Monthly Archives: 6月 2015

本の紹介443 アメリカ本国を驚愕させたプルデンシャル生命の「売る力」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。
アメリカ本国を驚愕させたプルデンシャル生命の「売る力」

プルデンシャル生命のトップセールスマン30人が、それぞれが営業において重要だと考えることを紹介してくれています。

みなさん、本当にさまざまな工夫や気配りをされているのがよくわかります。

トップになるのは、偶然ではなく、理由がしっかりありますね。

サブタイトルは、「プロフェッショナルセールスマン2」となっています。

これは、同社の伝説的なセールスマンについて書かれた「プロフェッショナルセールスマン」の続編と位置付けているからです。

今回の本も、本当に参考になります。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

誰もが、始めからうまくなどいってはいなくて、
誰もが、なんども泥水を飲み、
誰もが、もがきながら自分なりのやり方を探し、
誰もが、他人ではなく自分に打ち勝ち、
誰もが、お客さまや仲間たちとの縁を宝物のように大事にし、
誰もが、トップクラスの結果を残してもなお満足せず、
誰もが、問題意識を持ち続け、なおも前へと進もうとしている。」(280頁)

いい言葉ですね。

頂上に向かって走り続けている人は、皆、この文章を読むと、心に響くものがあると思います。

できるだけ平穏に、できるだけ今のままの状態がずっと続けばいい・・・などという気持ちとは真逆を行く価値観です。

今のままの状態でいることに不安を覚え、平穏で何の変化もない日常に不安を覚える人種が確かに存在するのです。

上がったり下がったりしながら、少しずつ山を登っていく。

そういう生き方しかできない人種がいるのです。

セクハラ・パワハラ11(暁産業ほか事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、上司の発言が不法行為に当たるとして損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

暁産業ほか事件(福井地裁平成26年11月28日・労判1110号34頁)

【事案の概要】

本件は、Xが自殺したのは、C及びDのパワハラ、Y社による加重な心理的負担を強いる業務体制等によるものであるとして、XがY社らに対し、C及びDに対しては不法行為責任、Y社に対して主位的には不法行為責任、予備的には債務不履行責任に基づき、損害金1億1121万8429円及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社及びCは、連帯して7261万2557円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 ・・・「会社辞めたほうが皆のためになるんじゃないか、辞めてもどうせ再就職はできないだろ、自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば、店でも出せば、どうせ働きたくないんだろう」「いつまでも甘甘、学生気分はさっさと捨てろ」「死んでしまえばいい」「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」
これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、Xの人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず、不法行為に当たると認められる

2 CのXに対する不法行為は、外形上は、Xの上司としての業務上の指導としてなされたものであるから、事業の執行についてなされた不法行為である。本件において、Y社がCに対する監督について相当の注意をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから、Y社はXに対し民法715条1項の責任を負うこととなる。

3 Xは、Cから注意を受けた内容のメモを作成するように命じられ、誠実にミスをなくそうと努力していた中で、Cから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。Xは、高卒の新入社員であり、作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから、Cの前記言動から受ける心理的負荷の内容や程度に照らせば、Cの前記言動はXに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。そして、Xには、業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないし、既往症、生活史、アルコール依存症などいずれにおいても問題はないのであって、性格的な偏りもなく、むしろ、上記手帳の記載を見れば、きまじめな好青年であるといえる。
そうすると、・・・本件自殺とCの不法行為との間の相当因果関係が認められる。

叱責の域を超えて、人格を否定したり、威迫したと評価される場合には不法行為と認定されます。

上司も人間ですから、感情的になってしまうこともあります。だからこそ、このような裁判例を参考にして、冷静な対応が求められます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介442 松岡修造の人生を強く生きる83の言葉(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
松岡修造の人生を強く生きる83の言葉

ただいま絶好調の松岡さんの本です。

周りに元気を与える人は、いつでも、誰からも求められますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ベストを尽くすというのは最高の言葉ですが、心のあり方次第では使い方に工夫が必要です。僕が勝ちにいくとまで言い切った相手は実力的に強い相手でした。ベストを尽くすけど、多分、負けるだろうなという弱い気持ちがあったから、『勝ちにいく』という言葉を付け加えて自分を鼓舞しました。人は最高の言葉を使いながら、実は逃げていることがあります。それはいいことではありません。・・・もし、言い訳しようと考えているようなら、『ベストを尽くす』の後に『必ず契約を取る』『完璧な企画書にする』といった具体的な言葉を付けた方が強い気持ちになれます。」(33頁)

