Monthly Archives: 6月 2015

本の紹介448 60分間・企業ダントツ化プロジェクト(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
60分間・企業ダントツ化プロジェクト

神田昌典さんの本です。

10年以上前の本ですが、何回も読み直してきた本です。

豊富な具体例によって、商売の正しいやり方を教えてくれています。

素晴らしい本だと思います。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんなマヌケな経営者でも、失敗しようのないシステムをつくるのである。つまり、賢い経営者がいるから会社が繁栄するのではなく、マヌケでも繁栄してしまうビジネスモデルをつくるのだ。たいていの人が、このようなモデルを構築できないのは、ビジネスをひとつの側面からしか見られないからである。」(283頁)

これだけを読んでもどうしたらよいのかわかりませんよね。

この本では、いくつもの具体例を示してくれています。

自分の業界に落とし込み、どのようなシステムを構築すればよいのかをいろいろな角度から検証していくのです。

属人的なシステムではなく、組織として対応可能なシステムをいかに構築するか、がポイントになってきます。

解雇175(有限会社X設計事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、試用期間中の解約権行使に関する裁判例を見てみましょう。

有限会社X設計事件(東京地裁平成27年1月27日・労経速2241号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結し、設計図面の作製等の業務に従事していたXが、解雇等の効力を争い、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と平成23年6月分から本判決が確定するまでの間の給与月額各18万円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 いかにXが設計業務に一定の経験を有することを前提に採用されたにせよ、Y社代表者は入社から間もないXに対していきなり本件橋梁の配筋図の作製を指示しながら、それ以上に作業の手順、作業を進める上でA組の意向をどの程度確認すべきか、その場合に連絡はどうやって行うかなどの点について具体的な指示をした形跡は見当たらないのであって、入社早々指示を受け約2週間でXが提出した当初提出配筋図につきA組から不備を指摘されたことを捉えて設計業務に従事する適性を欠くものと結論付けるのは酷なところがある何よりも、A組・Y社代表者から指示を受けてXが修正作業に取り組み、完成させた修正後配筋図に特段の問題はなく、続けて作製した2ブロック分の配筋図も同様であったという経過をみる限り、Xが入社後最初に担当した作業は不慣れなところもあって手直しが必要なものであったが、その後は支持に従って要求どおりの作業を完成させることができたというのが、大局的にみた事のてんまつであって、これらの経過から、Xに基本的な設計図面の作製能力がなくその適性を欠いていたなどとは認め難いというべきである。

2 Y社は、XがY社代表者の指示に反してA組との打ち合わせに参加しなかったこと、電話の応対を拒否したこと、電子メールに自分の名前を示さなかったこと、指示・会話等に応答せず、コミュニケーションをとるよう指導しても改善がみられなかったこと、共同作業を指示してもこれを行わなかったこと等の勤務態度を問題とする。確かに・・・。しかし、これらの点について、Y社代表者らから明確かつ具体的な指示・指導があったにもかかわらず、Xがかたくなに従わなかったなどの事情があるというのであればともかく、そうした事情も見当たらないことからすると、Y社が指摘する点を捉えて、Xの勤務態度が不良であるとまではいえず、Y社の業務に具体的な支障を来したとも認め難い。また、・・・それによってどれだけ作業が遅れ、業務に支障を来したかは明らかでないというべきである。

3 以上みてきたところによれば、Y社の主張するXの業務遂行能力及び勤務態度のいずれの点をみても、試用期間中に判明した事実につき、解約権を行使する客観的に合理的な理由が存在するとは認められない。

業務遂行能力不足や勤務態度不良を理由とする解雇は、そう簡単にはできません。

使用者側の適切な指示・指導・教育を裏付ける必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介447 商品よりも『あと味』を先に売りなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
商品よりも「あと味」を先に売りなさい  リピート率7割の“心づかい"の接客

