをしているから、この部分に対応する付加金の請求をすることはできないというべきである。

3 Y社は、平成22年以降、多額の欠損金が生じ、給与の遅配等が生じており、平成24年6月には一度、手形の不渡りを出していること、Y社では、X以外の従業員に対しても割増賃金等が支払われていないことが認められるが、付加金は、労働基準法114条所定の同法違反行為に対する制裁としての性質を有するものであることを考慮すれば、付加金の支払を命じることの可否及びその額を検討するに当たり、これを減免の事情として斟酌することはできず、この点に関するY社の主張は理由がない。

固定残業制度を中途半端に導入するとこうなります。

会社の経営状況は付加金の減免理由にならないので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。