確かに使う言葉が抽象的だと、逃げ道を残すことになるのかもしれませんね。

「がんばります」「ベストを尽くします」「できる限りのことはします」など・・・

これに対して、「必ず契約を取る」「90点を取る」「○○試験に合格する」など具体的な言葉を発言することで、より目標が明確になりますし、逃げ道がありません。

あえて言い切ることが大切です。

言い切ることによって、自分を追い込むのです。

しんどいけれど、極限状態での集中力を知っている人ならば、追い込むことの大切さはわかると思います。

平和ぼけした現代社会だからこそ、自分で自分を追い込むのです。

日々、ぎりぎりまでBボタンを押し続けることでしか次のステージには進めないから。

セクハラ・パワハラ10(N社事件)

おはようございます。

今日は、労働条件の説明義務違反、パワハラを理由とする損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

N社事件(東京地裁平成26年8月13日・労経速2237号24頁)

【事案の概要】

本件は、XがY社に対し、労働契約締結時において労働内容について説明する義務を怠り、また、Y社担当者からパワーハラスメントを受け、損害を被ったとして、民法709条及び715条に基づいて損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労契法4条1項は、使用者に対し、労働条件及び労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにすべきことを定めているものの、同条項は使用者の努力義務規定あるいは訓示規定であって具体的な権利義務を定めたものとは言い難く、同条項から直ちに使用者の説明義務が認められるものではない

2 労基法15条1項は、使用者に対し、労働契約を締結する際、労働条件を明示することを義務付けており、労働条件には、労働者が従事すべき業務も含まれる。しかしながら、同条項違反の効果としては、即時解除権の発生と帰郷旅費請求権の発生とされており(労基法15条2項、3項)、労基法15条1項をもって、直ちに使用者に対して、労働条件に関して、違反した場合に損害賠償義務が生じるような私法上の具体的な説明義務を課したものとは解しがたい。また、実際問題としても、求人募集の時点と労働契約の締結時点においては、時間的な間隔があるため、求人募集の時点において示される労働条件と労働契約の締結時点において示される労働条件が食い違うことは往々にして生じうるところでもある。したがって、労基法15条1項は、労働契約を締結する際における労働条件を明示する義務を使用者に課したものといえるが、具体的な説明義務を使用者に課したものとまで解することはできず、同条項に反したからといって直ちに説明義務違反が生じると解することはできない

3 もっとも、求人募集に応募する労働者は、募集条件として示された内容が労働契約締結時に大きく変更されることはないであろうと期待して応募しているのであるから、使用者としては、かかる労働者の期待に著しく反してはならないという信義誠実義務を負うものと解することはできる

4 パワハラについては、一応の定義付けがなされ、行為の類型化が図られているものの、極めて抽象的な概念であり、これが不法行為を構成するためには、質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。具体的にはパワハラを行ったとされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様等を総合考慮の上、企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為をしたと評価される場合に限り、被害者の人格権を侵害するものとして民法709条の所定の不法行為を構成するものと解するのが相当である。
本件についてみると、そもそも、Xがパワハラを受けたと主張する時期や前後の経緯などは明確でなく、そもそも、Xの主張するところをもって、民法上の不法行為が成立しえるものといえるのか疑問であるし、その点をおくとしても、CやEは、Xに対して、Xが主張するような言動をとったことはないと否定しており、Xの供述以外に、Xの主張を裏付ける客観的な証拠もない

上記判例のポイント1、2は驚くような内容ではありませんが、労使ともに理解しておくべき内容です。

パワハラについては、立証不十分のため認定してもらえませんでした。

十分に準備をしてから戦いに挑まないと、多くの言動は立証できないことをいいことに事実を否定されてしまいます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介441 トップセールスには、なぜ「いいお客さま」が集まってくるのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
トップセールスには、なぜ「いいお客さま」が集まってくるのか?

あまりタイトルには縛られず、純粋にトップセールスマンがどのような工夫をしているのかが書かれています。

業界を問わず、今すぐ役立つ考え方や営業法が書かれており、勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自社商品の性能や技術に詳しくても、その商品の相対的な価値がわからなければ、お客さまに振り向いてもらうことは難しいと思います。商品に関する情報提供をするときは、オーダーメイドでお客さまに合わせる必要があるのです。営業マンが『商品説明を極めたら売れる』という考えを持っているとしたら、それは、まぎれもなく幻想です。商品説明よりも、『違い』と『選び方』を極めたアプローチをしたほうが、間違いなく売れると断言できます。」(112頁)

人は、無意識に、相対評価をして、その物やサービスの価値を判断します。

絶対評価などなかなかできるものではありません。

だから、自社商品の良いところだけで説明しても、それだけでは顧客は本当に購入してもいいのか、後で後悔しないのかが判断できないのです。

そのため、他の商品やサービスとの違いをわかりやすく伝える必要があるわけです。

その一歩手前には、他の商品やサービスとの違いが存在していなければなりません。

本当はそんなに違わないのに、大きく違うように説明しても無理がきますので、注意しましょう。

労働者性13(リバース東京事件)