著者は、高級婦人服ブランド店に勤務してきた方です。

顧客に対する本物の心遣い、気配りとはどのようなものかが書かれています。

業種を問わず、大変勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『話し上手は、聞き上手』という言葉があるように、『いかにお客様に数多く話していただけるかが、売れるスタッフになるか、ならないかの分かれ目』だと、私が最も尊敬している店長が語ってくれました。」(133頁)

『優秀な販売スタッフ』は、素早い回答ではなく、相談したお客様本人がすでに決めている答えに対して、ひと押しする言葉だけ求められていることを知っています。」(137頁)

一方的に説明をしまくる店員よりも、話を聞いてくれる店員から買いたいと思います。

説得してくる店員よりも、納得させてくれる店員から買いたいと思います。

トップセールスマンになるためには、話し上手である必要はありません。

トップセールスマンは、みな「質問上手」なのです。

相手が、話をしやすい質問ができるのです。

会話のボール占有率が高い方は、是非、質問上手になりましょう。

そうすれば、おのずと聞き上手になれますので。

賃金94(甲総合研究所取締役事件)

おはようございます。

今日は、解雇、残業代不払いが不法行為を構成するとされた裁判例を見てみましょう。

甲総合研究所取締役事件(東京地裁平成27年2月27日・労経速2240号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、同社の代表取締役であったB2及び同社の事実上の取締役とするB1に対し、B1らが、Xを違法に解雇し、同社をしてXに対し時間外手当を支払わせず、さらには、Xが得た同社に対する地位確認等請求事件判決の責任回避を目的として同社を計画倒産させたなどと主張して、民法709条ないし会社法429条1項に基づき、損害金及び遅延損害金を求めた事案である。

【裁判所の判断】

B1らは、Xに対し、連帯して、401万4566円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 時間外労働を行ったことについては、時間外手当の支払を求める労働者側が主張立証責任を負うものではあるが、労働基準法は、労働時間、休日、深夜業について厳格な規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど、労働時間を適切に管理する義務を負うものであることは明らかである。そして、労働基準法は、使用者の賃金台帳調整義務を定めて、「賃金台帳を調整し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」(同法108条1項)と規定し、また、同法施行規則54条1項は、上記法律の規定によって賃金台帳に記入しなければならない事項として、労働日数、労働時間数、労働時間延長時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数などを規定している。さらに、厚生労働省労働基準局長が平成13年4月6日発出した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(基発第339号通知)においても、・・・とされているところである。

2 Xは時間外労働に従事したことが認められるところ、B1はXが時間外労働に従事していることを認識し、また、B2についても、就業規則と異なる状況が発生していることを認識していたにもかかわらず、B1らは、労働基準法に違反してXに時間外手当を支払っていないところ、この不払は、B1らが、Y社の代表取締役などとして、従業員の出退勤時刻を把握して時間外勤務の有無を確認できるとともに、時間外勤務があるときは、その時間外手当の支払が円滑に行われるような制度を当然整えるべき義務があるのに、これを怠ったことによるものと評価できるのであるから、従業員4名という小規模な会社であったY社において代表取締役などの地位にあったB1らが、上記当然の義務を懈怠してXに対し時間外手当の支払をしなかった行為は、不法行為を構成するものと認められる。

3 Xには、本件解雇より事実上失職した結果、得られなかった賃金相当の損害が生じたものの、本件解雇と相当因果関係を肯定できる逸失利益の範囲については、通常、再就職に必要と考えられる期間の賃金相当額に限られるものと解すべきである。そして、Xの職歴及びY社における就業期間その他の事情を総合考慮すると、Xが再就職に必要と考えられる期間としては、本件解雇発効後3か月と認めるのが相当であるから、137万4000円をもって、本件解雇によって生じた賃金相当の逸失利益と認めるのが相当である。