おはようございます。

今日は、セラピストの労基法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

リバース東京事件(東京地裁平成27年1月16日・労経速2237号11頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間で締結した契約は業務委託契約ではなく雇用契約であり、Y社が平成24年11月30日をもってした契約解除は解雇に相当する旨主張し、Y社に対し、主位的には、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、雇用契約に基づく上記解雇以降の賃金の支払並びに平成22年12月から平成24年11月までの未払賃金及び精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求めるとともに、X及びY社間の契約が雇用契約と認められないことを前提として、予備的に、X及びY社間の業務委託契約に基づき、受付業務についての報酬の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件契約に係る契約書の規定内容は、手技療法業務提供の委託に関する約定であると認められるところ、Y社との間で同委託に関する契約を締結したセラピストは、その稼働日及び稼働時間を自ら決定することができ、施術の担当に関して諾否の自由も有しており、Y社から必要な限度で一定の注意喚起等を受けることはあるものの業務遂行上の指揮監督等を受けることはなく、施術の実施についても基本的には自ら裁量で行っているから、セラピストがY社の指揮監督下において労務を提供しているものとは認められない。加えて、セラピストが受け取る対価は完全出来高制であって労務対償性は認められず、また、セラピストには高い事業者性も認められることからすれば、Y社との間で上記委託に関する契約を締結したセラピストが労働基準法上の労働者に該当すると認めることはできないというべきであり、本件契約におけるXについても上記認定と異なる特別の事情は認められない

2 セラピストは、おおむね30分ないし60分程度の範囲で交替で受付業務を担当し、受付業務を行っている間に指名を受け、又は施術担当の順番が回ってきた場合には、指名や施術担当が優先され、他のセラピストが代わりに受付業務を担当するとの受付業務の運用実態からすれば、セラピストが受付業務を担当することで特段の不利益を被るとは考え難く、また、セラピストが受付業務をすることによって利用客に合ったよりよいメニュー等を案内することが期待される一方で、実際に施術を担当する利用客の受付業務を当該利用客の施術を担当するセラピスト自身が行うものとすると効率的な業務運営に支障を来すことも考えられるから、セラピストが自ら施術を担当していない30分ないし60分程度の時間帯に施術業務に付随する業務として受付業務を担当するものとするのは一定の合理性があると認められる。
以上によれば、セラピストとY社との間では、セラピストが施術業務に付随する業務として受付業務を行う旨の合意が成立していたと認めるのが相当であり、受付業務につきY社が別途報酬を支払う旨の合意が成立した事実は認められず、Xについても上記認定と異なる事情等が存したものとは認められない。

数多く存在するマッサージ店の経営者は、是非、参考にしてください。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介440 人に好かれたら、仕事は9割うまくいく(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
人に好かれたら、仕事は9割うまくいく―できる男・伸びる男・ツイてる男の7か条 (ドリームスキル・クラブ)

少し前の本ですが、もう1度読み直して見ました。

この本が言いたいのは、人に媚びろ、ということではありません。

一言で言えば、「相手のことを思いやる」「相手の立場になって考える」ということだと理解しました。

とても良い本です。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間関係において、相手を安心させるということはとても重要なことです。・・・そこで『どうしたら相手に安心感を与えることができるか』を、常に考えながら行動することが、人に好感を持って迎えられるための秘訣です。」(49頁)

どうすれば、顧客や上司に安心感を与えることができるかを考えるとやるべきことがわかってきます。

報連相をしっかり行う。

不注意なミスをなくす。

時間を守る。

1つ1つは基本的で当たり前のことかもしれませんが、このようなことを日々の仕事の中で着実に行うことこそが、安心感につながるのです。

以前、ブログにも書きましたが、オーバーヘッドキックなんかできなくてもいいのです。

そんなこと求めていませんから。

派手さはなくても、正確なパスやトラップが確実にできるプレーヤーこそ、監督に安心感を与えるのです。

口うるさく指示されなくなってきたら、それは上司が安心してあなたに仕事を任せている証拠です。

「うるさい上司だな~」と思ったら、まずは安心感を与えることです。

解雇174(日本ハウズイング事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、マンションの住込管理人の管理人室退去をもって自主退職と評価することの可否に関する裁判例を見てみましょう。

日本ハウズイング事件(東京地裁平成26年12月24日・労経速2239号25頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から雇用されていたA、Bが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認とバックペイの支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

A、Bともに労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

【判例のポイント】

1 8月2日の段階で、C課長は、本件マンションの管理人を交代することになる旨告げているものの、退職届を書くようにAらに告げているに留まる。それ以外に同日において、Y社から明確にAらを解雇するとの意思表示はなされたと認めるに足りる事実はない。また、C課長が、同日、Aらが解雇されたことを認めたという事実も証拠上、認められない。・・・以上からすると、本件労働契約について、Y社がAらに対して解雇の意思表示をしたと認めることはできない。