4 本件において、Xは、多大な精神的損害を被ったと主張するものの、その原因は、突然解雇によって雇用の機会を奪われ、継続して賃金を得られない状態が生じたことにあるものであって、財産的利益に関するものであると解されることからすると、Xには、上記逸失利益の填補によっても回復困難な精神的損害が生じたものと認めることはできないから、慰謝料請求は認められない

珍しいケースですね。

不法行為構成で訴訟をすると、解決金額のあまり高くないため、どうしても、地位確認の構成をとることが多いですが、今回の事案でも、わずか3か月分しか認められていません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介446 死ぬ気で働くリーダーにだけ人はついてくる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
死ぬ気で働くリーダーにだけ人はついてくる

以前にも何冊か紹介してきました著者の本です。

リーダーはかくあるべし、という著者の考えが書かれています。

非常にいい本です。おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

チームは生き物だ。成長し続けなければ、待っているのは『死』である。成長し続けること、それ以外に生き残る道は残されていない。核分裂を繰り返し、チームのDNAは進化していくのである。目標を『前年の1割増し』にし、結果90%の達成をして、『まずまずだな』と内心ほっとしているような、そんな愚かな現状維持計画など、もってのほかだ。規模の大きな組織になると、『保有契約を守り抜こう』などというスローガンで経営している会社があるが、それではまったく将来の展望が見えてこない。未来のないチームに優秀な人材など集まるはずもなく、むしろ離れていくだけだ。『安定志向』は麻薬だ。常習性がある。その麻薬を打ち続けると、やがてチームは崩壊していく。」(32頁)

そうですね。

「安定志向」は麻薬です。

一度、安定志向という麻薬を使うと、何か新しいことにチャレンジすること、変化することを避けるようになります。

もっともらしい理由を見つけることによって。

「今のままでいいじゃないか。生活できているんだし。」

「失敗したらどうするんだ。誰が責任をとるんだ。」 みたいな・・・

しょうーもな、と思ってしまうわけですよ、こういう発想。

安定志向、現状維持に全く価値を見出せません。

チーム全体が変化や挑戦を是とし、向上していく気持ちを持つことこそが、継続的に発展するための必要条件だと思います。

労働災害82(メルシャン事件)

おはようございます。

今日は、うつ病の業務起因性と休業補償給付不支給決定取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

メルシャン事件(東京地裁平成26年10月9日・労判1110号70頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、業務に起因して精神障害(うつ病)が発症したとして、労災保険法による休業補償給付を請求したところ、中央労働基準監督署長が平成23年2月8日付で同給付を支給しない旨の決定をしたことから、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 改正判断指針・認定基準は、裁判所による行政処分の違法性判断を直接拘束するものではないが、作成経緯や内容に照らせば相応の合理性を有しており、労災保険制度の趣旨にもかなうものである。そこで、業務と当該精神障害発症との相当因果関係を判断するに当たっては、改正判断指針・認定基準を踏まえつつ、当該労働者に関する精神障害の発症に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌することが相当である。

2 XのY社出向は、Xの体調等に配慮した上での暫定的な措置としてされた人事異動であることが認められるのであって、本件会社がXに対するパワーハラスメント又は退職勧奨の意図をもって、Y社出向中のXの処遇を決定したものとは認められない
・・・XがY社出向中に隔離され、ISO9001の審査員補資格の取得に関する学習・研究以外の仕事を一切与えられないというネグレクト行為を受けたとのX主張事実を認めることはできないから、これらの点をXが業務により受けた心理的負荷の出来事として考慮することはできない。

3 Aの叱責に関する品質保証部の関係者の認識は、①その対象がXに限られていたわけではなく、Xに対して行われた頻度も、品質保証部の他の従業員よりは多かったが、それは、Xがお客様相談室からのクレーム処理を担当しており、Aに対し頻繁に報告を要するものであったことが理由となっていた、②Aの叱責は、Xを指導する際に、それ自体として人格否定的な言辞を用いたり、内容として理不尽であったりしたことはなく、執拗な面はあったものの、内容としては理論的で、議論を戦わせているうちに口調が厳しくなっていったというものであり、Xの上記供述部分とは必ずしも符合しない。
・・・そうすると、Aの叱責の状況は、当時の品質保証部に在籍していた関係者が証言等する内容・程度を超えるものであったとは認めるに足りない。

配転や出向を退職勧奨の意図で行うと、違法無効と判断されることがあります。

本件では合理的な理由が認められたのでセーフでした。

また、パワハラについても、人格否定的な発言、理不尽な内容ではなく、叱責は指導の範囲と評価されたため、認定されませんでした。

本の紹介445 ハイパフォーマー 彼らの法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
ハイパフォーマー 彼らの法則 (日経プレミアシリーズ)

著者は、人事・組織コンサルタントの方です。

「何をやってもうまくいかない」という人と「やることなすことすべてがうまくいく」人の違いはどこにあるのかを調査し、「好循環の起点」とは何なのかについて説明しています。

帯に「彼らにとって、仕事はゲームだ。」と書かれているとおり、ハイパフォーマーの多くは、仕事を一種のゲームのように捉え、攻略法を考え、実践しているのです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

発明家がアイデアをあきらめそうになる時は、数えきれないほどやってくる。15台目の試作機ができた時には、3人目の子供が生まれていた。2627台目の試作機ができたころ、妻と私はまさしくカツカツの生活だった。3727台目の試作機ができたころ、妻は生活費の足しにするため美術教室を開いていた。つらい時期だったが、ひとつひとつの失敗によって、問題の解決に近づくことができた・・・誰もが、最初から成功するわけではない。失敗を罰するより、そこから学ぼう。私は常に失敗している。私はそれ以外の道を知らないのだ」(121頁)

これは、サイクロン式掃除機のダイソン社創業者のジェームズ・ダイソンさんのことばです。

成功するために必要なのは、もしかすると「あきらめの悪さ」なのかもしれません。

周りが、「もうやめたら」と言っても、ひとり成功を信じて、やり続ける。

心が折れそうになったときには、このダイソンのサイクロン式掃除機が完成するまでの道のりを思い浮かべることにしましょう。

これに比べたら、10回、20回、失敗しても、そんなものはあきらめる理由にはなりません。

不当労働行為115(W社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組法上の使用者性が問題となった命令について見てみましょう。

W社事件(兵庫県労委平成26年9月25日・労判1110号92頁)

【事案の概要】

本件は、A社からA社の店舗D店等において食料品等の販売を委託されていたY社の解散に際し、X労働組合がD店において、Y社のパート従業員として就労していたX組合の組合員Bの雇用継続を求めてA社に団交を申し入れたところ、A社がBの使用者には当たらないことを理由に拒否したことが不当労働行為に該当するとして、また、A社がBを雇用しなかったことが不当労働行為に該当するとして、救済申立てをした事案である。

【裁判所の判断】

不当労働行為にはあたらない

【判例のポイント】

1 A社がY社に対して支配的地位にあるとはいえないことは、・・・で述べたとおりであるし、A社が、Y社に販売業務を委託したのは、独立を希望する社員の独立支援と、店舗ごとに個性を持たせて競争力を伸ばすことを目的に、制度として行っていたものであり、A社が違法又は埠頭な目的のためにY社の法人各を利用したとはいえない。
以上のとおり、Y社の法人格は形骸化しておらず、A社はY社の法人格を濫用していないのであるから、Y社の法人各を否認することはできない

2 ①Y社の使用する建物、設備及び備品をA社が無償で貸与することは、販売委託契約の内容として通常あり得るものと理解できるし、②Y社の株主や全ての取締役がA社の元従業員であるとしても、Y社においては、取締役会が開催され、人事、経営等に係る会社の意思決定がなされ、独立して経営を行っているのであるから、これらの事実をもってA社とY社が実質的に同一であるということはできない