2 そもそも意思表示は、表意者が一定の効果を意欲する意思を表示し、法律がこの当事者の意欲した効果を認めてその達成に努力するものとされているから、自主退職(労働者から一方的に労働契約を解消すること)の意思表示についても自主退職という法律効果を意欲する意思が表示されたものと評価できるかが問題となる。そして、労働者にとって労働契約は、生活の糧を稼ぐために締結する契約であり、かつ、社会生活の中でかなりの時間を費やすことになる契約関係であることからすれば、かかる労働契約を労働者から解消して自主退職するというのは、労働者にとって極めて重要な意思表示となる。したがって、かかる労働契約の重要性に照らせば、単に口頭で自主退職の意思表示がなされたとしても、それだけで直ちに自主退職の意思表示がなされたと評価することには慎重にならざるを得ない。特に労働者が書面による自主退職の意思表示を明示していない場合には、外形的にみて労働者が自主退職を前提とするかのような行動を取っていたとしても、労働者にかかる行動を取らざるを得ない特段の事情があれば、自主退職の意思表示と評価することはできないものと解するのが相当である

3 確かに、本件においてY社が解雇の意思表示をしたという事実は認められず、Y社から解雇されたことが明確になっていない段階において、Aらにおいても退職届の作成を拒否し、自主退職もしていないのであれば、Aらとしては、管理人室を退去する必要まではなかったともいえ、管理人室を退去したことは自主退職を前提とするかのような行動であるともいえる。
しかしながら、Aらが本件マンションを退去した理由としては、本件マンションの管理人であれば、家賃を払わなくても済むが、8月2日のC課長やD主任とのやりとりで、管理人を解雇されたと思い、解雇されたのであれば居住権はなくなり、家賃を支払わなければならないと考え、やむなく退去したとのことであり、Y社から退職届を書くよう求められていた当時の状況からすれば、Xらがかかる認識に至ったのも無理からぬところといえる
以上からすると、Xらが本件マンションを退去したことだけをもって自主退職の意思表示をしたと評価することはできない。

解雇の意思表示も自主退職の意思表示もないから、雇用契約は今まで通り、続いているという判断です。

まさかの展開です。

上記判例のポイント2の解釈は参考になりますね。 是非、押さえておきましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介439 チャンスの神様と出会う方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
チャンスの神様と出会う方法 (何かを成し遂げたい人に贈る30のヒント)

著者は、ベクトルグループの代表の方です。

HPを見ますと、いろいろとご活躍されているようです。

すばらしいですね。

本の内容としては、多くの同種の本と同一路線を行くものです。

キュレーション系です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

チャンスに出会うために、とても大事なこと。これは、最も大事なことの1つ。そして、この本で最も伝えたかったことの1つでもある。いったい何か? それは、『チャンスが流れてくるのを、先に行って待っている』ということだ。」(101頁)

何よりも大事なのは、『チャンスと出会える、流れの先はどこか?』を考えること。そして、そこまでイメージを飛ばし、必要な準備をしておくことなのだ。」(104頁)

書かれている内容自体は、抽象的で、これだけを理解してもなんのことにもなりません。

チャンスが流れてくるのを先に行って待っている、とは具体的にどのようなことなのかを考えることが大切です。

まずは流れをつかみ、先回りするために必要な準備をする。

いざチャンスが流れてきたときに、あわてて準備をしても遅いのです。

ちゃんと準備をしていた人のもとにチャンスが訪れるように、この世の中はなっていると強く信じましょう。

不当労働行為114(三軌工業事件)

おはようございます。

今日は、二次下請会社の労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

三軌工業事件(滋賀県労委平成26年12月15日・労判速2239号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、あっせんにおいて、C組合員が組合に加入していることを理由に直接雇用の申込みを行うことに抵抗があると回答を行ったことが、不利益取扱いに当たり、また、本件団体交渉拒否に当たるとして、X組合が救済申立てをした事案である。

【労働委員会の判断】

Y社は労組法上の使用者には当たらない。

【命令のポイント】

1 Y社が労組法7条の「使用者」といえるためには、Y社が、就労に関する諸条件にとどまらず、C組合員の雇用そのもの、すなわち採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用の管理に関する決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している必要があると解される。

2 これを本件についてみるに、Y社がC組合員に対し、これら採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用の管理に関する決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたことを認めるに足りる証拠はない

3 なお、X組合は、Y社がC組合員に対し、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者であることを理由として、Y社が労組法7条の「使用者」に当たるとの主張はしておらず、また、それを認めるに足る事情もない。

ときどき登場する労組法上の使用者性に関する争点です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。