3 団体交渉要求事項との関係で、A社の使用者性について検討すると、Bの雇用契約の不更新の原因となった解散については、Y社が、将来の経営状況が厳しいとの見地から自らの取締役会で決定したものであり、その決定に対してA社が影響力を行使したとの疎明はなく、さらに、・・・で判断した理由から、いずれの団体交渉要求事項についても、A社は、Bの労組法上の使用者であるとはいえない
よって、労組法7条2号の団体交渉拒否について、A社がBの使用者であると解することはできない。

法人格を否認するのは、本当に難しいです。

今回の事案でもハードルを越えることはできませんでした。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介444 博報堂スタイル(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
博報堂スタイル

著者は、元博報堂製作部長の方です。

少し前の本ですが、本棚から引っ張り出してきて、もう一度読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

今のモノ余り社会は、個人の好き嫌いが100%通る社会でもあります。高品質だけでは価値はない。人間の生き方、暮らし方の提案を含めて、付加価値が必要です。・・・まさにブランドです。点の解決ではムリです。企業の理念、商品、価格、店舗、サービス、生産環境、販売体制、コミュニケーション、トップの志、社員の行動、接客、広告などなど、企業全体の仕組みで考えていかなければいけません。」(79頁)

まさにその通りだと思います。

ブランドとは総合力です。

あらゆる要素が絡み合い、全体として1つのブランドを作り上げています。

ブランドが顧客に与える印象から逸脱した要素が1つでも存在すると、顧客は不安を感じます。

あらゆる要素に対して、自社のブランドが矛盾なく行き届いているか、常に気を配る必要があります。

賃金93(マーケティングインフォメーションコミュニティ事件)

おはようございます。

今日は、定額残業代としての営業手当の有効性と割増賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

マーケティングインフォメーションコミュニティ事件(東京高裁平成26年11月26日・労判1110号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、平成23年3月分から平成25年2月分までの時間外労働に対する割増賃金618万2500円+遅延損害金、付加金+遅延損害金を請求する事案である。

なお、一審判決は、営業手当を時間外労働の対価として認め、Xの請求から営業手当の金額を除いた1万4342円+同額の付加金のみの支払いを命じた

Xは、一審判決を不服とし、控訴した。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、651万4074円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xの1月の平均所定労働時間が173時間前後で、これに対する基本給が月額24~25万円であるところ、これを前提に、月17万5000円~18万5000円の営業手当全額が時間外勤務との対価関係にあるものと仮定して、月当たりの時間外労働時間を算出すると、・・・上記営業手当はおおむね100時間の時間外労働に対する割増賃金の額に相当することとなる

2 労基法32条は、労働者の労働時間の制限を定め、同法36条は、36協定が締結されている場合に例外的にその協定に従った労働時間の延長等をすることができることを定め、36協定における労働時間の上限は、平成10年12月28日労働省告示第154号(36協定の延長限度時間に関する基準)において月45時間と定められている。100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものであることは明らかであるから、法令の趣旨に反する恒常的な長時間労働を是認する趣旨で、X・Y社間の労働契約において本件営業手当の支払が合意されたとの事実を認めることは困難である。したがって、本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有するとの解釈は、この点において既に採用し難い

3 本件営業手当の支払は割増賃金に対する支払とは認められず、また、本件営業手当は、労基法施行規則21条に列挙されている割増賃金算定の基礎賃金から除外される手当等のいずれにも該当しないことは明らかである。したがって、営業手当は、基本給とともに、割増賃金算定の基礎賃金となる。

4 本件訴訟に表れた一切の事情を考慮すると、Y社に対しては付加金の支払は命じないことが相当である。

原告の逆転勝訴です。

長時間の残業を前提とした固定残業代が支払われている場合には、労働者側としては、上記判例のポイント2の論理を主張することになります。

使用者側としては、固定残業制度には、このようなリスクがあることを十分に理解しておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。